誘拐?
第1師団隊舎内ホーナス・ヘンドリクス宅にて
「勇者召喚に関する文献をいくつか当たってみたがどれもミアの言っていたようなことは書いてはいなかった」
その日の夕方には調べ物が終わってホーナスの部屋でその結果を聞いていた。1日で調べたと言うがホーナスの横には乱雑に置かれた勇者に関する物と思わしき分厚い文献が何冊も積まれている。それが視界に入った中で彼の話を聞くとミアは少し申し訳なさを感じていた。
「そっか。でもありがと、調べてくれて」
「いいんだ。私も気になっていることだ。7日後に禁書室に入れる許可が下りたから何かあればまた話そう」
「それは嬉しいけど大丈夫なの? 禁書室の本の中身教えるのって」
「本当は禁じられているがまぁ、バレなければ問題ない」
「あーー、そうね」
(うっかり国の重大事実を握らされるとか無いよね?)
今度は禁書室まで入って調べると言ったホーナスに申し訳なさ以上に知ってはならないことまで耳にしてしまうのでは無いかと怖くなってきたミアであった。ただ、そこまで出会ったばかりの自分のためにあれこれと調べてくれる彼に少し感心もしていた。
「今日はこんなところだな。明日からフレディのところで訓練だろ? 早く戻って休むといい。送ろうか?」
「いいよ。城内だし安全よ」
「そうか、そうだな」
「そうよ、またね」
「あぁ」
「…本当に瓜二つではないか……」
ミアとサリーが帰った後、小さくそうつぶやいた。
翌日、第6師団隊舎前。
サリーと共に隊舎まで行くと、フレディが仁王立ちで待っていた。
「よぉし来たな嬢ちゃん! 動きやすい格好できたな。じゃ、行くぞ。森」
「森?」
「森」
「なんで?」
「いやだって、実践のがいいだろ! 森行こうぜ! 魔物と戦えば強くなる! よし行こう! さぁいくぞ!!」
と言ってフレディはミアを強引に引っ張っていく。
「イヤよ!絶対イヤーーーーー!!!!」
「ミアさまーーーーー!!!!」
「馬車で半日かかるなんて聞いてないわよ」
「まぁ言ってないからな」
ちなみにこの森で3日間過ごすことも来る途中で聞かされた。
「で? ここには、その、どんな魔物がいるの?」
「そんな強い魔物はいないな。ゴブリンって緑のちっこいのとかちょっとでかいオオカミとかくらいだな。森の最奥にはグリフォンってのの群れがいるんだがそれはひとまずいいや」
そんな話をしていると第一魔物発見。
「お?いたぞ! ゴブリンだ! よし、やれ。武器これな」
フレディはさもアメちゃんでも渡すかのように手に持っていた片手剣をミアに渡す。
「えぇぇ! チョット無理よ! 切るの!?」
「いいから大丈夫だって! ほら、剣先あいつに向けてるからこっちに向かってきてるぞー」
「無理無理無理無理、無理よ! イヤぁぁ!」
剣を振ることもできずにミアはゴブリンに腕を捕まれた。
「離れて! やめてよ!……???」
腕を振り回してみるとゴブリンは弾丸のように吹っ飛び、木にぶつかって破裂するように死んだ。
「中々エグいなぁ。嬢ちゃんいい趣味してんねー」
「何よこれ! 私どうなっちゃたの!?」
「勇者なんだから雑魚じゃ困るだろ?」
「いや、あぁもう!何なの!? こっち来てから訳がわかんない! ねぇ!私はどうしたら良いの!?」
「戦うしかねぇだろ。勇者なんだから」
(教祖のがまだマシよ……)