一話
俺は、ただただ魔法が大好きだった。
少しも魔力が無い事を除けば…
この世界は、魔法が主流として過ごされている世界。
魔物が沢山居て、毎日任務を受けまくる人も居る。冒険者だ。
その中でも俺は魔力ゼロの落ちこぼれ。なのに魔法の事が好き過ぎて日々、研究に勤しんでいる。
買い物に行っている時、誰かが話しかけてきた。
「君、魔法研究者の…アルク・ナナシテウだよね…僕はアミノ・ユウカ」
彼は、そう言った。彼は魔法が大得意で俺の研究が実際に使えるかどうか、毎回試してくれた。
それから一年。俺はその日も彼が尋ねてくれると思っていた。ドアがノックされたので出ると、そこにはこの国の兵と名乗る人が居た。
俺は処刑されるとの事だ。王子と下民が仲良くするな。と、言った。
その瞬間、言われなくとも気付いた。アミノは王子だった。
アミノはそんな事気にせず、と言うか俺に言わずに仲良くしてくれた。
俺はその時にアミノが走ってくるのが見えた。
俺は、大声で、
「仲良くしてくれてありがとう」
と、言った。
そして、紙をアミノに投げた。
それは新たな魔法の論文。そこには俺の殴り書きを追加しておいた。
【お前がこの魔法を完成させろ。これは、魔力なしでも出来る。試してみるから。】
…と。
「テンセイ」
その言葉を最後に俺はこの世を後にする。筈だった…
俺は次の瞬間に、生まれ変わった。
生まれてすぐに俺は国民から大歓声を受けた。
そこは、城だった。
俺はこの国の王子だった…驚きのあまり、これが現実か疑ったが、すぐに分かった。
名前は、アマ・サナリ。
転生魔法が、成功した。
それから五年程経っただろうか…
俺は生まれてから、殆どの時間を読書に費やしていた。
俺はこの家の図書館には無限に本があって、無限に読む事が出来た。
動けるようになってからすぐに読み漁っていたためか、数年で読み切ってしまった。
その時に覚えた魔法で、自分の魔力の総量、できる属性の魔法などを調べてみた。
魔力量:無限。使える属性:全て
とか言うチートステータスを手に入れていた。
喜んでいたのも束の間、俺の家では武術も極めなければならず、武術の才能が一ぐらいだった俺はこれから悪夢を見る事になる。
人生全部魔法に使えって事か…
俺はその時に覚えた、魔法。記憶消去を使って、本を読んだ内容を忘れ、何度も読んでいた。
記憶消去と言うのは、文字通り、記憶を消す。だが、他人にも使えてしまうため、使ったのがバレたら捕まる。
使うのが禁じられた魔法。略して禁魔だ。
俺は使用上の問題ない使い方なら大丈夫だろうと思い、酷使しまくっていた。
記憶消去なんて知る以前に俺は本を読み過ぎて前世の記憶は殆ど忘れていた。
魔法を手伝ってもらっていた彼の名前も…顔も…
本当に前世で考えた魔法しか覚えていない。
それと話は変わるが、兄で一番年が近い者でも成人している。
だから俺に王位の争いは関係無い!
だから全ての人生を魔法に捧げられる…
身長も低いし、政治に一切の興味を示さない。それだけで俺は基本、見向きもされない。
と言う事は、少しここから離れていてもバレないと言う事だ…
なんて俺は天才なんだ…
と、思ったがそれは昼の話。
夜はメイドの見張りが付いている。
魔物は夜に沢山出る。だから夜に外へ出る方法を考えなければいけない。
だから、自分の人形を作っておこう。
そしたらバレないはず。
また禁魔の人間生成で俺のダブルを作った。
まだ下手すぎて色々と色素が薄いがまあ夜の暗い中なら大丈夫な…筈。
そして、夜。俺はダブルを置いて、窓を開けて外に出て行った。
俺は高度百メートルぐらいの上空に居た。
浮遊魔法なんて一秒に二百ぐらいの魔力しか使わない。
とは言っても一般人の魔力は数百から数万程度だ…
その辺にいる魔物を倒そうと思う。
魔法の種類は、無属性、炎属性、水属性(氷は水の応用なので水に含まれます。)、雷属性、闇属性、光属性。そんな程度だと思われる。
取り敢えずは炎魔法でも使ってみようか…
〖メテオ〗
と、俺が一言言うと、そこら一帯に隕石の嵐が降る。
そこら一帯の魔物は、地面と共に何処かへ行った。
「うーん…これでも魔力出力最低なんだけどなあ…」
それでも、そもそもメテオとは炎魔法の最上級クラスの大技で有る。
大賢者とかの全ての魔力を使って、今の俺程度しか出せない。
それを俺はまだ知らない。何故なら引き籠って本ばっか読んでいるから。
兄さん方のパレードとかに出席したことは無い。
彼らより、魔法の方が価値があるんだから仕方ないよね…
その後、俺は更に奥の方へ進んで、山が有る所にやって来た。
そこには何かドラゴンのような物が寝ていた。
雷魔法の練習もしてみたいし、倒すか。
〖電撃〗
雷魔法は種類が少なく、高難度の物が多いが俺には簡単に扱えてしまった。
ドラゴンは黒焦げ。
今の雷の音は物凄く、近くの家の人に迷惑だったなと思った。
メテオもそう変わらないか…
なんて思いつつ家に帰ったら、窓から俺の方向を向いている笑顔のメイドが居た。
俺はそのまま着陸した。ここで変に逃げても頸が更に危うくなるだけだ。
「なんでこんな真夜中に家を出ているのですか?アマ様」
彼女はアカネ・ササキ
俺に仕える専属メイドだ。
「いやあ、魔法の練習?」
「その辺、隕石で地面が不味い事になっているのですよ」
アカネは、まだ、笑顔だ。
「それは、ごめん…魔法の威力を知らなくて…」
「それ、今出せる最低の力で出したのは分かっています。アマ様は強いから死にませんよね…」
アカネはさらっとそう言うが、普通に凄い事なんだよな、相手の本気度を知るって…
「でも、夜の外出は禁止にしている事は知っていますか?」
笑顔のまま、少しずつ俺を怒ろうとしているのは伝わってくる。
「それは…ごめんなさい…努力はするから…」
「努力じゃなくて義務です!絶対です…」
アカネはそのまま俺を手刀で気絶させ、現国王、父の所まで連れて行った。
さっきも言ったが俺は武術がカスでゴミだ。
魔法で何とでも出来るが、アカネの前でそんな舐めた真似でもしたら頸は飛ぶ。
アカネはやはり何かを企んでいる。と言うか…過保護?
なんて、夢の中で考えていたら、俺は起きて夜通し父に叱られるのであった。