今までとこれから
これから少しジャンセン王国側のお話が続きます!
ジャンセン王国第1師団隊舎会議室。
第1師団隊舎はランディ・フレイジャーの一件で大分汚れていたが、第2師団の協力で元通りキレイにされている。
会議室には国王デレクジャンセン、カート、リリー、バリー、ジェニーの5人。
「…それで、何の用だ」
デレクジャンセンは口を開く。
「今回の戦いでフレディとミアが俺たちの味方としてやってきました」
カートはこう答える。
「本当か! 今どこにいる?」
「今はもういません。またどこかへ消えていきました」
「何なんだ!? ならばなぜこのタイミングで帰ってきたのだ!」
「わかりません。ただ、フレディとミアが何人か人を引き連れていまして、その中に人喰族を名乗る男がいまして……」
「人喰族だと!?」
「はい。その男いわく、『食事をしに来た』と」
「食事!? まさか!」
「いえ、ハンバーグを食べていました。ちゃんと人の肉じゃないものを」
「本当に何なんだ…」
「もう良いでしょう。フレディ、いや、フレデリックジョーは指名手配にしましょう」
「ならん!! まだだ……」
「陛下の想いは……よく分かっているんです! フレディを特に気にかけていたのは!」
「お前の想いは!! どうなんだ!!」
「しかし! 貴族連中にフレディがやってきたことが知れ渡るのは時間の問題です! そうなれば今度は陛下の身が危ないんです! フレイジャーにフレディ、陛下が重用した者の反乱が立て続けに起きているんです!」
「私の身一つくらい構わん!」
「陛下の身は陛下だけの物ではないのです! 頼むから! もう……」
「すまない。しかし諦めてはフレディの帰る場所はどこにあるのだろうか」
「もうこの国にはないんですよ……」
そしてカートは席を立ち外へ出る扉へ向かう。
「おいカート! まだ議題は終わってないぞ!」
バリーは止めようとするがカートは見向きもせず部屋をでていった。
「カート団長には後で内容を伝えておきます」
「ありがとね、ジェニー。ホントあのバカ……」
「ならばとりあえず話を進めよう。やはり敵兵はサンフランドか?」
これにはリリーが答える。
「えぇ、そうでした。これでバーンズ大公の裏切りが決定的になります」
「……そうか」
「戦いは皆に任せておけばなんとかなるが、私の方か、問題は」
「もうフレディもホーナスもいないんです。戦も今まで通りにはいかないんです」
「そちらも……してやられたと言うべきか…」
「仕方ありません。それよりも私たちに出来ることだけを話しましょう」
「そうだな。『ないものはない』か。両面で皆が出来ることを確認と共有をしておこう」
「「「はい」」」
こうして数十分話し合いを続け、会議は終了した。
国王とその従者が部屋を出て、残ったのはリリー、バリー、ジェニー。
「なぁ、2人とも。この後、どうするつもりだ?」
「何? 誘ってるの? 鏡見たことある?」
「そっち話じゃないわ!」
「あー、あっちね」
「?? この後ってどういう意味ですか?」
「これから始まるサンフランドとの戦争に負けた後だ」
「負けるんですか!?」
「あぁ。戦も政も勝てん。だから人生やり直すならこのタイミングだぞって話だ」
「えぇぇ…そんなこと考えたこともなかった……」
「まだ若いからな」
「気づけた私は若くないってこと?」
「いや! そんなこともないぞ!」
「まぁいいけど。じゃあアンタから教えなさいよ」
「そうだな、わしは陛下について行こうと思う」
「一緒に死ぬってわけ?」
「いいや、陛下を連れてここから逃げるさ。そして後は陛下の好きなように」
「へぇ、戦争の後も生きてたらここで雇ってもらえばいいじゃない。アンタならしれっと団長的なのもやらせてもらえるんじゃない? 意外と棘ないし」
「ホーナスがいなくなって護衛を本格的に任されるようになって陛下の側にいる時間が増えてな。それで改めて気づいた。この方は本当に素晴らしい御方だと。この期に及んでまだフレディを信じているくらいだ。ただ国王にしては致命的なほど優しすぎる。そして殺すには惜しいほど優しい。あのような御方がいつかこの世の中に必要になると、わしはそう信じているのだ」
「あっそ。なら勝手にしなさい」
「そうか…ならリリーはどうするんだ?」
「私もこの国を離れてみようと思う」
「ほぅ。それはどうしてだ?」
「アンタらは見てないと思うけど人喰族の男の内の一人がね、相当頭がきれるのかあの鉄の怪物の構造を一瞬で理解して、しかも倒した後はそれを使って新しい装置まで作っちゃったの。同じ機械を扱う身でありながら私が目指していたものすら遠く及ばないと思っちゃったの。だからね、人喰領に行ってこようと思う」
「人喰領だと!? 危険すぎる!」
「大丈夫。人間としてのスペックは大して変わらないみたいだから。いざとなったら全力で逃げるわ」
「そうか……危なくなったら必ず逃げるのだぞ」
「うっさいわね! 私はアンタの子供か!」
「すまんすまん! リリーなら行けるはずだ」
「当たり前よ。それで? ジェニーは? 何か決まった?」
「私は……団長に会ってみようと思います」
「…………そう……」
「フレディか。ジェニーはこの前の戦いで会っているのか?」
「はい」
「そうか…それで、会ってどうするんだ?」
「まだ、決まってません。でも、会っていきなり消えた理由を聞かないと。この前聞きそびれてしまったんです」
「それはもう何するか決まっているぞ?」
「え? あ! そうでしたね」
「じゃあ皆この国を離れるんだな? カートにも聞いておかないとな」
「聞いてどうするんですか?」
「いやな、逃げるとき戦力はある程度はあった方が良いからな」
「あぁ…私たちも目立つ逃げ方しなきゃ行けないんですね」
「ハッハッハ! そうだな! その時は頼むぞ?」
「はい。私も陛下に恩がないわけでないですし」
ジェニーがフレディと会うと言って以降一言も喋らなくなったリリーは少し下を向き、焦りと、後ろめたさをちらつらせた表情をしていた。
『冬の童話祭』に1作品「流れ鳥」というお話を投稿しております!
是非よろしければガン見して頂けると幸いでございます!




