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8

まだ薄暗い空に少し青みが出てきた頃クレア先生に起こされた。


「何ですかクレア先生こんな朝早くに。」


「小冬音、ごめんな。私もこんなに早く来る気はなかったんだが昨日新しい武術の先生を連れてくるとはなしただろ。そいつに小冬音の話をしたら急に乗り気になって私も起こされたんだ夜中の3時くらいに。」


クレア先生も眠そうに目を擦りながら不満を垂らす。


「クレアまだか。」


部屋の外から知らない男の声が聞こえた。


「急かさなくても女には準備があるんだよ。少しくらい理解しろ。」


「面倒だな。」


クレア先生は舌打ちしながら私のパジャマを雑に脱がし箪笥の中に入っていた武術の時間に使っている体操服を着せてもらった。

幼児の手だと短くて脱ぎにくく最近では手伝ってもらっていたが妙さんと違って乱暴なので痛い。


「クレア先生も聞いてなかったんですか?」


「今日ってことは聞いていたが時間は指定していなかったからな。朝早すぎて文句を言ったら「時間は決めてなかっただろ。」ってしれっとしてるんだよ。」


クレア先生の怒りながらも怒りきれていない表情を見るに腐れ縁とかそういうのだろう。


「よしできた。」


クレア先生が私の頭をポンっと軽く叩く。


「できたか早くしろよ。」


「わかってるよ五月蝿い。あんたは庭に先に行ってな。」


スタイルがいいクレア先生に抱き抱えられて部屋を後にする。

いきなりの事に焦るが硬い・・・。

もっとお母さんや妙さんのように抱きつかれると柔らかくていい匂いがすると思いきや硬い。

いい匂いはするのだが発達した筋肉のせいで女の人に抱っこされている感じがしなかった。


「ん?どうした?くすぐったいぞ。」


興味深そうに触っているとクレア先生が笑って頭を撫でてくれた。


「凄い筋肉だなと思いまして。」


「いいだろ。小冬音も将来目指すといいよ。」


筋肉ムキムキの私を想像してみるが男の頃だったら憧れたが女の子になったからには可愛い、綺麗路線を選びたい。

首を左右に振ると。


「小冬音も小さいのに女の子してるんだな。」


クレア先生の筋肉を堪能しているうちに気がつくと中庭についていた。


「その子かクレアが自慢していた教え子は。」


「そうだよおまえの所の弟子より才能があるんだから。」


私を抱きながらドヤ顔するクレア先生が可愛く見え癒されていると急におっさんが私の両脇に手を入れ持ち上げる。


「そうだな自己紹介がまだだったな俺は団十郎、戦部団十郎っていうもんだ。」


暗くてよく見えなかったが団十郎の顔を間近で見せられ息を呑む。

太くて濃い眉に四角い顔眼光鋭く何人か殺してそうな顔だった。

最近の日本人顔ではなくザ日本兵みたいな戦中に活躍してそうな顔だった。

綺麗どころの顔を最近見慣れたせいで面食らったが何とか挨拶を返す。


「私は、小冬音と言います。よろしくお願いします。」


小声で目も合わせずに挨拶を返す。

だって怖いんだもの。


「お、その面で泣かなかった子供は初めてじゃ無いか。」


「五月蝿いわい。ほっといてくれ。」


美女と野獣みたいな組み合わせみたいだが美女の方が強そうなので野獣を退治できそうなのが何とも言えないが気になった事を聞いてみる。


「クレア先生と団十郎さんは仲良いんですね。」


「こいつがアメリカに留学してきた時に私の家にホームステイしてたんだよ。」


「ホームステイできる場所は選べんかったからな。」


「じゃあ公園にでも住めばよかったじゃない。」


二人で言い合っているのを見ていると急に団十郎さんが咳払いをする。


「コホンッ。すまなかったな小冬音ちゃん早速で悪いが体を見せてくれないか。」


私は頷いて団十郎にされるがままになっていると。


「幼女趣味のイカついおっさんが小さい女の子を触ってるってロリ・・・いやペドか。」


私も絵面が酷いと思ったがそれをクレア先生は声に出したが団十郎さんは余程集中しているのか無視している。


「次はこの棒を振ってくれ。」


言われた通りに棒を振っていると団十郎さんが後ろから私の棒を振った時の筋肉の動き見ながら振り方を修正してくれる。

カシャ。

それを見ながらクレア先生が爆笑しながらスマホで写真を撮っていた。

次に走ってくれと言われ走ると重心の掛け方や足の動かし方を教えてくれる。

私の足を持って動かし方を教えてくれるのはいいがクレア先生が爆笑している為そちらが気になって集中できない。


「どうした?」


団十郎さんがやっと私の視線の先に気がつきクレア先生の所業を確認すると黙ってクレア先生に近づき頭にゲンコツを落としていた。


「痛い。」


「真面目にしないなら帰れ。」


「これ奥さんに送っていい?」


「すみませんでした。帰ってもらっていいですか。」


私と団十郎さんの絡んだ写真を見せられ団十郎さんは敬語になっていた。


「ご飯1週間奢りで。」


「く・・。そのかわり絶対送るなよ。」


「了解~。ありがと。」


奥さんが余程怖いのかクレア先生の要求を飲んでいた。


「奥さんが怖いの?」


「ああ、あいつの奥さん怒ると笑いながらキレるんだけどこの写真クラスの物を見せると1ヶ月は機嫌が治らないだろうね。それにあいつ私が今度日本に来たらご飯奢ってくれるって言ってたの忘れてたみたいだからいい気味。」


それはそうと私もあの写真は消してもらいたいと伝えるともう消したとのことだった。


「骨格、筋肉のつき方共に理想的なつき方をしているな。」


さっきまでの情けない姿から一転真剣な表情になる。

クレア先生もこれ以上は干渉しないようで見守っている。

朝早くに起こされた恨みも解消されたようで良い顔をしていた。


「では走り込み5キロ、棒の素振り500回初め。」


え?

最初はイカついおっさんで次は奥さんの尻に轢かれてる情けないおっさんで油断していた。

クレア先生が呼んできた時点で類友だという事に。


「はぁはぁはぁ。」


私はやりきった偉い。

若干思考低下しているがそれより酸素が欲しい。


「驚いたなやりきるとは。フォームも崩れていないし。」


「団十郎、流石の私でも初っ端からあのメニューはドン引きだわ。」


「クレアが鍛えていると聞いてこれの半分はできると思っていたのだが。」


半分でいいなら止めろ鬼共。

正に乙状態の姿勢で呼吸をしていると団十郎が私を仰向けにし手や足を持って動かす。


「見ていて大丈夫とわかっていたが筋に異常は無いが2日くらいは休ませるか。」


2日休めると聞いて舞い上がっていたが。


「嬉しそうな所悪いが学業の方は続行だと思うぞ。」


クレア先生の鬼。

これが本当の幼女だと引きこもるぞ。


「よし妙さんに引き渡してから帰るか。」


クレア先生が米俵を担ぐように私を担いで屋敷に帰ろうとすると。


「小冬音ちゃん2日後に専用の木刀と暗器作っておくから楽しみに待っててね。」


木刀はいいとして暗器って?


「多分あいつ流派の全部を教えるつもりだね。アメリカ陸軍格闘術に古武術、あとはシステマあたり使える奴も呼ぶか。」


若干怖い笑顔でこちらに手を振る団十郎と更に地獄を追加しようとするクレア先生とヤバい人達に囲まれながら屋敷に運ばれていくのであった。



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