三姉妹
ティモア帝国への帰路。
「もう少し多様性というものがないと対策されてしまうのに、勉強が足りないな奴らは!」
「まぁ、あんな化け物に対策が出来る人もそうそういないでしょうけどね……」
バイロン一行が乗る自動車の後ろにはジャンセン王国で戦った巨大タコロボットが5機、破壊されて横たわっていた。
「あれは多分ジャンセン王国に向かう予定だったんじゃろうな」
「ならチョット良いことしてしまったな!」
結局ジャンセン王国はバーンズ大公によって乗っ取られたのだが。
「まぁサンフランドからしてみればとんだ迷惑だろうけどな」
「フレディも迷惑とか考えるんだぁ…」
「失礼だな嬢ちゃんは!」
「そういえばフレディはサンフランドの出身じゃったな」
「そういやそうだな」
「えぇ!? ジャンセン王国じゃないの!?」
「ああ、俺が傭兵になって知らないうちにジャンセン王国に住み着いてた」
「知らないうちって……」
「そなたに家族はいないのか?」
「えーっと、弟が1人いるぞ」
「ほぉー、会いたいと思わないのか? であればサンフランドに寄ってから帰るのもやぶさかではないぞ」
「別にいいよ。どこに住んでるかも知らねぇし」
「故郷とかにいるわけじゃないんだ」
「まぁ。俺も弟も一度奴隷商に売られてんだよ」
「そうなの!?」
「なるほど、なら生きているかも怪しいのか……」
「いや、多分死んではいねぇだろ。相当臆病だけど変にずる賢いからな。なんだかんだどっかで仕事さぼりながら生きてるさ」
「そうか、ならそれを信じるとしよう!」
革命直後、ジャンセン王国王座の間。
「サンフランドが来なかった正直焦ったが王国軍の反発も来ないなら嬉しい誤算だよ。これでサンフランドの言いなりになる大義名分もなくなった。これでジャンセン王国は正真正銘私の物。『ジャンセン王国』という名前はもう似合わない。『ハルド』。これからは私のハルド王国だよ」
柄が鳥の羽に覆われた杖を突いている老人。バーンズ大公その人である。後ろには3人の女性が彼に向かって膝を突き頭を垂れている。
「まずは私の計画を最初に台無しにしたあのグルームを始末しよう。さぁ、仕事だよ、三姉妹達」
「「「ハッ…」」」
ジャンセン王国改めハルドは人間領として歴史上初めて他の領土へ侵攻することを決めた。
ティモア帝国城内。
「ただいまーー!!」
「「「「「…おかえりなさーい……」」」」」
バイロンの元気いっぱいの挨拶に臣下達は力なく返事した。
「最早可哀想ね……」
「わしはどんな条件出されても仕えんな」
「ボルト公国の方はどうなったか?」
「あー、そっちの方はもう手続き全部終わりましたよ……」
「流石俺の臣下達だな! ならば早急に工事を進めてくれ!」
「「「「「はぁーい……」」」」」
「工事って何するんだ?」
「そなたが気になるとは意外だな」
「フレディって家建てたことあるとか言ってたわよね」
「ほぉー、そのおつむで家が建つのか!」
「すぐ壊れたって言ってましたよ!」
「ハッハ! やはりそうだったか!」
「うるせぇ! で!? 何で工事すんだ!?」
「それはもちろんボルト公国の発展のためだ!」
「それは何の意味があるんじゃ? 属国は子分ではあるまいし」
「俺には人が必要なんだ! 素材の収集に栽培も人がいないと出来ないんだ! そこらでくたばるくらいなら俺が雇って研究の糧になってもらうのだ!」
「それなら奴隷でも良いのではないのか?」
「フッ。奴隷など買ったら俺の民に笑われてしまうさ!」
「何だかよく分かんねぇな」
「でも格好いいじゃない。私は好きよ、そういうの」
「またファンが1人増えてしまったな!」
「いやぁ、ファンってわけじゃないんだけどねぇ……」
食事を終え、一通りの質問攻めが終わった後、各自ゲストルームに案内されていった。
「今回は1人部屋ね…久しぶりに1人で落ち着けるわ……」
前回はフレディと同じ部屋だったことを考えれば大きな進歩である。
「男と同じ部屋で寝て全く何も感じなかったとは……流石はフレディね」
そこでふとホーナスのことを思い出す。
「ホーナス……何でいなかったのよ…そっか、私を探しに……いや! 流石にフレディの方を探しにか! でもここから逃げるにはホーナスの助けがないといけないのに……」
ミアはジャンセン王国に戻ったタイミングでホーナスに協力を仰いでロブとフレディからかくまってもらうつもりだった。その作戦はホーナスも同じようにミアを探しに消えたため大失敗に終わったのだが。
「しょうが無い! いきなり行って『助けてください』なんて虫が悪すぎるしね! でも、私も私のために生きるって決めたからね! こんな所まで来ちゃったんだから!」
ミアも自分のために生きる。セカンドライフを求めて。
「少しお話良いかしら?」
「誰!?」
振り返ると長身の女性が立っていた。
「そんな怖い顔しないでください。皺が出来ますよ?」
「……私に何の用?」
ミアは平然を装いながら目の前の女性に質問を投げかける。
「用だなんて大したことはありません。『少しお話』しに来たと言ったでしょう?」
「あぁっそう。じゃあその『お話』って何よ」
「もう少し雑談してからの方がよろしかったのですが……まずは名乗りましょうか、勇者ミア」
「……」
「私の名はエアロウ、と言っても偽名なんですけどね。ハルド三姉妹の一人です」
「ハルド三姉妹?」
「あら、ご存じないですか?ハルド。あなたも以前住んでいたジャンセン王国に革命を起こし新たに誕生した国家ですよ」
「ジャンセン王国が革命!? 何で!? 私たちが敵のロボット倒したのに!」
「私も後になって聞きましたよ。凄いですね、あんな化け物を倒してしまうなんて」
「みんなはどうなってるの!? リリーは!? カートさんは!? バリーさんは!?」
「団長達ですか、あの方達と団長代理のジェニファーリードはデレクジャンセンを連れてどこかへ消えていきましたよ。尻尾巻いて逃げるなんて。そのおかげで無血開城となりましたけどね」
「…そっか、良かった……」
「……あなたも大概馬鹿そうね。まぁいいわ。雑談も出来たところですし、本題に入りましょうか。ハルドはこの国ティモア帝国に宣戦布告をすることと致しました。皇帝様のところにも今頃私の姉妹がこのことを話しているでしょう。それでは、またお会いしましょう」
「それではって……待ちなさい! あ……」
しかしエアロウは風を吹き荒らしながら姿を消した。
バイロンの私室。
「宣戦布告とはな! 面白い! しかし大義名分とは一体何だ?」
「『他種族の存続を脅かす外敵の排除』よ! 実際そうでしょう? 人の肉を喰らうグルームを敵と見なすなんて自然で良いじゃない!」
「グルードにそのような論理もう通じない! 私が開発したこの人工肉があれば!」
「あーそういうの良いから! ぶっちゃけ大義名分なんてどうでもいいのよ! 要は『俺はお前に恥をかかされたから死ね』ってことよ!」
「ハッハッハ! 大方そんなモンだと思っていたさ! ハルドと言ったか!? やれるもんならやってみろ! 俺も臣下は強いぞぉ~!」
「それは楽しみだ! 俺の名前はピートだ! 殺すときは一瞬だから俺に殺される前にもういっぺん名前聞こうとかナシだかんな!」
「俺の前まで来られたら、な?」
「今が目の前じゃないってか??」
「あぁ貴様の前には大きな大きな壁が隔たり立っているさ」
「あぁ…そうだな……」
そう言ってバイロンの斜め後ろにいるマルコを見やる。
「まぁ良いさ! ケライノ! 帰るぞ!」
「ほぉ、ここから帰れると。マルコ! やれ!」
「かしこまりました」
「じゃあな!」
するとピートの下から黒い液体のようなものが噴き出し、ピートを包み、そのまま姿を消した。
「ほぉ」
マルコは懐からナイフを取り出し自分の腹に突き刺そうとした。
「構わん! お前に出来ない事だ。俺の指示が悪かったんだ。しかしハルドね……歴史上初ではないか? 他種族の国家での戦争は。これはまた歴史に名を残してしまうな! ハッハッハ!」
「……」
「ほらマルコ笑え!」
「……」
「これでも無理か。お前に出来ない事はここにもあるんだな……」
「……」




