上から目線の上で寝そべる
10日後、ソロン帝国内のとある森の中。
「……どうやって帰るの……?」
迷子なう。
彼らには地図もなければ金もない。誰かに道を聞こうにも森に他に人がいるわけがない。
「走るしかないだろ」
「却下」
「なんだよ! だったら文句言うんじゃねぇ!」
「走って誰かに会っちゃったらどうするのよ! 私たちと獣人族じゃ見た目が違うの!」
「じゃあどうすんだよ~!」
フレディが頭をかきむしっているとヤマトが何かを見つける。
「あれ……人だかりが……」
「「人だかり!?」」
ヤマトの視線の先には確かに人だかりがある。
「チョ、チョットどうしよう! 隠れないと!」
「ガタガタうるせぇ! えーっと木だ! 木の上に行くぞ!」
木の表面を駆け上がっていくと既にロブが高い木の上に座っていた。
「遅かったの」
「このくそじじい……」
「あー……でもこれだとヤマト君がね……」
下を見るとヤマトはあたふたしていた。
「将軍……あそこに人が……」
それを聞いた白馬に乗る右手が包帯でぐるぐる巻のミセビッチ将軍はヤマトの方を見る。
「なんでこんなところに人がいるんだ」
実を言うと彼らも絶賛迷子中。ミセビッチ将軍は一応とばかりに左手に持った鎖を引くとそれに繋がれたボロボロの男が前を走り出し、鎖をピンと張りながらヤマトの近くまで行った。
「え、えーっと、どなたですか?」
「……こいつです!」
男はミセビッチ将軍の方を振り返ってそう言った。するとミセビッチ将軍の白馬は速度を上げてヤマトの元へ向かった。
「貴様がヤマトだな」
「え? いや、はい?」
「じゃあ貴様があの巨大な竜を倒したということだな」
(竜って龍神様のことだよな)
「あの竜は、僕が倒したというわけじゃなくて、他の人が倒した、んですよ」
「それは人間族のやつか」
「え? そ、れは……えーっと」
「とぼけても無駄だ。こいつから聞いている」
そう言ってミセビッチ将軍はまた鎖を引っ張った。
(この人って……村の衛兵さんだ!)
ヤマトは少し身構えるがミセビッチ将軍は気にせず話を続ける。
「その人間族はどこにいる」
「えーーーーっと……どこだったっけな…………」
(マズいマズいマズいマズい……)
「まぁいいが、その人間族はあれをどうやって倒した」
「あの……殴ったり蹴ったり?」
「それだけで勝てるわけがないだろ!」
「あ、ああ! 魔法も使ってました! 土が盛り上がってくるやつ!」
「土を盛り上げてどうするんだ」
「ミアさ……人を持ち上げて、その人が竜の頭に落ちたりとか……僕もよく見ていないんです」
「竜の頭が潰れているのはそれが理由なのか」
「多分そうだと思います」
「そんなわけがあるか! 何かからくりがあるのだろ! でなければあの竜に勝てるはずがない!」
「でも本当にそうなんですよ」
「ふざけるな! 俺様は10日間も貴様を探して得た答えが殴る蹴ると土だと!!」
「すいません! でも、何で僕を探していたんですか?」
「あの竜を倒した奴にブラッドハンド大王が会いたいそうだ」
「大王様が……?」
「そうだ。だから俺様が倒したからくりを聞いてやろうと思ってな。そうすれば俺にもあの竜を倒せるようになり、実質俺があの竜を倒したことになるだろ」
「はぁ……」
(なるのか?)
「とにかく! からくりを思い出せ!」
「いや、でも! あれが本当で……」
「ならわしが手取り足取り教えてやろう」
突然2人の前にロブが上から現れる。
「お、おじいさん!?」
そしてそれに遅れてミアとフレディも降りてきて、フレディはロブにゲンコツを落とした。
「何するんじゃ!」
「こっちの台詞だ!」
「少し黙れ!」
このミセビッチ将軍の言葉にはっとした2人はミセビッチ将軍の方を見る。
「き、貴様らが巨大な竜を倒した人間族で間違いないな」
「あっておるぞ」
「どうやった」
「さっきヤマトが言った通りじゃが?」
「そんな話信じられるわけがないだろ。流石は人間族だな」
「ハァ……フレディ。丸太を一つ持ってきてくれ」
「面倒くせぇな~。チョット待っとけ」
そう言ってフレディが持ってきた丸太は直径1mはありそうな巨大なものだった。それを見たミセビッチ将軍は「ほぉ……」と感心したような声を漏らす。
「ミアちゃんや。串を作ってくれ」
「え……」
嫌そうな顔をしながらミアは丸太から串を作る。もちろん怪力を使ったつまみ製法で。ミセビッチ将軍は丸太の中に元々その形で串が埋まっていたのではないかと目を飛び出して驚いていた。
「ほら……そりゃ驚くわよ」
「どうせただのからくりだ! 何をしたんだ! そうかその丸太が柔らかいのだ! だから人間族の娘でも出来たんだ!」
「はぁ……それならいいんですけどね……」
「ならばそなたもやってみれば良いではないか」
「え……?」
「さぁ、どこをつまんでも良いぞ」
ロブに促されるようにミセビッチは丸太の前に立つ。そして恐る恐る左手の親指と人差し指を丸太に触れさせて力を込める。
が、2つの指は何の成果も得られず密着した。何度やっても結果は変わらず、爪を立ててつまもうとしたところで深爪をして諦めることにした。
「……こんなこと出来るわけがないだろ!」
「わしらがあの竜を倒した理由が少しは分かったの?」
「うるさい! その娘の手に何かあるのだな!」
そう言ってミセビッチはミアの腕を乱暴に掴む。
「チョット! 止めて……! あ、」
ミアはミセビッチの手を振りほどいた。
ただミアの尋常ならざる力で手を振りほどかれたミセビッチは遠く遠く先に飛んで行っていた。
「「「「「ミセビッチ様!!!」」」」」
取り巻き達はミセビッチの元へ駆け寄って彼の体を起こす。
「き、きさま!! 何を使った!」
「別に何も使ってないんですけどね……」
「そんなわけがない! 下等種族が俺様を吹き飛ばすなどあり得ない!」
ミセビッチは恐怖でひしゃげた顔でミアをにらみつける。
「まぁそうカッカするでない。それよりわしはそなたにお願いがあるんじゃよ」
そう言いながらロブはミセビッチの方へ歩いて行く。歩を進めるたびにミセビッチは転んでしまった殺人鬼に追われるホラー映画のモブのように後ずさりするが、それに応えるように取り巻き達はミセビッチを押し返す。
「さっき大王様がわしらに会いたいって言っておっただろ? もうそなたがわしらの真似は出来ないと分かったことだし、連れてってくれんかの」
「……はい」
ミセビッチにはロブの顔はおそらく人の皮か仮面を被った男のように見えていただろう。
私はホラー映画は見れません。怖い……




