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うーん。ふかふかなベッドに肌触りがいいシーツ、そして小さな温かい物。
・・・?
目を開けてみると記憶にない部屋。
ああ、昨日連れてこられた家か。
周りを確認して動こうとすると動けない。
頭を上に向けてみると昨日母親になった初音さんがいた。
そして自分の手を見てみると手が胸に当たっていた。
役得と思いながらも興奮等はせず少し虚しくなった為声をかける。
「おきてください。」
同時に揺すってみると初音さんが目を覚ました。
「起きたのね小冬音、寂しくなかった?」
首を振り起きようとすると股の方が涼しいような・・・。
布団をめくってみると・・・。
28年間生きてきたのに布団に地図ができていた。
「ごめんなさい・・・。」
涙脆くもなっているのか半泣きである。
「いいのよ。昨日はトイレに行かず寝てしまったものね。」
優しく私を撫でると初音さんは妙を呼んでくると部屋を出ていった。
男と違って女の人はトイレが尿道の長さの関係上近いと聞いていたが一生の不覚である。
妙さんを待っている間にパジャマのズボンを脱ぎ着た記憶が無い可愛らしいパンツも脱いで両手で持っているが床に置くわけにもいかず下半身丸出しで呆然としているとドアが開いた。
「あらあら女の子なんだからこんな格好してちゃダメよ。」
妙さんは私からズボンとパンツを受け取り洗濯カゴに入れ部屋のタンスにあったパンツとズボンを履かせてくれた。
「ごめんなさい。」
「いいのいいの子供のうちは誰だって通る道だから。」
すみません28歳です。
「お風呂に入ろうか、一緒に行くよ。」
妙さんに手を繋がれ脱衣所まで案内される。
脱衣所も一般家庭と違い私の元部屋と同じような広さに2mありそうな鏡に大理石が敷き詰められていた。
「はい脱ぐよバンザーイ。」
言われるまま両手を上げ全裸になっていく。
妙さんが一緒に入ってくれるのかなと思っていると。
「奥様、小冬音ちゃんお願いしますね。」
え?っと妙さんの方を見るが笑って背中を押される。
前方を見ると真っ白な肌をした全裸の初音さんが・・・。
やはり興奮はしないが恥ずかしさはある。
後ろめたい気分を隠すために声をかける。
「初音さんも私のせいでごめんなさい。」
「さっきも言ったけどいいのよ。そうね許して欲しかったら一つお願い聞いてくれるかしら?」
可愛らしく首を傾げながらお願いしてくる。
「はい、私にできることなら。」
「私のことを初音さんじゃなくてお母さんって言うこと。」
私の口に人差し指を当ててくる。
恥ずかしさと照れていることで声が小さくなり。
「おかぁさん・・・。」
「可愛い!」
初音さんが抱きついてきた。
更に私の顔が赤くなりふらつくと。
「ごめんなさい、可愛くてつい。」
ニコニコ笑う初音さんを直視できなくなり視線を逸らす。
「もう拗ねないで悪かったから。」
拗ねている訳では無いが初音さんと距離を取り頭を洗うためシャワーを浴びにいく。
すると初音さんが着いてきて。
「私が洗ってあげる。娘ができたら洗ってあげたかったのよね。」
私が椅子に座るとシャワーをかけてくれシャンプーで頭を洗ってくれる。
「銀色ってだけで珍しいのにサラサラで手に引っかからないし良い髪ね。」
シャンプー、トリートメントをしてもらい更に背中を流してもらい前も洗おうとされたが断り自分で洗っていく。
「遠慮しなくてもいいのに。」
遠慮じゃなくて色んな意味で気まずいのです。
全て洗い終わり湯船に浸かると。
「こら、髪が痛むから湯船に髪をつけちゃダメ。」
そうなの?っと首を傾げていると初音さんが髪の毛を編み込んでくれて湯船に浸からなくなった。
「これでよし。」
そういうと私を引き寄せて抱き抱えるように入浴する。
抜け出そうとしたがガッチリホールドされた為諦めた。
「こんなに可愛い娘ができて神様に感謝しなくちゃね。」
「おかぁさんは他に子供いないの?」
「いないわよ。子供が欲しくてもできないのよ。子宮頸癌っていう病気で子供ができるところ取っちゃったからね。」
気まずい空気が流れるかと思ったが。
「でもいいのよ。小冬音っていう娘ができたから。」
初音さんの中では吹っ切れた悩みなのだろう。
幸せそうに笑っていた。
私は騙しているようで罪悪感を覚えたがここまで大事にしてくれるならこの人の娘でいようと決意した。
「おかぁさんの娘になれてよかった。」
まだ私の中では初音さんでお母さんと本気で思えていないが親子になれるよう寄り添っていこう。
初音さんは私の言葉で目を丸くしたあと心底嬉しそうに私を抱きしめた。