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PROTECT HERO!!~勇者争奪戦~  作者: 檸檬
episode2 王と王
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ピクニック

 バイロンの食事専用ルーム。


「俺を人間領へ連れて行ってくれ!」

「「「「「バイロンさまーーーー!!!!」」」」」


「なりません!」

「そうですよ! ボルト公国との話し合いも……あっ!」

「あーー構わんぞー。こやつらは知ってるみたいだからな」

「もう知って…ええぇ!」


「なんか大変そうね」

「国の頭が遊びに行くとか言ってるんだからなー」

「こりゃ上手くいっちゃいそうじゃぞ~」


 ロブはウキウキしていた。


「ボルト公国の問題をまず解決しないと! そんなの無理ですよ!」

「世の中に無理なものなどないぞ! とは言いつつもそちらの解決が流石に先か……わかった! 今からボルト公国に行こう!」

「今からですか!! 無理、イヤ大変ですよ!」

「大丈夫! マルコ! 準備をしてくれ!」

「かしこまりました」

「「「「「へいかーーー!!!」」」」」


「あのマルコって奴いつからいた?」


 マルコという背丈は180cm位で細身の男がフレディすら知らぬうちに現れたのだ。


「いやぁ…わかんないわ」

「だよなぁ……あいつ結構やるぞ」

「あんたいっつもソレばっかよね」


「なぁ! そなた達よ! 一緒に来ないか! 食について色々聞かせてくれ!」

「良いぞ良いぞ! わしらも別に暇だしの!」

「わしらって言ったわよ」

「めんどくせぇ…」


「さぁ! 行くぞーー!!!」

「「「「「バイロンさまーーーー!!!!」」」」」




 ティモア帝国城内城門前。


「これに乗ってくれ!」

「これって……」


 バイロンが紹介したものは多少不格好ではあるがワンボックスの形をした自動車だった。


「なんじゃこれは?」

「これはな! 自動車というものでな! 馬なしで走ることが出来る馬車なのだ!」

「ほぉーーそりゃ凄いのぅ!」

「馬いないなら馬車じゃねぇだろ」

「はぁ、それもそうだな。そなたやっぱり頭が良いのか?」

「まぁな」


 フレディは興味なさげに返事をした。


(今バイロンさんやっぱりって言った? やっぱりって何? コイツ私とおじいさんがいないうちに何かやった!? それともバイロンさんは本気でフレディが知的に見えてる!?)


 後者である。


「マルコ! 運転頼む!」

「かしこまりました」


 ミア、フレディ、ロブ、バイロン、マルコが乗り込むとバイロンがマルコにそう言って自動車は走り出した。




「中々速いの!」

「馬よりかは全然マシだなこりゃ!」

「そうだろそうだろ! これも俺が開発したのだ!」

「ほーそうかい!」


 ロブはしきりにバイロンをおだてているが速いのは確かで実際70km/hくらいは出ている。

 しかしここでミアは別の疑問が浮かぶ。


「なんか少なくない?」

「後ろから2台程来ているぞ」

「あ、ホントだ。イヤ、それにしても少なくない?」

「まー大丈夫だ。最悪マルコが何とかしてくれる。何かあったらなんとかしてくれよ、マルコ」

「何その曖昧な指令」

「かしこまりました」

「かしこまっちゃうのね……」

「それより教えてくれ! 人間領の食を!」


 ミアの疑問は最早そっちのけの回答でバイロンは食べ物の事を聞いてきた。そしてこれからボルト公国に着くまで3人はみっちりバイロンに質問攻めにあった。

 ちなみにフレディは5分ほど自動車に興味を持った後はバイロンの少々大きめの話し声の中さっさと寝てしまったため実質2人でバイロンの質問を捌いていた。




 ボルト公国外れの村。


「きのこの魅力とは一体何なんだ! 多岐にわたりすぎていない!?」

「はい、うん、そうね、美味しいのよ」

「流石に疲れたのぅ……」


 グロッキー状態の2人に質問を投げかけ続けるバイロンがピタリと視線を外にやった。


「…クソが……」

「え? あ、すいません!」

「??あぁ、すまないな。そなたらに言っているわけではないんだ。質問攻めにして悪かったな」

「いえ、良いのだけど……どうしたんですか?」

「いやぁ別に、大したことではない」

「そうですか……」


 バイロンの反応は明らかにおかしかった。そう思ってミアはバイロンがしたように視線を外にやった。すると外にはボルト公国の人と思われる人々がいた。

 ただいるというわけではなく、相当貧相な身なりをしていた。


「ねぇおじいさん」


 ミアはロブに小声で話しかけた。


「なんじゃ?」


 ロブも察して小声で答える。


「こんな貧困な地域ってジャンセン王国にはあった?」

「いや、それどころか人間領にすらない。これは酷い…」


 2人はこの光景を見たバイロンがイラついた理由に疑問が残った。

 ただそれとは別にボルト公国内を走れば走る程確信することがあった。


 どの村も町も全てボロボロで家もまともに建っていないということ。


 そしてもう一つ、バイロンの口数も段々と減り、ストレスが溜まっていっていること。




 ボルト公国内中心都市。


「さぁ、着いたぞ」

「ここも……」


 中心都市に到着しても外の様子は大して変わらなかった。


「フレディ、もう着いたぞー」

「んあ? じじいか…ホントに着いたのか? ボロすぎねえか?」

「ここで合ってるぞ。ここからは降りて歩いて行こう。マルコ、案内してくれ」

「かしこまりました」




 そして中心都市の中の中心の屋敷に到着した。屋敷はそれなりに豪華な作りになっているが警備はおらず、あっさり屋敷の扉を開け、この国の重鎮に即会うことになった。


「入るぞー」


 バイロンはノックもせず重鎮がいるという部屋に入っていった。


「なっ……! バイロン殿!」

「なぜこんなところに!」


 部屋の中には直径5mくらいの円卓があり、6人の老けた男がその円卓を囲みながら食事をしていた。


「返事はもう少し待って欲しいと言ったではないか!」

「事情が変わったのでな、今答えろ。条件はなしでいいか?」

「そんなわけがないでしょう! それに今と言っても無理であろう!」

「老害が……どうするか? 金貨1万枚か? 貴様ら全員の首でも良いぞ」

「首だと……!」


「てっきり戦争だと思ってたのだけど……これは何の話をしてるの?」

「今ティモア帝国がボルト公国内を属国にしようとしているところでな、その条件を決めている所じゃ。そもそもさっきの光景を見た通りこの国がティモア帝国と戦う力があるはずもないじゃろ」

「それもそうね……でも、バイロンさんまだ怒ってる」

「それはわしにもわからん」


「さて、誰から切り落とすか?」

「だからもう少し待ってくれと!」


 バイロンは円卓を強く叩いた。


「貴様らと俺じゃ出せるカードが違うんだよ。早く決めろ」

「きさまぁ……」

「ふざけるな! やれ」


 一人の老人がしびれを切らしてそう叫ぶと数人の男がいきなり現れバイロンに襲いかかった。

 それに対してバイロンは一切動かない。

 するとマルコがバイロンの前に現れ襲いかかる男を吹き飛ばした。


「他にも人がいたんだ……」

「気配はバレバレだったがな。雑魚だろ。だが、やばいのはあっちだろ」

「え?」


「選ぶ権利ももういらないな。マルコ、とりあえず5人を殺せ」

「かしこまりました」


 1人を除き全員の老人の首が飛んだ。


「「え?」」


 マルコの気分で生かされた老人とミアの2人がそんな声をあげた。

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