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翌朝、獣人領ソロン帝国内のとある森の中。
「……んぁ……?」
ヤマトはパチパチと鳴る焚き火の音で目を覚ます。うなるような声を漏らすとミアがそれに気づく。
「やっと起きた! どこかおかしくない? 大丈夫?」
ミアが体中をジロジロと見てくるのに恥ずかしくなったヤマトは「はひ! 大丈夫です!」と叫び、分かりやすく顔を赤らめた。
「ヤマト! 身体動くか?」
さっきの叫び声でフレディもヤマトの元へ近づく。
「からだカラダ……動きます! 痛くもないです!」
飛び上がってブルブルと身体をふるわせて異常がないことを確認した。
「よし! なら早速訓練だ!」
「ちょっと! ヤマト君は怪我明けなんだって、アンタも怪我明けでしょ!」
「なんだうるせぇな〜……お、じじいが帰ってきたな」
「年寄りにおつかいさせるなんて可哀想だと思わんのか」
「じゃんけんで負けたんだから仕方ないでしょ?」
「あの憎きジャンケンは二度とやってやらん」
ミアとフレディは大笑いをしながらロブが持ってきた鹿のような魔物の解体にかかった。
「ヤマトよ、村のこともあるじゃろうが、ひとまずは食べなさい」
「村……?? あぁ、そっか……」
「……ヤマト君! ちょっとコッチ手伝って!」
村での最後を思い出し、テンションが下がっていたヤマトを見かねたミアは彼の気を紛らわせようと解体を手伝ってもらうことにしてみた。
「あ、はい! 今行きます!」
「じゃあ、ここ押さえててね」
「うぉぉ……結構グロテスクですね」
「慣れるまでちょっと時間かかるかもね。私もこのアホが無理矢理教えてきたときはすっごい苦労したのよ」
「誰がアホだ」
「そういえばさ! 村長のこと、守ったんでしょ? カッコよかったよ」
「ホントととですか!?」
(トとと?)
「え、えぇ、ホント」
「肉焼けそうなくらい顔熱くなってんな」
フレディはついでとばかりに疑問をぶつける。
「ヤマトはよくあのブレスを耐えたな」
「あぁ~……あれは獣人族だから、っていうわけじゃないんですか?」
「獣人族も、くらったらひとたまりもないはずだぞ。俺もアレよりかはいくらかショボいのくらったけど立ってらんなかったんだけどな」
「フレディさんで立ってられないなら……ホントになんででしょう?」
「俺が知るかよ」
「そうですよね……あ、でもそういえば必死だったんでよく覚えてなかったんですけど、パリンって音がしたんですよ。偶然かも知れないですけどなんか関係あるのかな~と思って」
「ふーん……何だそりゃ?」
「ギフトじゃない!?」
「ギフト?」
ヤマトには聞き慣れない単語が飛び出してきて首をかしげる。
「ギフトっていうのは……あのー……いわゆる能力者よ」
「能力者……あぁ能力者ですね」
(小学生の時に良介君がしょっちゅう真似してたやつだ)
「そうそう、だからヤマト君は……ガラスを作る能力?」
「……それ弱くないですか?」
「あ! そうね、そうだったね」
そんな話をして笑い合っている内に手元の鹿魔物の解体が完了していた。
解体した魔物をフレディがナイフで作った木の串に刺し、岩塩をかけてから焚き火で炙り焼きにした。ちなみにミアも数本作ったが彼女の場合ナイフでは上手くいかず、結局思いついた木から直接串の形につまみ出すという荒技で作り、ミア自身がその作り方を出来るということにショックを受けて数本で止めたのであった。
朝食を終え、食休みをしているとミアからロブに一つの質問が投げかけられた。
「そういえば獣人領に来た理由って教えてもらえないんですか?」
「あ~それかそれか、まだ話しておらんかったの。一番は戦力じゃの。獣人族は個の強さの高さがあるから白兵戦には持ってこいじゃからな。それともう一つ、ただ今まで来られなかったからの、単純に視察という意味もあったの」
「じゃあこれからまた白兵? をやってくれそうな人を探しに行くんですか?」
「そうじゃの……それはまた今度でも良かろう。あんまり強くないしの」
「えぇ……」
「じゃからもう帰るのもいいんじゃがの……」
「ならさっさと帰っちゃいましょうよ! きっとティモアはヤマト君も気に入ってくれるはずよ!」
「それなら帰るかの。じゃが自動車もないから時間もかかるがの」
「あ……もう! イヤなことわざわざ言わないで!」
「すまんすまん! 遠いなら出発は早いほうが良い。すぐに行こうか」
4人は立ち上がり、帰りの道を探しながらバイロンやリリーが待つティモア帝国を目指す。
「ティモアってどんな国なんですか?」
「ティモア帝国はね! 科学が栄えててね――
一方その頃、アーノルド・ミセビッチ将軍宅。
巨大な敷地に3階建ての大きな屋敷の最上階の中心にある部屋の椅子に目の前の机に足をかけて座っているアーノルドミセビッチ将軍は機嫌良く鼻歌を歌っている。
「あの竜が運ばれてくるのはいつになるか……それにそこら辺で死んでた魔物も大体は焼け焦げてたが、骨はどれも使える……あれでいくらになるだろうか」
そんな幸せに満ちた部屋にノックの音と共に風穴が開けられる。
「ミセビッチ様大変です!」
「なんだこんな時に! 俺の気分がいいときに邪魔しやがって」
「申し訳ありません! しかし! 大王から手紙が届いたのです!」
「何!?」
ミセビッチ将軍の背中から冷たい汗がべっしょり流れる。
「は、はやく寄越せ!」
部下から手紙を強引に奪い取って中身を見るとただ一言、『来い』と書いてあった。
「……出発の準備だ! 城へ行くぞ!」
「え? は、はい!」
ミセビッチ邸は大混乱の中、ローガン・ブラッドハンド大王が待つ城へ向かった。
ソロン帝国城内大王の訓練室。
「てめぇ、何で呼ばれたか分かるか?」
「……い、いえ、あのー……」
ミセビッチは跪き、目の前の木剣を持ったローガン・ブラッドハンド大王に頭を垂れている。
突如ミセビッチの元に白い塊が落ちてくる。
「これが何か分かるか」
「これは……えっとー……」
「ドラゴ村というきたねぇ村で死んでた巨大な竜の歯だ」
「歯……です、か……」
「そうだ。これを倒したのはお前か?」
「い、いえ、私があの村に着いた頃には死んでいました」
「なら誰がやった」
「それは……わかりませ……あ」
顔を上げると鬼の形相の大王様がいた。
「強い奴がいたら俺に知らせろって言ってるだろ!! あれだけの竜の頭をお前には潰せるか!!?」
「も、もちろんでございます! 私ならあのくらいどうってこと……ブヘェア!」
大王様はミセビッチの顔面を蹴り上げた。
「ど、どうして!?」
「なら俺様の腹をなぐってみろ。それで判断してやる」
「そんなことをしたらブラッドハンド様の身が……」
「いいじゃねぇか。てめぇ大王になりたかったんだろ? 俺様をここで殺せばその瞬間てめぇが大王だぞ」
「へ……? なぜそれを」
「そんなこたぁどうでもいい!! 早く立て!!」
「はい!」
「じゃあやれ」
「いや……」
「やれ!!」
「は、うわぁあぁ!!!」
ミセビッチは振りかぶって大王の腹目がけ拳を投げ出した。
グチャァ
拳に目を向けると手の甲からは骨が飛び出て血が噴き出していた。
「さっさと探しに行ってこい」




