お軽い奴
そのまた翌日。
「やっぱり慣れないわね……」
「早く慣れてくださいね、いや、慣れなくても私は良いですけどね?」
「何それ怖っ。」
絶賛お着替え中。ちなみにお風呂はもっと恥ずかしい。
「よし、出来ましたよ。今日は第6師団の日ですよ。昨日より少し遠いですから早めに出ましょう」
「そうね。じゃあ行きましょ」
(あれ? 何かこっちの生活に慣れてきてない? これ着替えとかお風呂よりまずくない?)
「第6師団は遊撃部隊と言いましたが荒事を解決したり魔物の退治も行っていたりしますね」
「MAMONO?」
「はい、魔物」
「魔物いるの!?」
「もちろん」
「あ、そう」
(ホント何でもありなのね、この世界)
「おっ、来たな嬢ちゃん。俺の事はフレディで構わねぇ。さぁさぁこっち来てくれ。案内してやる」
こちらは第1師団隊舎と打って変わって雑多としている。団員が訓練している様子はなく、適当な場所で寝ていたりバカ騒ぎしているのだが、よく見ると置かれている道具はどれも使い古されている。
「おらぁお前ら! 勇者様のお通りだぜぇ!!」
「おぉ!この娘が勇者か!!」
「中々べっぴんじゃねえか!」
「愛してるぜぇ-!」
(このノリ何なのよ。すごい恥ずかしいんだけど)
すると前からこの場には似つかない女性が歩いてくる。
「こんな時間から騒がしいですよ、団長」
「よぉジェニー! 遅かったな!」
「あなたがいつも書類仕事をほったらかすからですよ。で?どうしたんですか? ってまさか、その方……」
「?? あぁそうそうこいつな、勇者」
「もっと丁重に扱ってくだっ…もういいや。申し遅れました。私第6師団副団長ジェニファーリードと申します。以後お見知りおきを」
「え、ええ、よろしくジェニー。私ミアホワイト。ミアで良いわ」
(うわぁーこの人の人生大変なんだろうなぁ)
「ちょうどジェニーも来たことだし、団長室にでも向かうか。俺もあそこはよく分かってないんだよ」
「あなた団長なんじゃないの?」
団長室は綺麗に整頓されていて確かにフレデリックが普段いるようには見えない。だがこの部屋にあるとは思っていなかった物がある。
「あそこに飾ってある短剣って団長だけに渡されるやつじゃないの? ホーナスは携帯してたけど…」
「あぁ、じいさんからもらったんだけどな、手に馴染まねぇから使ってねぇんだよ。俺の相棒はコッチ」
そう言って背中から2本の短剣を取り出した。2本とも形も長さも違うがちゃんと手入れされている。
「こいつとは長い付き合いでな。他のじゃどうしても慣れないんだよ」
「ずっと使ってきてるんだねって…そういえば前に家を建ててたとか言ってたわね。大工とかやってたの?」
「いや、大工って訳じゃ無いんだがな、たまに仲間と小屋を建てることがあってよ。そんとき俺が建てるやつがすぐ崩れたって話。それをホーナスに話したことがあったんだけどまさか覚えてるとは思わなかったわ」
(この2人って意外と仲が良いのかも)
「案内はこんなもんだな。何かあったらまた今度な。ほんじゃまた!」
「またいらしてください、ミア。待っています」
「ありがとうジェニー!フレディさんも」
「それでは行きましょうかミア様」
「団長なだけあって2人ともホント強そうね。フレディさんは2mはあるのかな?」
「そうですね。私なんて終始ちょっとびびってましたよ」
「そういえば今日あんま喋らなかったね」
「確かに面白いお方ですね、彼女は。最初はあれ程『何が勇者だぁぁ』なんて言ってた団長が態度を変えちゃうのも納得です」
「そんなキモい言い方してねぇよ! だがまぁ、俺も割と殺気だしてはずなのにな。まったく物怖じしねぇっていうのは確かに面白れぇ。後べっぴんさんだしな」
「ふぅーーん。そうですか」
「???……何だよ。何見てんだよおい」
「何でもありません」