精々1割程度
一応、生存中……
「やっぱり無理だわ。追いつけない」
オアシスの消失に魔王の出現、そしてその魔王を勧誘。一連の出来事はロブとタイラス以外には想像がつかない。
「それもこれもな〜んにも教えなかったロブのせいだぞ。もぅ、しょうがない。聞きたいことがあったらこの魔王様が答えてあげましょう」
「いや、そう言われても聞きたいことが山のようにあって……まだコッチも整理ついていないのよ」
「なるほど……じゃあ止めた! 話はまた今度にしよっか!」
「……勝手にしてくれ」
「というわけで、これからアダムのところ行こうと思うんだけどなんか伝えたい事ある? あとそもそもどこにいるか分かる?」
「……!!」
ロブの目が点になった。
「ヤツのところへ行くのか!!?」
「行くって言ったろ?」
「……なぜじゃ」
「まぁ、アイツもかつての仲間だからな。ロブのところに来といて行かないわけがないでしょ」
「ヤツとわしを同類にするな!!」
「そんなことは言ってねぇって」
ロブは酷く動揺している様子。
その光景を見ていた全員が魔王を忘れて物珍しそうにロブに視線を向けている。
「……もう一度聞くけどアダムがどこにいるか知ってるか?」
「……知らん」
「ならやっぱり昔話しよっか」
「……」
「改めて自己紹介、というのは止めておこうかな。ライオン君にもう名乗らないって言っちゃったしね」
「雑魚が粋がるな……」
「そりゃどうも。ってことでみんなの事を聞いておこうかな! まずは、当代の勇者である君から!」
ミアは少し恥ずかしそうにしながらも自己紹介を始めた。
「えーっと、私はミアホワイト。ミアでいいわ」
「ミアね。良い名前だ。お次はそっちの気の弱そうな獣人族の子ね」
「気の弱っ……あ、はい。ヤマトって言います」
「よろしくヤマト君」
タイラスはこの場の全員を見回して再度口を開いた。
「知ってる人もいるかも知れないけど俺とロブは大体530歳くらいなのね」
「「530歳!?」」
「えーっと、この様子だと知ってたのはフレディ君とそこのライオン君だね?」
「この獣人族とは昨日会ったばかりじゃから知ってるのはフレディだけじゃ」
「どおりで彼がこの中にハマってない感じがするのか!」
「まぁ、そういうことじゃ」
ロブの声にまだハリが戻らない。
「で、丁度500年前にミアの先代の勇者が誕生したんだけど、その儀式に俺とロブは参加してたわけ」
(あぁ、儀式ってあの仰々しいアレね……って500歳がまだ頭から抜けないのに……)
「ついでに言うとさっき言ったアダムもその儀式にいたのね。それで誕生した勇者にロブが惚れちゃったの!」
(惚れたって! おじいさんもバツが悪そうな顔してる……)
「え、勇者って女だったの?」
思っていたことをそのまま口に出してしまったミアはバツの悪そうな顔をした。
「君も女なんだしあってもおかしくないだろ? どうせ召喚されるのが男か女かなんて2分の1じゃないか」
「……そうね、本来はそうよね」
「脱線はそこそこにしておいて、その先代勇者は当たり前だけど死んじゃったのね。それはしょうがないんだけど、問題はあのアダムがその遺体を持っていっちゃったんだよ。そしたらロブのヤツが怒っちゃって喧嘩してるってわけ。昔話は以上になるけど、質問ある人!」
フレディが質問の意思を見せる。
「その話をした意味は何だ? まさか昔を懐かしんでってわけじゃねぇだろ?」
「ロブと思い出話がしたかったってのもあるけど、なんでわざわざみんなの前で話したかって言うと、アダムが君たちが戦う相手だからだよ」
500歳が生きているということ、そしてこれから戦う敵がロブの旧友という事実。疑問を質問で解消すればまた新たな疑問が生まれる。
少し沈黙が続いた後、ミアは恐る恐る複雑に絡んだ過去をほどこうと口を開いた。
「私がそのアダムって人と戦う理由って勇者の遺体を奪いたいから?」
「そうだな。だよなロブ?」
「……それだけではない」
「でもそれも理由じゃない?」
「……」
「私情よね?」
「……それだけではない」
「なんで私がおじいさんの私情に命賭けなきゃいけないの?」
「だからそれだけではないと言っているじゃろうが!!」
「……じゃあ他って何よ」
「人類の皆殺しってやつだろ?」
フレディがすかさず自身が知っている『理由』を話す。
「えっ? どういうこと……?」
「言葉通りだ。それ以上は俺も聞いてない。で? そこんトコどうなんよじじい?」
「……わしにもよく分かっておらん」
「……そうかよ。知らないのか調べる気が無いのかどっちでも良いけどよ。俺みたいな阿呆じゃない限り理由も曖昧なお願いにひょいひょいついてくるヤツなんていねぇぞ」
「……」
「まぁまぁ! もっとテンション上げていこうよ!」
見ていられなくなったタイラスが場を和ませようとするが、
「……貴様がいらんことを言うからじゃ!!!!」
場が再び静まり返る。
「……俺もロブの性格を理解してるつもりでいるけどさ、今のままじゃアダムには勝てないよ」
「何が言いたい」
「彼女がお前の思い通りに動いてくれるとは限らない。先代勇者がそうであったようにな」
(??……今私にウィンクした……?)
「もう俺は帰ることにするよ」
「……さっさと帰れ」
「ロブ君はほんっとにつれないな〜……まぁいいけど。ミア、コイツは面倒くさいヤツだけど一緒にいてやってくれよ」
「え、えぇ、わかった……?」
タイラスはミアの反応を見てクスクス笑っている。
そのまま来た道を帰るように空へ飛び上がると骨と化したオアシスが姿を現しその背中に乗った。
「それじゃ〜ね〜! あっ! あともう一つ言いたいことが! 本当に辛くなったら俺のとこ来なよ〜!」
そう言いながらタイラスは飛び去っていった。
怒涛とも言える異変の連続に疲れたミアは大きくため息をついた。それを見かけたヤマトが声を掛けにいった。
「大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫だよ」
「そう、ですか。それにしてもあの人って何だったんでしょうね」
「さぁ……不思議な人だね」
大陸の中心地。
ぽっかりと空いた穴。ある人は『魔の淵』と呼ぶこの場所の底に一体のドラゴンが降りてきた。
そしてそのドラゴンから一人の男が降り立った。
「……やはりシャバに出ると大変だな」
その男、タイラス・ローズからは今までは無かったはすの黒い靄が溢れ出してきている。
「それにしてもあの青年は大丈夫だろうか。昔の俺に少し似ている気がするんだよな〜」
タイラスの頭に浮かぶのはヤマト。彼と似ているという『昔』とは一体いつのことを指すのだろうか。




