怪しい水
今日は特に理由も無いですが2話投稿です!(理由があれば良かった……)
良ければ36話の方も!
中心都市東側リリーandピートside。
「いいなお前! やっぱり速えぇじゃねぇか! こんなんならもっと速く会ってればよかったぜ!」
「……」
(何よこいつ…なんで脚力だけで私に追いつけるのよ)
2人は都市の中央通りを駆け抜ける。リリーのバイクは燃料を自身の魔力としていることも相まって速度は200km/hほどは出ている。のにもかかわらずリリーに追いついているピートも同程度の速度を持っていることになる。
「だったら…」
リリーはバイクを走らせながらピートに向かって水弾を放ち始めた。
「ハッハッハ! いいねぇ! ならこっちからも!」
今度はピートがリリーに跳び蹴りを仕掛ける。それに対してリリーは自らの前に氷の膜を張って受け止める。しかしそれではピートは止まらず、氷を突き破って来た。
「なら……」
リリーのバイクはほぼ直角にカーブして路地に入りながら跳び蹴りを避けた。
「危なかった…とにかくフレディのところに戻らないと」
「まだまだぁ!」
ピートは路地横の建物の屋根をつたってリリーに追いつき、上から降って来た。
「何よあんた!? まだ追いかけてくるの!?」
「当たり前だ! だがそのスピードでそんな小回りができるとは思わなかったぜ! お陰で遠回りしちまった!」
「ホントにめんどくさいわねあんた……路地ならなんとか巻けるかなぁ……」
今度はリリーから霧が大量に発生し、たちまち辺りは真っ白になった。
「何!? おいどこだ!」
霧が無いところまで駆け抜けるとリリーは消えていた。
「はぁ……なんとか巻けたかなぁ。あいつは馬鹿正直に真っ直ぐ突っ走ったんだろうね。さ、さっさとフレディの方に行かないと……」
南側バイロンandエアロウside。
「ふむ…やはりアレに触れてはまずいか……」
バイロンが注意を向けているのは宙に浮いているモヤモヤの円盤のようなもの。先ほどからその円盤に触れたものは一刀両断されている。
「急に慎重になったじゃない。怖気付いたってことはないでしょう?」
「こちらも様子見ということだ。気に留める必要はないさ」
(声はあのモヤモヤから……ならあれが本体で間違いないか……ただ分かったとしても風なだけあって流石に速い……その上触れた物を切り裂くとは……ならば、まずは実験といくか!)
バイロンは左手の手袋を黄色から青色に切り替えた。青色の手袋からは水が噴射された。
「そんな水遊びじゃ私は倒せないわよ! おちょくってるの!?」
(水が当たった先から水飛沫になった……振動か! 後は……)
「そう見えてしまったなら詫びよう。だが、おちょくられたと思うなら攻撃でもしてみたらどうだ?」
「ムカつくあなた! いいわ! やってあげる!」
すると今度は右手を懐に突っ込み、白い手袋を右手に装着した。そして右手を前に突き出すと……何も起きない。しかしエアロウは警戒して攻撃を止めていた。
「……何よ。何かするんじゃないの!?」
「いや、もうしているぞ。しかしもう少ししないと分からないかな? おっと……」
バイロンは右肩を左手の薬指でポンっと叩く。すると黒いゴム質のジャケットはクリーム色のモコモコジャケットに変わった。
「また変な着替え……早くしてよ…って寒っ!」
実は白色の手袋からは冷気が漏れ出ていた。
「まさか寒いだけなんてわけじゃないでしょうねぇ……馬鹿にするのはいい加減にして!! 絶対殺す!! あれ?」
突如モヤモヤの円盤になったエアロウが重力に従うように地表に近づいていく。
「何よ! 何したの!?」
「さあ? 俺達はただ自然の摂理に従っているだけさ。おデブちゃん」
「何よ! 調子に乗って! 早く解きなさい!」
「それは俺にも無理さ。言っただろう? 自然の摂理だって」
そうこうしている内にエアロウは地面に突っ伏した。そのままモヤモヤも消え、ただの風になった。
「どういうことよ!? なんのからくりがあるのよ!!」
「そこまで気になるか……そうかそうか! 貴様も曲がりなりにも科学に興味が湧いているということだな!? ならば教えよう!」
「いや、そんな言うほど気になってないし、何? 『科学』? 聞けよ!」
「これはな! 『下降気流』という現象だ! 空気に限らずあらゆるものは気温によって重さが変わるのだ。今の貴様ならよぉ~く分かるだろう? さてクイズだ! 物質が重くなるのは気温が高いときか!? 低いときか!?」
エアロウは不機嫌な顔で答える。
「……低いときってこと?」
「正解だ! 自分の身体で実験できるなんて中々出来ることじゃないぞ! 良い経験をしたな! そして! 貴様は重くなった空気、それにちょうど水も撒いたから水蒸気によって空気の体重にしては相当な負荷がかかっている状態というわけだ! ここでもう一問! この後貴様はどうすれば良いか!?」
「……分かったわよ」
エアロウは風から姿を現わし、実体に戻った。
「本当に立ち上がれる……」
「どうだ? いつもより身体が軽く感じているのではないか?」
「うるさい! 元々軽いのよ!」
「そうか、悪かったな。だがしかし、その状態で戦えるのか?」
「なめないでよ。これでも普通に戦ったって今日一緒に来た雑兵共よりかは強いのよ」
「そうか、それはまた悪いことを言ったな。あぁ、後もう一つ科学のお勉強だ。水は電気をよく通すぞ」
「は?」
バイロンは素早く手袋を青色から黄色に取り替え、左手の親指で右肩をポンっと叩き、再び白衣を黒いゴムジャケットに変えた。
「スパーク!!」
今度は地面に向かって放つ。そして地面には撒かれた大量の水。電気はたちまち水をつたってエアロウに直撃する。
「いやあぁぁあぁ!!!!」
ダメージを受けたエアロウはとっさに空中に逃げる。
「馬鹿め……またもう一つお勉強だ。今度は科学ではない。数字のお勉強だ。お前の敵は何人だ?」
エアロウが気づいたときにはもうすでにマルコはすぐ背後にいる。
この日一番のエアロウの叫び声が中心都市に轟いた。




