大和
おかげさまでepisode2の節目で1000PV突破です!
投稿開始から2ヶ月ちょいくらい経ちましたがとても体感はとっても速かったですね。
趣味がここまで偉大だとは……
獣人領ソロン帝国検問所近く。
「あのー……どうやって入るんですか?」
「……考えるしか無いじゃろ」
「いや無理でしょ!」
検問所に並ぶ人は獣人族、検問しているのは獣人族、入れるのも獣人族。そして獣人族は全身から毛が生えている。人間族と獣人族ではあまりに見た目の違うため、人喰領の時に使ったなりすまし作戦は使えない。
「ここまで来て門前払いって……あれ!? なんか獣人族の人たちコッチ来てません!?」
自動車を不審に思ったのか数人の武装したガルームがミア達の元へやってくる。
「……戦闘か!!」
「違うわ!」
さっきまで爆睡していたフレディも起き上がるがミアはハンドルを切り、獣人族から逃げる。
「いきなり何なのよー!!!!」
「やっと逃げ切れた……あいつら車と同じくらいの速さで走ってきたわよ……」
「獣人族は他種族よりも身体能力が優れているんじゃ。その分他種族への差別意識も強いようじゃが」
「先言ってよ! あのまんま検問所行ってたらどうなってたの!?」
「さぁ? 捕まるとかかの?」
「1回逮捕されてないと気が済まないんですか!?」
「すまんすまん」
「はぁ……」
ロブの無鉄砲さに辟易してため息をついていると、フレディが何かを見つけたようだ。
「なぁ、あれ村じゃねぇか?」
フレディの視線の先にはさほど発展していない木の低い柵で囲まれた村がある。
「ホントだ……検問の外にも人が住んでいるのね」
「獣人領は全土を一つの国が治めているからの、手が回らない場所もあるんじゃろ」
「へぇ……何ですかおじいさん。その顔は」
ロブは余裕を表したような顔をしている。
「いやな、ここなら捕まらんじゃろ?」
「ホントに行くんですか!?」
「とりあえず獣人族に会わないと何も始まらねぇだろ」
「えぇー……私ここに来た目的も知らされてないのに……」
「大丈夫。それは俺も一緒だ」
「もうちょっと疑いなさいよ!……私は何があっても知りませんよ……」
その村に更に近づく。
村人獣人族side。
「ねぇ、ママあれ」
少年が最初に自動車に気づく。
「何? どれのこと?……何よあれ!?」
母親は少年を抱え上げ、反対方向へ逃げる。
「誰か! 衛兵さんを呼んできてください!」
「ならわしが! 痛ぁ! 腰が……あ! 良いところに! ヤマト君! ちょっとわしの代わりに衛兵のところまで走ってきてくれないか?」
「衛兵ってどうしたんですか?」
ヤマトというこの大陸の名前とは思えない犬の青年は人々が逃げる方向と逆を見る。
「何があってこんなに……あれって……」
「そうだそれだ! それがこっちに来てるから皆逃げてるんだ!」
「ちょっと待っててください」
ヤマトがミア達が乗る自動車の方に歩いて行く。
「ヤマト君そっちに行ってどうするんだ!?」
「誰か一人コッチに来てますよ! ヤバい絶対強い人ですよ!」
ミアside。ミアはハンドルを切ってUターンしようとする。
「ちょっと待ってください! 僕は敵じゃありません!」
「ミア。ちょっと止めてくれ」
「イヤです!」
「彼はこの自動車に人がいることが分かっているじゃろ? 何かあるに違いない」
「そういえばそうね……」
ミアは車を止める。しかし。
「ならもっとヤバいじゃない! 絶対イヤ!」
またアクセルを踏む。
「いいじゃねぇか! 会ってみようぜ!」
今度はフレディがミアの足を持ち上げてアクセルペダルから離させる。
「ダメダメダメダメ! お願い離してー!!」
そうこうしているうちにヤマトはミア達のすぐそこまで来た。
「僕は敵なんかじゃありません。だた一つ聞きたいことがあるんです」
「中々好意的じゃないか。これなら大丈夫じゃ」
「嘘な気しかしない……」
「とにかく一度降りて話を聞いてみよう」
そしてロブとフレディ、ミアは無理矢理に車から降ろしてヤマト話を始める。
「聞きたいこととは何じゃ?」
「他種族は初めて会うな……すいません! まだ獣人族以外とは会ったこと無くて……」
「こいつらも初めて獣人族と会うんじゃよ。気にすることでもないぞ。で? 聞きたいこととは?」
「あ、そうでしたね。僕の聞きたいことっていうのは、この車を作った人は誰ですか?」
「あぁこれか。これはわしらの友人から譲り受けたものじゃからな。だからわしらも知らんのじゃよ」
ロブは少し嘘を交えて伝える。
「そうですか……」
「何かこれに気になることでもあったのか?」
「いえ、実は僕はこれと似たようなものを知っているんです」
「え!? ホント!?」
この発言に同じくこの自動車を見る前からよく知っていたミアが驚いた。
「どこで見たの!? というか名前は!? 本名は!?」
ミアはヤマトの両肩を掴んで問い詰める。
「え? あのー、ちょっと近いです……」
ヤマトは顔を真っ赤にしながらミアから離れた。
「あ、ごめんなさい! でも車をどこで見たことあるか聞いてもいい?」
「あ、えっと、これは前にいた世界、転生する前の世界で見たことあるんです」
「「転生!?」」
フレディと、特にロブが驚く。
「転生とはどういうことじゃ!? 何!? あ、まず名前じゃ! 名前からじゃ!」
「な、まえはヤマトって言います」
「ヤマト!?」
「そこ驚くところか!?」
次はミアが驚く。
(ヤマトって大和でしょ!? 絶対出身日本じゃない!)
ロブが質問を続ける。
「いつこの世界に来た!?」
「この世界には2年前に、前の世界で死んで気づいたら山奥にこの身体で寝転がっていました」
「年は?」
「前の世界からの合算で19になります」
「そうかそうか……もう一つ、ヤマトは強いか?」
「こっちの世界じゃ戦ったことないからわからないですけど……僕は弱いです」
「……そうか……」
ロブは少ししょんぼりして車に乗り込もうとする。
「ちょっと待って! もうちょっとここにいない?」
それをミアが止める。
「何じゃ最初はミアが嫌がったのに」
「いや! でもほら! 自分が弱いって言ってるだけでまだ分からないじゃない! まだ『この世界で戦ったことはない』ってだけだし! それにこんなこと言うくらいなら前の世界では多分戦ってたんですよ! ね?」
ヤマトの方を向く。
「え、えっと確かに前の世界では格闘技をやっていました。でも……」
「だよね!」
ヤマトの続きを遮るようにミアが大きな相づちをうった。
「ね? どうです? おじいさん! ヤマト君の強さを見てからでも遅くないと思うんですよ!」
「まぁ……そこまで言うなら見てみるのもやぶさかではないが……」
「じゃあ決まりね! よろしく! ヤマト君!」
「あ、えっと、はい……」
ミア達はこの村に一時とどまることが決まった。
一方ヤマトは言いたかった一言を唇に塞ぎ込んでいた。




