epilogue1
ティモア帝国とハルドの中庭決戦は結局互いに死者0で終結。一月後には歴史上初の他種族間の同盟が誕生することになる。歴史上ではあるが。
決戦から数日後、ティモア帝国王城内ミアのゲストルーム。
「やっぱりバイロンさんって凄い人なんだね」
「当たり前よ。なんたって私が師匠に選んだんだから!」
部屋では女子2人が『ハイテク』という時代も何も合わないテーマで会話に花を咲かせていた。
「私だって機械いじりはしてきたんだけど、やっぱり魔法ありきでやってきてたのよ。私が師匠の自動車を参考にして作った二輪車も結局は魔法で動いてる。でも師匠の作ったものは違う。あれは魔法ナシで動いてるの。師匠は魔法を使ってるものもあるみたいだけど必ずしも魔法を前提としていないっていう点で私とは全く違くてさ……ちょっと格が違うのよ。でもその点だけよ! 他はどうかしらね~?」
「そうね、あの人確かに凄いんだけどぶっ飛んだ性格だからね……前の戦いも戦わないのに話するためだけに敵の目の前まで行っちゃうってね、一番狙われる人なのに」
「しかもギフテッドが3人もいるところ。ホント笑っちゃうわよ」
「?? ギフテッドって?」
「ミアって意外と何も知らないのよね」
「しょうがないでしょ! しょ、召喚されただけなんだもん」
(危な……地球のこと言うところだった……)
「そういうことにしといてあげる。フレディもちゃんと教えときなさいよね! なら、私が教えてあげる」
「お願いします!」
「ギフテッドって言うのは基礎魔法や……って基礎魔法は分かる?」
「名前は聞いたことないけど皆が普段使うような魔法ってこと?」
「まぁそれでいいわ。で、ギフテッドはその基礎魔法やら古代魔法っていう魔法の始祖から授けられたって言い伝えの『チカラ』の一つよ。基礎魔法ってのは普通才能の違いはあっても皆使えるものよ」
「へぇ、じゃあ基礎魔法っていうのは誰でも使えるってこと?」
「それがそういうわけでもなくてね、基本的に人には魔力宿ってないの。筆と紙があってもインクがなかったら字は書けないでしょ? それと同じで魔法を使える能力は誰でも持ってるけど肝心な魔力は遺伝かごくまれに突然変異によって宿るものだから、魔法を使える人は限られてくるの。フレディみたいに魔力はたくさんあるけど魔法は全然出来ないっていう例外はいるのだけど」
「?? でもどうやって魔力を持ってない人にも魔法を使うことが出来るって分かったの?」
「……そうね。それくらい常識だと思ってたけどよく考えてみたらおかしいわね……まぁ、昔の偉大な学者さんが発見したのよ、多分! 説明続けて良いかしら!?」
「あ、はい」
リリーはごまかすように続けた。
「その基礎魔法って言われるものに対して正式名称を『限定特殊能力魔法』、ちょっと長いから通称能力って呼ばれているもので、これこそ完全に突然変異で生まれてくるようなもので一部の人しか使えないしその能力は人によって違うの」
「人によって違うなんてまたややこしいわねぇ……」
「持っている人はほとんどいないからそんなに気にならないはずよ」
「でももう3人と会っちゃってるのよね。3人の能力は風になる能力、足が速くなる能力、あと黒いドロドロに何でも飲み込んじゃう能力で合ってる?」
「合ってるわ。ピートの能力はちょっと微妙だけどあの速さならギフテッドなら間違いないはずよ。あと最後は古代魔法だけどこれは1人見てるはずよね」
「ランディフレイジャーね」
ミアの表情が曇る。
「えぇ、あの野郎の『マリオネット』がまさにそう。あれはいわば後天的にギフテッドを手に入れる裏ワザみたいなものよ。この世界のどこかに隠されているっていう『古代魔法の書』に触れる事で手に入れられるらしい」
「それじゃあ誰にでもギフトを手に入れられる可能性があるんだ……怖っ」
「大丈夫よミアなら。それに勇者なんだからまだ発現してないだけでギフテッドかもよ」
「なんかありそうで……イヤね」
「なんでイヤなのよ! 戦士は誰もが欲しがるものなのに。やっぱりミアはヘンだわ」
「いらないわよそんなの、また戦わされるし……そういえばあの王国兵の団長とかはギフテッドだったりするの?」
「ホーナスは持ってるわよ」
「え!? ホーナスが持ってるの!?」
ミアはリリーに顔を至近距離まで近づけた。
「え、えぇそうよ。凄い食いつきね」
「あ、ごめん。で……ホーナスのギフトって、何なの?」
「私もよく知らないのよ。ただ味方が近くにいると使えないとか言ってたから結構ヤバいギフトなのは間違いないわ」
「そっか。でもやっぱり強いんだ」
「あいつはフレディと肩を並べるくらい強いからね。それで言うとフレディも持っていてもおかしくないんだけど、かたくなに持ってないって言うのよね」
「でも隠したいこともあるんじゃない? あんまり詮索はしちゃ良くないよ。それに本当に持ってないかもしれないし」
「そうね……でも絶対持ってるはずなのよねぇ……」
フレディギフト持ってるか持ってないか論争はこのあと意外と長く続いた。
バイロン研究ルーム。
扉には『新しい食感創作中』の看板。
部屋の中にはロブ、フレディ、そして研究中のバイロンとマルコ。
「ここに俺がいる必要あるか?」
「フレディにも関わる話じゃ、そこで座っておれ」
「で? 俺もここまで借りを作ってしまったからな。何がお望みだ? と、言いたいところだが」
「ところだが、何じゃ?」
「じいさんよ、少し隠し事が多過ぎはしないか? 中庭での戦い、あんただけ戦わなかっただろ? 巨大ロボットの時もそうだ。それに見た目じじいの癖して年齢不詳とは、そういうのは若作りしてからではないか?」
ロブはしばし考える。
「……少し掻い摘まむぞ」
「いいから話せ。それから考える」
「……わしが戦う姿はできる限り見せてはならない。わしはどうせ監視されておるからな」
「監視とは……俺にもその監視の目は確認できていないのだがそれは信じて良いのだな?」
「あぁ、それは構わん。それと監視されている理由は説明せんぞ」
「まぁいい。続けろ」
「そしてわしの年齢だが……今年で526になるだろうか」
「「526!?」」
バイロンとフレディがその馬鹿げた数字に驚く。
「じいさんなのはよ~く知っていたが、それではちょっとした巨木ではないか……それも真実でいいのか?」
「間違いないとは言い切れん。わしもこれだけ生きていれば忘れる。何年か数え忘れたかもしれんの」
「とんだクソじじいだってことで十分だ……分かった。今はこれで許してやるから望みを話してみろ。ただいずれは全て聞かせろよ?」
「あぁ分かっておる……わしの望みはな、『神を殺すこと』」
バイロンは困り果てる。
「……また馬鹿げた……今日は浮世離れした話ばかりだな……俺はその神を殺せば良いのか?」
「いや、そこまでは言っておらん。ただ手を貸してくれというだけじゃ。あとフレディ! この神がお主が望む『最強』じゃ。わしの526年ぽっち生きた人生で知る限り、じゃがな」
「ほぉ……詳しく聞かせろよ」




