桜の花びら。美湖の花
私は美湖!親桜町の小学五年生!
なーんてね。
まぁ。小学生ではある。五年生でもある。
でもタイムリープしてきたってことはある。
あれは25の春だったなー。
いきなりバイクとトラックに挟まれ死んだ。
...確かに死んだ。少なくても私は大人だ。
まぁ。都合の良いことに余計な記憶は事故ですっとんだけどねー。
今は春休み。名前はそのまま桜間美湖友達はなくした。
そりゃそうだ。ある日突然成績トップだもんねー。なくなってあたりまえで。
そんな私が通う小学校『第三西小学校』
昔西という方角を覚えるのに役立った。
今や私には大人と同等の頭がある。
とはいえ。脳は使わないと萎縮する。
なので曲がるたび西、南、東、北と確認している。
学校の位置から察している。
っと。ここが私の学校だ。
まずは靴を履き替えてっと。
あとは試作を御覧じろう。
キーンコーンカーンコーン。
「えぇー。2×6=12これをにろくじゅうにと言います。ではここで小テストを行います」
普通ならイヤなテストだが私なら別だ。
普段は平均点をとりたまに100点をとる。
こうすればお小遣い貰いたい放題ってわけ。
今日はお小遣いの日っと。
カキカキ。ペラっ。
すばやく描き終えてテストを裏向きにして突っ伏した。
(この時間だけ......暇なんだよなぁ...)
先生はカンニングに気を配っている
ひそひそ(ねえ、知ってる?)
(なになに?)
話し声が聞こえる。
(校庭の桜の木の下に死体が埋まってるんだって)
(へー。興味ある)
学校の七不思議的な奴か。
(でね?その死んだ人がこの学校で悪さしてるんだって)
(ふーん。それで?)
(私達で退治しようよ!)
「こら!そこ。話しない。今度私語したらカンニングで0点だからね。」
『はぁーい!』
キーンコンカーンコン
「はい。後ろからあつめてー。」
それにしても桜の木の怪談か。ちょっと興味ある。
ちょっと見てみるか。
昨日は雨。水溜りがチラホラある中で遊ぶ子供も多い。
「これが例の・・・。」
『貴方は私が見えるの?』
?。話し声が聞こえる。
『貴方も私の声が聞こえるのね?』
「う、うわぁー!幽霊!」
『・・・。』
桜の木の上から少女が見つめていた。
話しかけられた子供は逃げたようだ。
『はあ・・・。またか・・・。』
じゃり・・・。
『だれ!?』
美湖が砂利を踏んだ音に反応したようだ。
ふわっ
頬を撫でるように春風が通り過ぎる 。
『・・・なんだ。君か。君も私のこと見えないんだったね。』
残念そうに空を見上げて呟いた。
「み、みえるよ・・・。あんた誰なの?」
『え?』
少女はこの学校では見たことのない顔だった。
「だから見えるんだって!」
『おかしいな・・・。この前話しかけた時は見えてなかったのに。』
少女の口からついて出たのは悪態にも似た物だった。
「降りてきたら?話したいでしょ?」
少女はクビを縦には振らなかった。
その姿はまるで桜の木に張り付いているようだった。
『今日はだめ。また今度ね?このままでいいなら話そうか?』
少女はスカートをはためかせながら答えた。
「ふーん・・・ま、いいけどね。あんた何年生よ?」
『2年生。』
「じゃあ、年しt・・・。」
『年齢は25。』
驚きの告白だった。
なぜなら・・・。
「私も25・・・。」
死んだのが24で一年たってたから25ということになる。
上を見上げると太陽の光が少女を透かしていた。
「!?あんた、透けて・・・。」
『死んだんだよ。この桜にクビを吊って。』
それは驚きにも似た簡単な感情だった。
「わたしとおなじ・・・!?」
死んでることに驚きはしなかった。ただ、死んだ後に記憶があることに驚いた。
『そんなもんだよ。ふつーはね。』
まるで見透かされたような言葉の端々に感動した。
「ねえ?名前は?わたしはねー。桜間美湖。あんたは?」
『私も同じでいいよ。名前忘れちゃったから』
桜の木には愛愛傘が彫ってあった。
小野町える/右の名前は読めなかった。
「じゃあ、えるちゃんってどうかなぁ?ふふっ、えーるちゃん!」
『える?』
「そ。えるって名前彫ってあるからえるちゃん!いいでしょー?」
『...いいけど。』
不貞腐れながら言い放った。
「なによー?不貞腐れなくていいじゃん!」
『別にいいんだけどね、呼ばれた人がどう思うかなって・・・。』
「それは大丈夫!えるって架空の名前だから。昔ね、ある人が愛愛傘に書く名前がなかったから架空の名前を彫ってみたんだって。って書いてある。」
もちろん嘘だ。ただそれで気が楽になるのならお得だということだ。
『ふーん?私が見た時はそんな事書いてなかったけどなあ?』
ドキリ!心臓が跳ねた。
「わわ、私には見えるんだよ!あんたの記憶違いじゃない?」
『まあ鎌かけただけだけどね。』
かまかけた?
「かま・・・かけるってなにさ?」
『それより時間だよ。』
キーンコンカーンコン
「やば。また明日ね!約束だから!」
美湖は走って校舎に入って行った。
『あしたね・・・覚えてたらね?』
少女がすっと消えていった。
「明日は遠足です!お弁当忘れないようにね!」
『はーい!せんせー!』
バイバーイ!
明日は遠足か。じゃあ明日会えないじゃん。
「あーしたあーめになーあれ!」
靴占いで裏を出しつつ家路についた。
『明日は台風が近づくので、全国的に雨が降るでしょう。』
いよっし!雨サンキュー!
ザァーーーーーーー。
予報通り雨が降った。
「むにゃむにゃ・・・雨かー。遠足中止かなぁ?」
遠足の心配をする。今日は公園だっけか?
「いってきまーす!」
がやがや。
「えーっと。今日の遠足だけど雨が止んだら行きます!止むのを祈っててねー。」
がやがや。
(そういえばさー?)
(なに?)
(桜、散っちゃったね)
(そだね)
(お花見したかったなー)
願望を吐き出すクラスメイトにドンマイ!と言いたくなった。
ザァーーーーーー。
「やまないかなー?やんだとしても雨降った後に遠足やるってどうなんだろ?」
風と雨とでとてもじゃないが遠足は無理ではないだろうか?
午前は予定が変わり体育館でバスケットだ。
「体操服、体操服・・・っと。」
美湖は体操服に着替えると階段を下りピロティを通り越して体育館に走っていった。
キュッキュッ!ダンダンダン!キュッバスっ!
男子が一足早くバスケットボールで遊んでいる。
(よっし!一点とった!)
(違うよ。バスケでは直接シュートは2点、ラインからシュートで3点だから今のは2点!)
(ふーん。なんか難しいな)
「ふーん。なんか難しいね」
バスケなど男の子の遊びだからルールは知らない。ただの玉入れ遊びだ。
(いま"ただの玉入れ"って言ったの美湖ちゃん?)
「そうだよ。」
(バスケットって言うのはすごく熱いスポーツなんだ!)
「」
(そもそもバスケットはボールを地面に跳ねさせながら......)
「しまった。虎の尾を踏んじゃったか・・・」
(それでね......)
男の子の解説は体育中ずっと続いた。
ぴちょん。ぴちょ。ぴちょん。
(雨やんだねー。)
(男子は雨やんだら外に出てっちゃったね)
子供は風の子。雨は水溜りを作りそれを踏んで遊ぶ。びちょびちょ。
「美湖には関係ないかなー?でも・・・」
でも・・・桜の木に何かあった気が・・・。
「美湖には関係・・・」
校庭の桜の木には美湖には関係ないものがある?
「なんでだろう。なんでだろう。なんでだろう?桜の木で約束したような気がする。」
行ってみればわかる。でも・・・。
「雨、また降ってきた・・・。」
わー!きゃー!
外で遊んでた男の子達が悲鳴と共に中に逃げてきた。
校庭の桜の木が雨を被っている。
「・・・傘。」
(美湖ちゃん!?お外雨だよ!?)
「いいの!傘さしてれば濡れないから!」
雨が降る中、桜の木の下まできた。
"小野町える"
木にはえるの名前が彫ってあった。
「そうだ。えるちゃんだ。えるちゃん!」
えるちゃんは答えてくれない。
「えるちゃん・・・。」
桜の木からえるちゃんの声が聞けないままに季節は2度巡った。
「えるちゃん・・・えるちゃんは卒業出来ないかもしれないけど私は卒業したよ。約束、また逢おうね。」
この日、桜間美湖は卒業しました。
そしてまた、春がやってくる。
桜間美湖、20歳。
同窓会で、タイムカプセルを掘り出すことになり学校へ忍び込んだ。
ざくっ。ざくっ。
(おぉーいそっちあったー?)
(確かこの辺だと思ったんだけど・・・)
カキン!
「あっ。あったっぽい。」
(こっちにあったぞー!)
美湖とは違う方で見つかった。
「え?じゃ、じゃあこれって??」
開けてみようか。
パカっ!
中には手紙が1通入っていた。
『みこちゃんへ。
結局一度しか会えなくてごめんなさい。
でもこうしてみると案外あっさりとしてるね。
約束、守れなくてごめんね。
最後に謝ることができなかったから
それが気になってたんだ。
謝ることができて嬉しいよ。
いつも遠くから見守っています。
える。』
「えるちゃん・・・。」
今でも桜の木を見ると思い出す。
桜の木には幽霊がいたこと。
奇遇にも私の名前には桜が入っていること。
また逢おうね。える。