どこここ…
「んぅぅ…?………え?……??」
「そなたよ、名を何という」
(私に聞いてんのよね?てかどこ?だれ?なんで私囲まれてんの?)
いきなり召喚されたのだ。怪しげな格好をした数十人に囲まれ正面には下品な装飾品を身につけた老人が一人。彼女からしてみれば奇妙なカルト集団に入信を迫られているようにしか思えない。
「えーーっと。私ミア、ミアホワイトよ。ところで、ここどこ?早く戻らないとチェックアウトに間に合わないのよ」
「そうか、ミアというのか。よくぞ参った」
「えぇ、ありがと。私もう参ったから用は済んだよね? 帰る前にもう一回オンセンに入りたくなってきちゃったなー。じゃあいっそう早く戻らないと!それじゃあまたね!その髭イカしてるよ!」
ミアは足早にこの場を去ろうとする。
「良いのですか、陛下」
モノクルの男が髭を蓄えた老人の更に後ろに腰掛ける60歳くらいの『陛下』という男に声を掛けた。
「構わん。最初は動揺や困惑が続くと書にも記されている。想定内だ。数日様子を見ていれば少しは落ち着くはずだ」
陛下が老人に合図をするとその老人はメイドの方を見て指示を出す。
「おい! そこの、ミアを案内しろ」
「かしこまりました。それでは行きましょう」
(意外と聞き分け良いわね。タクシー乗ればまだ間に合うかな。その前に警察?いや、警察なんて行ってたら帰りの飛行機に間に合わないか)
「それじゃあ頼むわ」
「こちらになります」
案内されたのはいいが着いた場所は廊下の途中の部屋。明らかに出口と言える場所ではない。
「……?? ここであってるの? さっきまだ下りの階段あるの見たし、てかどう見ても部屋の入り口って感じよね?」
「ええ、部屋の入り口ですよ。ホワイト様の」
「私の? え、様?」
「はい。ホワイト様の部屋です」
ガチャッ
「何なのよこれ………私をカルト集団の教祖にでもするつもりなの!?」
豪勢なベッド、豪勢な机に豪勢な椅子、所々に価値の高さを伺わせる絵画や壺。天井には巨大なシャンデリア。そして軽くBBQが開けそうなくらいのバルコニー。金額度外視のこれも最早下品とも言える部屋がミアの部屋だと言うのだ。教祖の一人や二人住んでいたって不思議では無い。
「そのようなつもりは一切ありませんが…さあ、中に入りましょう。」
「こちらについては追々説明させていただきます。美術品に関してはもし気になれば学者を呼んで説明をさせますがいかがなさいますか?」
「いや、いい。興味ないし…………??」
バルコニーから外の景色が見えたとき、何か見慣れない感じがする。バルコニーへ出て外を眺めるとそこには中世のヨーロッパは思わせる町並みが眼下に広がっている。
「ホントに教祖になっちゃったかもしれない」
「いいえ、ホワイト様はこの国を救う勇者なのです」
「もう無理。処理が追いつかないわ。」
(私の3泊5日北海道旅行はどうなっちゃったのよ……)