お堅い奴
翌日。
(……1泊してしまった。この感じだと夢じゃ無いのか……延泊料金っていくらだろう。てかここも宿泊料とらないよね!?)
「おはようございます。ミア様」
「あーおはようサリー」
ミアは誰とでもすぐに打ち解けられるようでもうメイドにはファーストネームで呼ばれている。ちなみにダブル団長が去った後、2人を連れてきた執事がまたやってきて事務的な連絡をしにきたのだが、ちょっと話してるうちに仲良くなってました。それはもう一瞬で。
「今日は朝から第1師団隊舎に行く予定となっておりますのでササッと準備しちゃいましょう!」
「また着替えとかさせられるの!? 自分で出来るって! お願い!」
高貴なお方というのは身の回りのことを全て使用人に任せるものらしい。ミアもその高貴なお方の1人になってしまったため例に漏れず着替えなども使用人にやってもらうことになっている。
「そうはいきませんよぉ。おりゃ!」
いやぁぁーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
「あ゛あ゛ーー生き地獄だわ」
「そんな下品な声はお止めくださいね。さぁ!行きましょう!」
なんだかちょっと嬉しそうなサリーに連れられて第1師団隊舎に向かう。
「普通、隊舎は城の外に設けられているものなのですが、一団隊舎だけは任務が陛下の護衛ですので城内に設置されているのです。今日と明日は軽く挨拶するだけということになっていますので、気軽に行きましょう。」
「挨拶なら昨日したじゃない。今更なんかすることあるの?」
「一応これから隊舎には何度も通うことになるので、隊舎内の案内やその場に慣れていただくというのが主になりますね」
「へぇー。メンドくさいのね」
「まぁまぁそう言わずに。」
「着きましたよ。ここが第1師団隊舎です」
「よく来てくれた。改めて名乗らせてもらう。ホーナスヘンドリクスだ。ホーナスで構わない。よろしく頼む。それでは着いてきてくれ。案内する」
ジャンセン王国軍第1師団団長ホーナス・ヘンドリクス
背丈は190cmはあるだろうか、金色の長髪に碧い目や筋の通った鼻、そして何より顔立ちが端正すぎる。更に王国軍の団長を務めるほどの強さまで兼ね備えた完璧超人である。
中に入り少し進むと開けた広場があり、そこでは数十人の屈強な男達が木刀を持ち各々訓練に励んでいる。
(そういえばこの世界来てから初めての外か。どっかよじ登れそうな壁あるかな? 逃げられそうなら逃げちゃお)
そんなことを考えながら周囲を見渡しているとホーナスに気づかれる。
「?? 何かあったかミアホワイト」
「い、いえ、何でもない。さ、行きましょ。まさかこれで案内終了ってわけでもないでしょ?」
(危な……)
「? あぁ、そうだな。まだ案内しなくてはならないところがたくさんある。だがその前に、うちの奴らを紹介させてくれ。 なぁ、皆集まってくれ、先日召喚された勇者が来てくれた。これから長い付き合いになるだろうから挨拶でもしてくれないか」
屈強な男達が走ってやってきて綺麗に整列する。
「はっ。私ジャンセン王国軍第1師団副団長アレクサンダーウェンドルと申します。この日まで一同お目にかかれる日を心待ちにしておりました。全員、敬礼!」
ビタァ
「………凄いわね」
(やっぱり教祖になった気がする)
「お褒めに預かり光栄だ。私も誇らしい」
「別に褒めた訳じゃ無いんだけども……まぁ、とにかく凄い。うん」
(なんかリズム合わないのよねぇ)
「そうか……」
この後はちょっとテンション低めで隊舎内を案内された。ここはとにかく小綺麗であの男達が生活してるとは思えないくらい隅々まで清掃されている。ホーナスが言うには作戦会議でたまに国王も訪れることもある為だと。そのせいか特にツッコミどころも無く予定より少し早く終わってしまった。
「案内はこんなところだ。もし分からない事や気になった事があればいつでも行ってくれ」
「いや、特に無いと言いたいんだけど…このシンプルさはあなたの趣味だとしてもこの腰に差してある剣は大分派手ね」
ホーナスの剣は白と金を基調として柄の中心には宝石が埋め込まれている。
「これは団長のみに支給される武器だ。第1師団であればこのロングソードが渡される。安心してくれ、アダマンタイトでできているから実用性は高い」
「へぇ、そっか」
(あだまんたいと? まぁいいか、要は硬いってことよね)
「今日はありがと」
「またすぐ来ることとなるだろう。楽しみにしている」
「それでは行きましょうミア様。失礼しました」
「団長今日張り切ってましたね」
「??……そう見えたか?」
「ええ、まぁ勇者様も中々の美人さんでしたからね。惚れちゃいました?」
「冗談はやめてくれアレックス……だが、そう見えたっていうのなら本当にそうなのかもな」
「あのホーナスヘンドリクス様がですか、でも俺もそうかもしれません。今後が楽しみですね」
「あぁ」