お食事会
ロブとフレディが脱獄した数分後。
「あーーやばいやばいやばい!!」
「「「待てーー! そこの女!」」」
ミアは現在ティモア帝国城内で衛兵に追いかけまわされている。というのも人喰族のおじさんと話をした後ロブとフレディを救出するために城内へ侵入したのだがソッコーで見つかってしまったのだ。
「この女! 相当足が速いぞ!」
「待てーー! きさまーー!」
「植物園の開放は現在行っていないのだぞーー!」
「うっさい! 見かけたら入ってみたくなっちゃったのよ!」
ミアも頭のネジが緩んできているようだ。
「ああーーもう! また植物園まで戻ってきちゃった! あいつらどこいるのよーーーー!!!!」
「おや? ミアちゃん。お主もこっちに来たんか」
「ミアじゃねぇか。寂しくなって来たか?」
「何であんたらまで植物園にいるのよーーーー!!!!」
2人もまた植物園の植物を眺めていた。
「じじいがちょいと見ていきたいとか言いだしてよ。じじい、ミアも来たんだしさっさとどっか行かねぇか?」
「えーーもうちょっと見ていきたいんじゃがのぅ。その前に、ミアが連れてきた衛兵さん達をまかないとな。フレディ」
「?? 分かった」
フレディは走って来るミアの首根っこを掴んだ。
「うえぇぇ! 何すんのよフレディ! きゃあぁ!……え? 何?」
気づけば木に登っており、3人を探していた衛兵は今さっきまで追っていた輩が一瞬で消えたことに驚きそこら中を見渡している。
「逃げ方がいちいち規格外なのよ」
「ミアもやってみれば出来るはずじゃよ。さぁ、これからじゃがせっかく城内に入ったんじゃしもう一回くらい皇帝さまに会っておかないか? あやつにミアを見せておこう」
「りょうかーい。よし行くぞ、ミア」
「もう大体超人技はスルーなのね。分かった分かった、行きましょ」
バイロン・バックマンの食事専用ルーム。
「今日はどんな肉に仕上げたかな? 料理長! さぁさぁそこにおいてくれたまえ」
「かしこまりました。今回は魚と野菜を元に、ムニエルに仕上げました。それでは、失礼しました」
「うむ、今日も良い働きであるぞ」
「そいじゃ今度はわしらが失礼するぞい」
「???? 貴様はさっきのご老人……ハッ! どうやら俺にご執心のようだな」
「誰だ!? 貴様ら! ここをどこだと思っている!」
「よい。俺も興味が湧いてきた。この者達にも食事を持ってきてやってくれ」
「良いのですか!?」
「いや、それはわしの方から断っておこう。わしら人間族なんでね」
「なっ!!!! これは驚いたな! わざわざ遠方から来たというのか! ますます興味が湧いてくるぞ! ならば尚更人喰族の食事を食べてもらわないとな! さぁさぁ速く持ってきてくれ!」
「か、かしこまりました」
「わしらに人食いの趣味はないのじゃがな」
バイロン・バックマンは自分の手元にある肉をフォークで突き刺しこう言った。
「それなら心配に及ばん。この肉はな、人の肉ではないのだ」
「ほぅ……」
「更に言えば肉ですらないのだがな。これは私が開発した人工肉だ! 人喰族は人の血肉が食料であるということはまぁ、知ってるわけだが、それではつまらん! 人喰族は肉以外の味を知ることが出来ないではないか! と思った私は様々な味のする肉というのを開発したのだ。だから安心したまえ、決して同族を食べさせようなんてことを思っているわけではないぞ! ただ魚の味だと思っている肉が本当に魚の味なのか知りたいのだ!」
「なるほどのぅ。それでは食べてみようか」
「えぇぇ…大丈夫なの?」
「味は保証するぞ!」
そうこうしている内にすぐミア達の分も到着した。
「失礼いたします」
「2度もすまないな」
料理長は3人の元に料理を並べ去って行った。
「さぁ、食べてくれ。ムニエルを再現した肉だ! どうだ? なあどうだ?」
3人はムニエル風の肉を口に運ぶ。
「ほぉぉーー、中々美味いのぅ! じゃがまぁ…な」
「美味しいけど…ムニエルとはちょっとちがうかなぁ?」
「俺はムニエルを知らんけども、美味いぞこれは」
「流石に美味いか! だがムニエルとは違うか。ちなみにどう違うのか?」
「味は良く再現されてるとは思うの。本物を食べたことないとは思えないくらい」
「他種族の食べ物の書物を漁りに漁ったからな! じゃあ何が違うのだ?」
「食感かのぅ」
「食感!!!! だと!!!! それはそこまで重要なのか!!??」
「食感は料理においてはすっごい大事だからね」
「わしも味と食感が違うものを食べて初めて分かったわい。食感がおかしいと味の変に感じてくるのぅ」
「あと温かい方が良いわね。なんで冷めたまま食べるの?」
バイロン・バックマンが作った再現肉の料理は食感は肉のまんまでしかも特に熱を加えたりということはしていない。
「食感…それに加熱か……加熱をまずやってみよう! 料理長に加熱した肉を持ってくるように言ってきてくれ!」
「かしこまりました!」
数分後。
「何度も悪いな」
「いえ、とんでもございません」
料理長に少し疲れが見えてきている。
「こちらになります」
「あ。」
「そうじゃったな」
「なんつうもん持ってきてんだあいつ
料理長が運んできたものは炭と化した肉だった。
「ほうほうこれが美味しい食べ方というのか! ん? どうしたのだ? そんな気まずい顔をして」
「いやぁ、ごめんごめん! ちょっと言葉足らずだったわね! 料理には焼き加減っていうものがあるのよ! これは焼きすぎね! ちょっとおじいさん! 調理室行くわよ!」
「そうじゃな! ちょいとわしらが作ってくるぞ! 皇帝様は待っといてくれ!」
「あ、あぁ。おい、だれかついてやっていってくれ」
「かしこまりました。ではこの者が行って参ります」
「え? 俺? あ、いえ、行って参ります」
(なんか超こえーー)
「一人残ったようだが、そなたは料理が得意ではないのか?」
「まぁな、俺は食う専門だ。そういえばおっさん」
「俺のことか?」
「そうそう。おっさんは強いのか?」
「そなたもしや馬鹿だな?」
数分後。
「来たな! さぁさぁここへ! おいてくれ!」
「我ながら結構上手くいったと思うわ! 召し上がれ!」
バイロン・バックマンばミアとロブが焼いた肉を口へ運んだ。
「……」
「どうじゃ?」
「俺のことはバイロンと呼んでくれ…」
「それってどういう…」
「何なのだこれは! 加熱によってここまで食べ物は変わるのか! 気に入った! そなたらは人間領から来ただよな!? 俺を人間領へ連れて行ってくれ!」
「「「「「バイロンさまーーーー!!!!」」」」」




