死神の仕事だって必要な仕事だから
死神は地上に降りてくるな。
反対、反対。
けがれの象徴だから、反対、反対。
不吉を連想させるから、反対、反対。
人々は死神が嫌い。
死んだ人を連れていくから。
大切な人を連れてかれるから。
そう思うから、好きにはなれない。
嫌なことを考えてしまうし、かなしい気持ちにもなるから。
できるだけ見たくないし、近くにいてほしくない。
だから傷ついた死神は、地上に降りてこられない。
「俺様達がいると、みんなが怖い顔をして追い払おうとするからさ」
おっかないと、言ってずっと降りてこられない。
けれど、死神がいないと。
死んだ人があの世にいけない。
生きていないのに、ずっとこの世にさまよったままだから。
この世は幽霊だらけ。
あっちもこっちも幽霊だらけ。
そのうち、死んでもすぐ会えるからと、言ってしまうようになる。
そのうちに、死んでるけどすぐいなくなるわけじゃないからと、言ってしまうようになる。
生の世界と死の世界があいまいになって、生きているのか死んでいるのか分からなくなる。
「あれ、まだ生きてたっけ」
「あれ、もう死んだんだっけ」
人々はやっと、これじゃいけないと思って、死神の反対運動をやめるこることにし
地上に降りてこられるようになった死神は、せっせとお仕事を開始。
混乱していた世界は瞬く間にすっきり。
生きてる人たちの世界は、今まで通りの世界になっていった。