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PROTECT HERO!!~勇者争奪戦~  作者: 檸檬
episode3
52/60

遠いところの因果

 ドラゴ村。


「ちょ、ちょっとフレディ! 助けて!」


 空高く投げ出されているミアからのSOSに応じてフレディはミアの元に走り、抱きかかえるようにキャッチした。


「こんくらい自分でなんとかしろよ」

「無理よ! どうせ出来るんだろうけど!」

「変なところでビビリなのな。目の前に化け物がいるのに落ちるのが怖いのかよ」

「うっさいわねぇ」


 2人はそんな話をしながらドラゴンの方を向き、にらみ合う。ドラゴンの方は角から炎を噴き出し威嚇し、4本の足を地面にめり込ませる。


「こりゃ臨戦態勢だな」

「ならどうするの? 作戦は?」

「俺がサポートしてやるから嬢ちゃんがデカいのたたき込め。パワーだけなら俺よりあるんだし」

「もうちょっとレディに対して言ってるっていうことを考えて欲しいんだけど、いいわよ! やってやろうじゃない」


 作戦は決定。2人は覚悟を決めドラゴンの方へ突き進む。


 まずはフレディが先行し、ドラゴンの右足を抜けるように駆ける。ドラゴンもフレディを追うように首を向けつつ口を開け、ブレスの準備をする。だが、すかさずミアはドラゴンの左頬辺りまで飛んでいき、ハンマーで殴り飛ばす。ドラゴンもミアの一撃にのけぞったことで、口者とブレスはしぼみ左の前足が浮き上がる。

 それを見たフレディは体重が乗っている右の後ろ足に裏側から蹴りを入れようとするが、ドラゴンは尻尾を振り、フレディを弾き飛ばす。


「フレディ! 今行く!」


 ミアはフレディが吹き飛ばされた民家の方を見てそう叫ぶが、そこで自身の真上に浮き上がっていたドラゴンの左前足があることに気づく。


「んんぅぅ!!!!」


 そのまま押しつぶすように足が近づいてきて、ミアはその足を押し上げる。しかしそのせいでミアは動けなくなる。


(まずい……フレディ大丈夫かなぁ……)


 そんなことを思っていたが、杞憂だったようだ。瓦礫の中からフレディとロブが出てきてミアの元へ行く。

 フレディはドラゴンの左前足を殴り飛ばし、その隙にロブがミアを避難させる。そしてここで3人が集結する。


「おじいさん! いつ来てたんですか!?」

「流石にこんな化け物が気にならんわけがないじゃろ。こいつが来たときじゃよ」

「そんなことはどうでも良いんだよ。じじい、あの化け物について何か知らねぇか?」


 そう言ってフレディはドラゴンを指さす。


「あれは名をオアシスという、わかりやすい言い方をすれば『封印されし竜』じゃ」

「封印されし竜? そんな奴と戦ったことあるぞ」

「そうよ。ちょっと頭の中ごちゃごちゃになっちゃうじゃない」

「その封印竜とは別じゃから『封印されし竜』なんじゃ。前にわしが『封印竜は寝てるだけ』なんて言ったのフレディは覚えておるか?」

「『あれは寝てるだけじゃ』だろ? あれがなんだっていうんだよ」


「わしらが呼ぶ封印竜とは『封印された竜』ではないんじゃよ。あれは『封印をする竜』、この目の前にいる『封印されし竜』を封印するためのな」

「え…………じゃあこのオアシスってのがこの村を襲ってるのって……」

「俺たちがこいつを封印する楔を殺しちまったから、か?」


「そういうことになる。まぁ、どこからかランディフレイジャーが封印竜はただ寝ているだけだという情報を聞きつけて寝込みの無防備なところを古代魔法マリオネットで強制的にテイムしたからじゃがな」


 そう言いながらロブはミアの方を見やるが、ミアはうつむき唇を噛んでいた。フレディもそれを見てロブに『それじゃ無理みたいだな』という風に首を振った。


「俺は行くからな。嬢ちゃんはどうする?」

「……戦う」

「……一応言っておくが俺は戦いたいから行くんだぞ。嬢ちゃんは『みんなを守るため!』とかか?」

「……そうよ」


 思った以上に素直なミアにフレディは頭を掻く。


「……アホだとは思うけど、少しくらいは戦いに参加しといた方がいいかもな」

「アホって何よ!」

「みんな守れるわけねぇもん。ってことでお大事に~」


 そう言ってフレディは走って行った。それに遅れてミアも走って追いかける。


「さっきの『お大事に』はどういう意味よ!?」

「どうせこの状況は自分のせいだとか訳のわかんないこと考えてるんだろうけど、ならここでちょっとでも戦っておけば後で気が楽だろ」

「……そこまで言っちゃうなんて……フレディはモテないわね」

「うるせぇ」


 そんな話をしている間に2人はオアシスの近くまでたどり着く。

 そして走ってきたままの勢いで2人はオアシスの左の脇腹に足を突き刺す。オアシスは再びのけぞり、次は左の両足を浮かせた。


「両足潰すぞ! って何だ!?」


 浮かせた足元の辺りから地面がせり上がり、2本の足を更に持ち上げていく。そのままオアシスはひっくり返った。

 2人は後ろを振り向くとロブがピースしているのが見えた。


「あのじじいやるな……作戦変更だ! 顎だ!」

「了解!」


 2人はオアシスの腹を伝って顎へ向かう。しかしその途中、気温が上昇していることに気づく。


「なんか……暑くない?」

「あぁ……地面、いや腹から熱が出てる……一旦退避だ!!」


 2人は逃げるがもう遅い。仰向けのオアシスが叫び出すと同時に赤い衝撃波と共に強烈な熱波が広がっていき、2人に迫る。

 ミアはとっさに自身とフレディに水魔法でびしょ濡れにして身体が燃えるのを防ぐ。しかし衝撃波は止まることはなく2人をロブがいる辺りまで飛ばす。

 ロブは再び地面をせり上げて2人が落下する先のクッションにした。


「2人とも大丈夫か?」

「あぁ助かった……でもどうすっか……効いてるような感じには見えねぇな」

「攻撃を与えるチャンスはあっても決定打がないの」

「嬢ちゃんでもどうにもならないからな……」


 ロブのフレディの2人がこの状況を打破する作戦が思いつかず悩んでいると、ミアが切り出す。


「ねぇ……決定打があれば良いんでしょ?」

「?? 何かあるのか?」

「おじいさんさ……さっきの地面がグワーッてなるやつ、もっと高くまで届かせられない?」

「それは出来んこともないが、何をするんじゃ?」

「私を乗せてできる限り高く上げてください。上からアイツの頭をかち割ってやる」


「「本気か!!?」」

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