ダブルバトル
国王の私室。
「なんだぁ! もっと気合い出せや! おっさん!」
「私はね、そんなに強くないんですよ。というか君強すぎではありませんか?」
フレディとフレイジャーの戦いは一方的だった。
「この戦いホントひどいわね…ホーナスはもう大丈夫?」
「あぁ、まだまともに動けないと思うが、まぁ、明日も生きていられるさ」
「何よそれ。生きてもらわないと私も困るのよ。あ、ねぇねぇホーナス、私からも謝らないと思ってさ……なになに!!??」
フレイジャーが頭から途轍もない勢いで飛んできた。今度は距離が近く、気づくのに遅れてミアの顔面にぶつかりそのまま吹っ飛んでいった。
「いったぁぁ…フレディ!! 何してくれんの!」
「すまんすまーん。考えてなかったわ。どうせ怪我ねぇよ……ミア!! そいつ蹴っ飛ばせ!!」
「え?」
「『マリオネット』」
フレイジャーはミアにぶつかったのだがミアの側にはもちろんホーナスもいて、フレイジャーはちょうどホーナスの真横で停止したのだ。
ホーナスはおもむろに立ち上がった。
「ホーナス? ねぇ、どうしたの?」
「天は私に味方をした……!!」
フレイジャーはほくそ笑んだ顔を隠せないでいた。
「まだ動いちゃだめよ。ほら、血が出てるよ……」
「無駄です。もうホーナス君は私の傀儡ですから」
「傀儡? ホーナスに何したの!?」
「もうさっき説明したんですよ…手始めにカート君をお願いします」
「げっ! 頼むぜホーナス! やばっ!!」
ホーナスは一瞬でカートの懐に入り、ニコの体ごと胴を切り裂いた。2人はそのままへたり込み、意識を失った。
「それではカート君も私の傀儡に。ホーナス君。次はフレディ君を」
「まぁそうなるよなぁ……ミア! 俺はホーナスの相手で精一杯だ! そいつは頼む。くれぐれもそいつの魔法にはかかるなよ」
「え? わたし……?」
「お前以外に誰がいるんだよ! もう俺たち以外いないんだ」
「え、えぇ、わか……った」
そうして2つの戦闘が始まった。
フレディandホーナスサイド
「こうやってお前とちゃんとやり合うのは俺が団長になったとき以来だったか?……って喋れねぇんだよな」
「……」
「嬢ちゃんの方も心配だしあんまり長期戦はいやなんだけどなぁ。お前の為にもだけどよ」
「……」
一度軽く止血はしていたが再び動き出したため心拍が上がり腹から血が流れていた。
「ハァ…しょうがねぇ……いくぞ!!」
2人は同時に動き出し剣が交わった。その瞬間封印竜と戦ったとき以上の風圧が起こり、倒れていたカートとニコは吹き飛ばされていた。
壁まで吹っ飛んだカートは壁に頭を打ち、その勢いで目を覚ました。
「痛あぁぁ…あぁ、ホーナスにおもっくそ切られたんだ。こりゃ動けんわ…って陛下? そういえばいましたね」
「……あぁ…」
国王も同様に吹き飛ばされていたようで偶然飛んできた場所がちょうど隣だったのだ。
「いやぁぁ、起こせないっすよ。おいらも起きれないんで」
「……無理か…」
「はい」
足が上を向いてひっくり返っており、国王としての威厳は微塵も感じられない格好をしていた。
「王国最強同士の戦いなんて陛下の部屋でやるもんじゃねぇよなぁ……いや、戦いすら、か」
2人の剣が交わる度に強烈な風が生まれ、止血のために押し当てているカートの布が大きくたなびいている。
「ただ、こっちもこっちでまずいか、ミアちゃん……」
ミアandフレイジャーサイド
「どうしました? 勇者なんて言ってもこの程度なのですね」
「くそっ!! うるさい!!」
こちらは一転ミアが押されていた。身体能力においても、更には剣術においてもミアが上回っているのに、経験という点においてフレイジャーが大きく上回っていた。というよりミアの経験があまりに無かった。
ミアの手は震えているのだ。




