異常識
コカトリスはもう知ってるテイで良いよね……ね……
朝、ドラゴ村の外れ。
ここで車中泊をした3人はバイロンから貰っていた水とフレディが狩ってきたコカトリスの丸焼きを朝食にしていた。
「……なんでこんな化け物が美味しいのよ」
「俺は見た目通りの美味さだと思うんだけどな。ちょうど岩塩も見つかったし良かったな」
「じゃがこんな生活を何日も続けるのは流石にいやじゃよ。ヤマトを仲間に引き入れるならさっさとしてくれ」
「ハイハイ分かったよ。次は俺がやるからな」
「わかったわよ! やってみなさい」
ほのぼのと雑談をしているとヤマトが走ってやってきた。
「さっそくやってきたな!」
「すいませんみなさん! お話があって」
「お話って? 何かあったの?」
「何かあったのか?」
ミアに割り込むようにフレディは話を聞こうとする。
「あの……村のみんなが変になっちゃったんです! みんな僕が毒されたって言って村長のところに集まってどこかにおかしいところはないかって……おかしいのはみんなだよ……」
走ってきたこともあり、ヤマトはひどく汗をかいている。
「そうか……だったらいっぺん殴ったら戻るんじゃねぇか?」
「「却下」」
ミアとロブが一斉に止める。
「俺のが強いってことを分からせれば自分たちがおかしいってわかるだろ」
「村人は一度も強いなんて言っておらん。身体能力が高いと言っただけじゃ」
「それに、例え私たちの方が身体能力が高いって証明したとしても変わらない。差別ってそんなもんよ」
「そうか? 俺にはよく分かんないけどよ」
「分からないなら分からないままの方が良いのかもね……」
「何だか知ったふうな口ぶりだな」
「良いのよ、こっちの話」
「ふーん……別に良いけどよ」
フレディは詮索する意思はないことを示して話を進める。
「で? ならどうするんだ? 差別しないでくださいってお願いするか?」
「……そうね……正直どうしたら良いか分からない。その前に私たちに出来ることって……ごめんねヤマト君ちょっと時間がかかるかも」
「……」
沈黙を続けるヤマトの方を見るとこちらの話も聞かず、村を見つめていた。
「どうかしたの?」
「……村が騒がしくないですか?」
「?? そう? フレディは聞こえる?」
「確かに……音っていうより気配に近い騒がしさだ」
「そうなの?」
「はい。そんな感じです……でも何が……まさか魔物が来た!? ちょ、ちょっと様子見てきます!」
そう言ってヤマトは村の方へ走っていった。
「ちょっと、フレディも見てきてよ」
「俺だけかよ。嬢ちゃんも行くぞ」
「えー、おじいさんちょっといってきま~す」
「もし魔物がいたら少しは持って帰ってくるんじゃよ」
「「はーい」」
2人も小走りで村へ向かう。
ドラゴ村にて。
村はヤマトの予想通り魔物が現れ村中を老若男女が走り回っている。
そこでヤマトは適当に見繕った村人に状況を聞こうとする。
「また魔物が出たんですか!?」
「ヤマト君! どこに行ってたんだ! いや今はそんなことはいいか。そうなんだ。とにかく子供達の避難が先決だ! 手伝ってくれ!」
「はい!」
子供を探しながら会話を続ける。
「今日はどんな魔物が来たんですか?」
「今回はコカトリスがいる……」
「そんな……どんどん強い魔物が来てる……」
「やはり龍神様がいなくなってしまったからだ……俺たちの何がいけなかったんだ……」
「……今はこの場を切り抜けることだけを考えましょう」
「……そうだな」
信仰というものを理解出来ない日本出身のヤマトにとってはかえって冷静に状況を把握することができ、むしろこの村に魔物がやってくる理由、そしてドラゴンの像が消えた理由の方が気になる。
(魔物とドラゴンの像には何か関連があるのか? 魔法がある世界だからな……もしかしたらあるのかも知れない。なら像が戻ってこない限りずっとこの村に魔物が襲いかかってくるんじゃない!?)
「像はどこだ~!!」
子供達を探すのを忘れてどこかへいってしまった。
「お、おい! 君が龍神様は気にするなって言ったじゃないか~!」
「……あれ?」
気づけばヤマトがいるのは村の外れ。ただミア達がいた方ではなく兵士達がいる方、ついでにコカトリスが3体いる方。
「なんだ君は!? 邪魔だから下がっていてくれ!」
「あ、すいません! でも……」
戦況は相当悪い。コカトリスは3m近い巨体と蛇のような尻尾を活かして暴れ回る。兵士達も近づくこともできず、持っている剣や槍はただコカトリスがいる場所を指し示しているだけである。
「はいちょっとフレデリックジョーが通りまーす」
おちゃらけたような歩き方のフレディとちょっと申し訳なさそうなミアが最前線を横切る。
「何だ貴様は!?」
「昨日の人間族か!?」
いきなり現れた2人に兵士達は驚くがフレディには興味はない。それよりヤマトを見つけて興奮しており、駆け寄っていった。
「ヤマト! やっぱりお前もここに来てたんだな!」
「いえ、あの僕は間違えてここに来ちゃって……」
「じゃあ来たってことで、さぁどいつにする?」
肩を組みながらそう聞く。
「どいつって? どのことです?」
「やだな~もう気づいてんだろ? 右? 真ん中? 左? どのコカトリスを相手にすんだ?」
「やっぱりですか!?」
「そうだ。あ、嬢ちゃんもだぞ?」
(ギク……)
「私もですか……」
「そうだ。どれにする?」
「じゃあ左で……」
「ミアさんはこっち側じゃないんですか!?」
「やつは絶対に戦わせる。早く右のを選びなさい。あれが2番目に小さいわよ」
「2番目って……左が1番小さいじゃないですか!」
「よし! 2人とも決まったな?」
「まだ決まってません!」
「もう決まったわ……」
「まだです! 僕が左……??」
フレディはミアとヤマトの首を掴む。
「着地は任せたぞ!」
2人を遠くに投げ飛ばした。
「ぎゃあぁぁぁ!!」
「……」
そしてフレディはコカトリスの方へ向かい、右と左の2体をそれぞれ2人の方へ蹴っ飛ばした。
倒れた2人の元にコカトリスがやってくる。
(ざっと3mはあるぞこの鳥……僕人以外と戦ったことないのに……)
(……また……どうせまた勝てちゃうんだろうなぁ……)
ヤマトは構え、ミアはバイロンから貰った細めのリレーのバトンのような新兵器を手に持った。




