調子に乗ると大抵いいことがない
玄関に行く途中の渡り廊下には乗馬部の部室がある。ミル子は自然とそこへ寄っていく、そうおそらくミル子の今現在恋してるであろうユウタがいるからだ。そしてミル子はしばらく乗馬部のガラス窓に鼻を押し付け見るのを部室の中を覗いていた。俺も雨の日の乗馬部なんてなんかすることがあるのかと思い好奇心でミル子の頭の上から部室を覗く。「えっ…」っと思わず驚愕の声をあげてしまう、なんと部室の中央に据えられていたのは某ボーリング場でよく見かけるロデオであった。そしてそれに優雅にまたがるのはまさしくミル子の部室覗きを加速させる原因ユウタであった、みると汗でびっしょりであった。ロデオで汗びっしょりってどういうことだという疑問はロデオの後ろに据えられているタイマー時計で解消された。「さ、三十分だと、」そうユウタは乗馬部のエース、その実力も並じゃないだろうなとは思ってはいたがこれはどとはな。ユウタの周りには乗馬部部員が応援しており皆も汗びっしょりだ、やはり相当神経使うものなんだろうなと思いつつしかしやはり応援しつつ尊敬のまなざしでユウタを見ているところを見るとエース様は別格であることがわかる。応援の声には黄色い歓声が半分、乗馬部は女子と男子の割合が五分五分なのだ。女子は皆うっとりな目をしてユウタを見つめる、いやみとれるといった方が正しいか。普段の俺ならここで憎むに憎めない親友に劣等感を感じ鼻水を垂らしながら家に直行しいち早く寝込んで枕を濡らすだろう、しかし今の俺には余裕がある。なぜなら乗馬部の女子の有象無象よりも綺麗な女子と密着二十四時間も驚きの近さの相合傘下校イベントのお迎えがもう少しで来るのだから。清々しい気分ってのはまさにこのことだ、高一のバレンタインの日にげた箱からチョコがあふれかえるなどまるで漫画みたいなことを成し遂げたユウタは、「俺、チョコ嫌いなんだよなー、困ったな。あ、そういえばツキジチョコ好きだったよな、やるよ」というチョコであふれかえったが全部他人の物という空しいバレンタインのプレゼントのお返しができるのだからな。モテ度でいえばぼろ負け当然だがかっぱ巻きを百貫食ったところで大トロ一貫美味しさは超えられない、例えがへたくそだがつまりそういうことだ。これでサナとユウタが既に相合傘をしていたら赤っ恥だが、この前ユウタに下校事情を聞いた時ほとんど部活仲間と帰っているといっていたのでまずないだろう。チョコレート会社の陰謀の日の雪辱のお返しは勝利の投げキッスだった、しかしこれがいけなかった。まずユウタはちょうど俺が投げキッスした途端に目が合い、ドン引きしたのだろうか顔が引きつっているそしてその瞬間にロデオに落ちた。思わず悪いことをしてしてしまったかなと焦っていると、いつのまにか俺の真ん前にはユウタと同じく顔をドン引きした表情のミル子がいた。そしてしばらく沈黙の間があった。ミル子は俺の冷や汗をかいている顔をたまにチラチラひきつった顔で数回見た後言った言葉は「あんた、そういう趣味だったのね。」と一言。そのまま玄関へと駆け足で去っていった。つまり俺はゲイ疑惑をかけられたのである。これはいかんと思い、すぐさまミル子の元へ行こうとしたがその途端、乗馬部の部室のドアが開けられる。その隙間から未だにひきつったままの親友の顔があった。そして弁解が求められ無事疑惑が晴れ、部室にも戻っていくユウタを見送り玄関へ向かうとミル子の姿はなかった。天気は未だに雨である、ツキジの心にも曇天の景色が立っていた。
読んでいただき誠にありがとうございます。すみません、当初の筋とだいぶ逸れ相合傘編は消滅しました。次回ミル子の思わぬ恋敵編です。