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PROTECT HERO!!~勇者争奪戦~  作者: 檸檬
episode3
53/60

ただいま

「「本気か!!?」」


 2人とも、特にフレディはミアの言葉に驚く。


「おい嬢ちゃん、どっかおかしくなったのか? 暑いからか? 暑いからなのか!?」

「私は正気よ。さっき思いついちゃったのよ、それにどうせ無傷で一番高いところから落ちることができるのって私でしょ?」

「だからって……ちょっと前は化け物より落ちるのが怖いとか言ってたのに……勇者ってのはよくわかんねぇな」


(やっぱりおかしくなってきてるのかもね……)


「さぁ! 早くしないと! もうオアシスも起き上がってるよ!」


 仰向けだったオアシスは翼をバタバタとさせながら起き上がると、口から火の粉を漏らしながら3人の方をにらむ。


「わ、分かった。ならコレに乗ってくれ。着いたら合図する」


 ロブはミアの近くの地面を切り出すように浮き上がらせた。


「ありがとう……じゃあ後よろしく!」


 その言葉を聞いたロブはミアを空高く送り出した。


「……後はフレディ。任せたぞ」

「がってんしょうち」




 既にオアシスはミアに向けてブレスを撃とうとしている。フレディは下顎まで跳んでいき、アッパーカットで止める。しかし不発とはならず、その場でブレスは爆発しオアシスとフレディにダメージを与えた。フレディの方は特に甚大で地上まで吹き飛ばされていた。


「……いってぇなぁ……調子のりやがって……ってヤバ!」


 オアシスは火炎放射を口から吐き出して、フレディを燃やした。


(あち~……こいつブレスだけじゃねぇのかよ……)


 ミアにかけられた水も完全に蒸発し、身体から煙が出てきている。しかしオアシスの攻撃は止まらない。もうフレディの目の前まで口を開けたオアシスが迫ってきてる。フレディを噛み殺そうとする直前にフレディはジャンプで避ける。距離をとるが大きくは取らない。


(クッソ……一旦退避したいところだがここを離れられないしな……嬢ちゃんはどこまで行ったか?)


 ここでフレディが身を隠せるほどの退避を行ってしまうとオアシスもこの場を離れることになってしまい、落下からある程度の時間を要してしまうミアの攻撃が当たらなくなってしまう。だからこそミアがロブのあげられる一番高いところまで送りそこから落ちてくる時間を稼ぐこと、そしてオアシスをこの場に止めておくことが必要になる。それを分かっているフレディはまたオアシスに立ち向う。


 再びミアにブレスを当てようとするオアシスにアッパーカットを食らわせ、またフレディは爆発で地面にたたきつけられ、仰向けで倒れる。


(嬢ちゃんは……もうあんな高くまで……早くしてくれよ……)


「フレディ着いたぞ!」


 ロブから待っていた言葉を聞く。


「なら……てめぇもそう来るよな」


 オアシスは再び火炎放射を浴びせる。フレディは立ち上がるが、それを避けようともせず真正面から受ける。

 顔と首を覆った腕の皮膚はただれ、服は燃え上半身がはだけていた。しかしフレディは2本の足で立ち続けた。


「さぁ……お次は?」


 フレディの予想通りオアシスは再び口を開いたまま迫ってくる。


(そうだよな……でなきゃバカ正直にてめぇの攻撃を受けてやらねぇっての……)


 同じ攻撃を同じように受けてやれば同じ行動をしてくれると読んだフレディは火炎放射をわざとくらい、オアシスが自分を食べに来ることを待っていた。


オアシスまでの距離、残り10m。


オアシスまでの距離、残り5m。


(まだ来ねぇのか?)


オアシスまでの距離、残り3m。


オアシスまでの距離、残り1m。


(頼むぜ嬢ちゃん! もう俺食われちゃうぞ!)


オアシスまでの距離、残り50cm。


オアシスまでの距離、残り50cm。


オアシスまでの距離、残り50cm。






 上を見上げればミアが顔をひしゃげたオアシスの頭上に立っている。


「お手柄だな」


フレディは下からミアに声を掛けた。


「封印竜の時と逆だね」


 そう言いながらミアはオアシスの頭から降りてフレディに肩を貸す。


「アホに助けられちまったな」

「だからアホって何よ……でもありがとね。お疲れ」


「フレディも無茶なことするわい。おかげでわしは楽だったがの」

「思いついちまったからな」


 ミアを見ながらフレディは遅れてやってきたロブにそう言った。


「じゃあフレディは正気じゃないわね!」

「この作戦を思いついた嬢ちゃんはどうなんだよ!」




 そんな話をしながら3人は巨大なドラゴンを背に歩いて行く。


 死者多数、負傷者多数、多くの建物が崩壊した。ミアが参加した戦いで最も悲惨な結末となった。






 ドラゴ村の外れ、自動車がある辺り。


 生き残りの村人が集まり自動車の後ろに身を隠していた。


「まさかやつらが連れてきたこの塊が俺たちを守ってくれることになったとは」


 自動車には大きな瓦礫が突き刺さっている。村人達はどうやら逃げている途中に自分たち目がけて瓦礫が飛んできたのだが、偶然そこにあった自動車がその瓦礫を受け止め、命を救われていたようだ。


「あぁ。そのおかげで村長を守ってくれたヤマト君が生きているんだからな」

「……でもこれじゃあもう……動かないですよね……」


 村人に看病されているヤマトは申し訳なさそうにそう言う。


「やはり死んでいるのか……本当にありがとう……」


 村人は涙ながらにそう呟いた。


(いやぁ〜……元々生き物じゃないんだけどな……でもミアさん達には悪いことしちゃったな……)


 この鉄の塊の正体を知っているヤマトは少し笑いそうになるが何とかこらえていると、どこかから声が聞こえたのでそちらに集中することにした。


「おい! やつらがコッチに来るぞ!」


(やつらって……)


 動けないヤマトは車の下から覗くと、そこには3人分の足が見える。それを見たヤマトは結局笑っていた。




「ただいま。ヤマト君」


――そっか……こんな優しい言葉だって理解してたはずなのに……なんで言って欲しいばかりで伝えようなんて思わなかったんだろうか――


「おかえりなさい……ミアさん!」

『ただいま』のお話でしたとさ

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