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   エンジェル・プロローグ

この世界には、地球星(アース)に生まれ、生きて、死した魂を土星(サターン)に送り届けることを使命とする白き天使が存在する。

地球星に生きる者達は、彼女達を“天使様”と呼んでいた。






地球星の隣にある土星。ここに生まれ生きる種族は美しい白い翼を持っていて、空だけでなく宇宙空間も自在に飛び回ることができる。

その中でも同期の天使達も誰よりも速く飛べる少女がいた。だが、それ以外の彼女の成績はあまり良いものではなかった。


「どうして、私は天使なんかに生まれてきたんだろう…」


それが彼女、ルキである。

今日もルキは地球星で死した魂を土星に送り届ける仕事に悩んでいた。

誰もが皆、特に人間という名の種族は“死んだ”という事実を簡単には受け入れない者が圧倒的に多い。

毎回毎回、ルキが担当する人間は揃いも揃って地球星に未練を残してまだ生きたいと抵抗し、周りの者を傷付ける。


「天使なんて面倒な仕事すぎる…」


ルキはそう思っても仕事は仕事であるし、天使にとってそれが使命である。

愚痴るだけ、悩むだけ無駄な時間でしかない。


「ルーキー!地球星に行こう!」


今日も天使であることを疑わず、使命を愛するルキの同期の1人であるミクルが飛んで来た。

正直、ルキは考え方が違いすぎるミクルを苦手に思っているところがある。


「あー…分かった行こうか(行きたくないけど)」


「今日も笑顔で魂を送り届けようね!」


ミクルはいつも元気だなと思いながら、ルキも重たい腰を上げて翼を羽ばたかせて宙に浮く。

ルキもミクルが天使の使命に誇りを持っていることは理解しているつもりだ。だから、自分が行きたくなくても誘われれば一緒地球星に行く。それが、天使の使命であるから。


「あ!ルキ、笑顔を忘れちゃダメだよ!」


今日もまたミクルに笑顔になってないと注意される。

天使の決まりで、地球星の魂を送り届ける時は笑顔が必須事項である。決して天使は魂を送り届ける時に泣いてはならない。

それは天使にとって最大の禁忌(タブー)である。それを犯せば“堕天使の烙印”をおされて土星を追放される定めである。


「分かってる、笑うから頬を引っ張ろうとしないで…!」


ミクルに頬を引っ張られそうになって抵抗しつつ、ルキは天使の仕事として笑顔をつくる。

嫌だと泣きたい気持ちも不安も…何もかも悟られぬように隠し込んだとびっきりの笑顔を。もうずっとそうしてきたのだから、今さら何も変わらない。


気が付かなければいい…自分の心が、天使という名の呪い(祝福)で壊れ、崩れゆく音などルキには聞こえない。

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