迷信は先人の偉大な知恵である
幼馴染の女の子というのは怖いなぜなら見知っている男子が昔と全く変わっていないと思い込んでいるからだ、しかしそれは人懐っこいサナだけに限るのだろうか。高校1年の春、俺たちご近所づきあいで4人諸々同じ高校に無事進学。小中高ときて普通は縁も少しばかりは薄くなるだろうがサナの性格上人類は皆仲良くなれると信じ切っているその真っすぐな精神が4人をつなぎとめている。その黄金の精神は高校になっても続き、「高校になっても7時半集合で集団登校しようよ。」と持ち掛けてきた時には、何事もなあなあに対処する性格のユウタは何ごとなく了承、親友であるミル子はユウタの顔を見て赤らめながら了承、俺はというとぶっちゃけ恥ずかしかった。そりゃモテているユウタやサナ、意外と隠れファンもいるミル子が集団登校をしても可愛い一面で終わるかもしれないが、不愛想で結局トモヤとつるみ続けていた非モテの陰キャの俺がしてるとなれば話は別だ単純に変な奴と思われるに違いない。そんなどもった俺を見て桜の木を背景にまるで告白して降られた寸前のように目を潤ませながら「ツキジ君…」と聞かれたらそれはもう断れなかった、あと一応サナにはユウタとクラスが離れたときに助けてくれた借りもあったなと思い出しつつあやまるような感じで了承した。満開のような笑顔を咲かせたサナに3人が腕で引き寄せられ「私たち、ずっ友だよ!」と言いながらパシャリと1枚撮られた。義務教育修了の日に青春のスパイスを加えてくれたサナの撮ったその日の写真はlineのトプ画に張り付けてある、自分にとってその写真に対する思いはリア充感出せて高校デビューできそうみたいな軽い気持ちが入らざるを得なかったがそれだけでは決してなかった。
そんなこんなで高2の現在春、特に高校デビューを期待したわけでもなかったが成功とも失敗とも言えないやんわりとした高校生活のある日のことだった。いつも通り公園で待っていると集合時間にすこしだけ遅れてミル子が走りながらやってくる。ほとんど誤差だから気にしないのだがいつもミル子は集合時間を少し遅れてくる、なので髪はいつものとおりボサボサだ、しかしなんだろう幼馴染の勘という奴だろうか、いつもと比べ何かに怒っているような気がした。実はこれまでにミル子に対して2回しか話したことがないツキジだったが気になったら首を突っ込んでしまう体質なのでミル子に「なんかあったの?」と自分の持つコミュ力ゲージをフルで使って気さくに話しかけてみる、答えは沈黙だった。そういえば金髪で男勝りの美形だしそっくりだなとか思って現実逃避していると同じ幼馴染のサナが早速同じ質問をミル子に投げかけた。ミル子は流石に友達の友達であるツキジはともかく不機嫌であろうと親友のサナには反応せざるはえなかったようだ、まぁ当然かと思いつつ気になるので耳を傾けるとへんてこな答えが耳に入ってくる。「例の白馬の王子が夢に出てきたのよ。」とミル子はぶすっとしながらも答えた。「あら、よかったじゃない、ならなんで不機嫌なの?」とサナ。「だって私はもう諦めてるのにちょっかい出してきたのよ」「どんなことしてきたの?」と聞かれると顔を真っ赤にしてサナにごにょごにょと時折ユウタの方をみながら喋った。サナはウフフっと笑うと、笑われたのが恥ずかしかったのかミル子は「なによー!」といいながらサナを追い回した、そんな二人がじゃれている理由であろうユウタはさっきからそっちのけで俺にたわいもない世間話を振りかけ続けている。こいつのこういう図太いところは嫌いじゃないが少しくらい感づいたりしたらどうだとも思う。その調子で歩いていくと自分の通う藤堂高校が目に見えてきて安心したせいもあるかもしれない、目には美少女二人のじゃれあう様子、耳には雄太の世間話それだけに忙しく低空飛行して俺に一直線してくる燕には気づかなかった。
目が覚めると俺は高校の保健室にいた。頭には包帯がまかれていてどうやら俺は低空飛行してきた燕に頭の部分で正面衝突したというなんともアホなうっかりを俺はかましてしまったようだ。ベッドから動こうと思うと保健室の扉が開き、入ってきた人物はミル子だった。不機嫌はまだ治ってないのかちょっぴりぶすっとした顔をしている。俺はそんなミル子と目が合うと「おそよう、もう土曜学校は終わったわよ。」と言われた。なぜミル子一人なのだろうと思い聞いてみると「ユウタは部活、サナは生徒会」
と返された。なるほど、っと思ったがそもそもなんで俺のもとに来たのだろうと思い尋ねると「外は雨降ってるでしょう、傘に入れてあげるわよ」と返された。ミル子に照れた様子は全くなかった。俺はといえば女子と相合傘か、めっちゃドキドキするんですけどー!っと一人盛り上がっていた。もちろん表面には出さなかったが。ミル子はサナには少し劣るものの男子に人気のあるナンバーツーというのがあったらミス藤堂高校であった。そんな思いを巡らせていたのでベッドにずっと腰かけていると、動けないとミル子は判断してくれたのか、「よいしょ・・・っと」掛け声と同時に肩を貸してくれた。フワっといい香りがして興奮ゲージがまた一つ上がった。ふにっと自分の胸あたりに感触がした。そう、これは間違いなくマウストゥーマウスならぬブレストトゥーブレストである。興奮ゲージは当然カンストしたのだが「ここは保健室の先生がいるぞ!」というヒカリのツキジの警鐘により理性がそれを無理やり鎮める。そして大丈夫だという旨をミル子に伝えると「そう?」といって「なら早く帰りましょ、今行かないとそのうち土砂降りになるらしいからさ」といい手招きして保健室を出て行った。俺は保健室の先生に感謝の旨を伝えミル子を追いかけるべく保健室を出た。ミル子は保健室の扉の近くの廊下で立っていた。俺を待ってていてくれたのである。「いきましょ」といってまた俺に背を向け玄関へ歩き出すミル子、そんな彼女の背中を見ながら考えることはミル子は意外と優しいのではということについてだ。なるほど、確かに今朝からミル子は機嫌が悪かったにもかかわらず肩まで貸してくれ、けが人の俺のペースに合わせて廊下に待ってくれるこれは優しくなければなんなのだろう。あと追加で気づいたことには小中高と同じであったにもかかわらず今回で3回目の会話であり最長であったということだ、なので今までミル子に対し意識が何もなかったわけではないが遠い存在だと思っていたが今回の件で急に身近に感じられるようになった。それはとても喜ばしいことでありさっきも述べたがそれなりに顔の整っていて男子に人気なミル子に意識がないわけでもなかったのだ。燕が低空飛行で飛ぶと雨が降る、この言い伝えを座右の銘にしようか、なんてウキウキでいるツキジの気分は天候とはまるで真逆である。
読んでいただき誠にありがとうございます。次回相合傘編です。




