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別視点5

「エリック・・・・。あの子供たちは実験に付き合わせなくていいんじゃなかったのか。」


昨日まで孫とその友達と一緒に過ごしていた軍服姿の老人が組んだ両手に額を乗せた状態で座っていた。


「アーロン、クレアの時もそうだったじゃないか。国の為己の人生を捧げたじゃないか。何を今更。」


「今だからこそだクレアを軍に入れたことも今となっては後悔している。あの子は母親が死んだのは私のせいだと、仕事ばかりで家庭を顧みなかったせいだと私に反抗するようになり悪い連中と連むようになった。私はクレアの気持ちを考えず小根を叩き直そうと軍に入れた。その結果が軍でできた恋人の死だ。」


「アーロン、彼の事は残念だったが軍にいる以上殉職するのは仕方がない事じゃないか。」


「ああ、仕方がない。だがあの作戦の指揮権は有していなかったが人事には口を出せた。だが私情で軍を動かす事は大罪だ。当時一度だけクレアが私を責めたがクレアも軍の人間、私が口を出すという事がどういう事か理解している。だから今は何も言ってこない。心根は優しい子だ父である私の為に孫を寄越してくれるが任務以外で家に寄り付かなくなった。任務で家に帰って来ても元上司と元部下だよ。」


椅子に腰掛けている老人は家で孫といた優しい老人でも軍服を身に纏った凛々しい姿でもなく人生に疲れ切っている表情をしていた。


「私も悪いと思っているよアーロン。クレアはともかくアリスのあの才覚。新たなる時代のうねりに飲み込まれるだろう。その時に目の届く所にいてもらった方がいいだろう。私にとっても孫みたいな物だよアリスは。」


「なら何故この作戦に組み込んだ。クレアが夫を亡くし軍を抜けた時お前の所で拾ってくれたのは感謝している。だが軍より比較的安全だと考えたからだ。それなのにクレアどころかアリスまで。」


アーロンは机を叩き目の前の男を睨みつける。

男は睨めつけられても動じない。


「我々カンパニーだけじゃない。お前の知らない所で軍も動いていた。新人類になれる新たなる子供を。ダンジョンの出現によって皆魅せられたのだよ。人類の可能性に。資本家達は自分達の無能な子供に挑ませようとしたが無理だと判断し次に優秀な配偶者を鍛えればいいと判断した。軍はそれぞれの軍事産業企業や将官が他の企業や同僚に差をつけようと密かに優秀な人材を探っている。我が国の子供たちの中に天才もいるだろう、秀才もいるだろう。だが将来もそうとは限らない。アリスはそんな中で完成されている。ハーバードの修了レベルだと聞いている。容姿も良くこの状況下で放置する勢力はいないだろう。アーロン、君も権力者によって世に言う小さな天才達がどう言う末路を辿ったか知っているだろう。そうならない為にも私たちの目の届く所にいてもらいたいのだよ。」


「わかっている、わかっているさエリック。だが頭でそれが最善だと分かっていても心が、今までの出来事に対する罪悪感が納得できないのだよ。妻が亡くなった時も後悔はしたさ、でも私は軍人だ国に忠誠を捧げた身だ。妻も天国でわかってくれると思い込もうとした。いざ今度はクレアやアリスがいなくなってしまうような事になれば私は・・・俺は何の為に国に奉仕してきたのかわからなくなりそうで怖いんだよ。」


歯を食いしばり心の内を吐露する。

彼は優しすぎた。

血なのだろうクレアにもその血が受け継がれているようで憎いはずの父を憎みきれず優しいからこそ一人にはしない。

けれどクレア自身が近くにいるのは耐えられない。

父を侮辱してしまうから。

だから娘を、彼にとっての孫を定期的に遊びに行かせていたのだろう。


「クレアとアリスは死なんさ。この作戦は失敗できない。だからこそ我が国最強の特殊部隊員の中でもダンジョンで飛び抜けた力を得た者を2人、日本からは特殊作戦群のやつが1人ついてるんだ。それにダンジョン自体も強いモンスターが出てこない狩場だ何か起こっても対応できるように後詰めに一個大隊がいる心配ないさ。」


男はアーロンの肩に手を置き囁く。


「私を信用してくれアーロン。」


その言葉に頷くとアーロンは部屋を後にした。


「老いたな。お互いに。」


寂れた老人は家族のへ愛を優先しスーツ姿でエリックと呼ばれていた男は国を優先する。

どちらがいいということではない。

最後に罪悪感で許しを乞い贖罪をするか罪の意識すら糧にして信念を貫くか。

エリックはアーロンがいなくなるとある部署に連絡を取る。


「ああ、私だ。陸軍参謀総長の周囲を随時確認し動きがあったら知らせてくれ。」


電話を終えコーヒーを入れ席に着く。

一口飲み込溜息をつく。


「すまんなアーロン。私は例え孫が、私が地獄に堕ちようと国の為に尽くす。だが私も人の子だ。アリスが死なぬよう最善の策として銀髪の護衛に回した。将来銀髪がアリスに依存し守って貰えるように。」


銀髪の、小冬音の身体データを見ながらコーヒーを飲み干す。


「私がアリスのためにできるのはここまでだ。だから一番のイレギュラー、我が国の敵にならないでくれよ。」


銀髪が敵になればアリスも叩き潰さなければならなくなる。

そんな未来になっても銃の引き金を躊躇なく引く。

エリックが望むのはそうならないように祈るだけ。

あとは国の為にしか動かない、最後の良心はこれで終わり。





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