表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薫る竜の島の物語  作者: 椎名 碧
1/4

 嘗てこの王国は海峡を隔てて大陸と交流があった。白銀の竜が住まうこの王国は、他にもあちこちに沢山の竜が生息している。獰猛で厄災の象徴のように扱われる大陸の竜と違い、穏やかで人語を理解するほど知能の高いこの島の竜たちを、大陸の国々はその手中に収めようと常に画策を練っていた。いや大国だけではない。王国の竜の抜け殻には不老不死の力があるだの、鱗はダイヤモンドに値する価値があるだの話が上がっている。豊穣な土地には様々な産物もある。それらも大陸の人間にとっては垂涎の代物だ。トレジャーハンターといえば聞こえはいいが、所謂盗賊たちも虎視眈々とチャンスを狙っていた。


 白銀の竜・ダマスケナは光の当たり方によって薔薇色になる不思議な鱗を持ち、寿命は万を超え、その霊力によって、この広大な島を厄災から守っていた。しかしそんな白銀の竜とて寿命がある。新たな白銀の竜が最初の脱皮を終え、ようやく自由に空を駆るようになった頃、白銀の竜の霊力は少しずつ落ちていった。それを見計らったかのように、大陸の竜達が突然海峡を渡り、攻撃を仕掛けきた。中には疫病を纏っているものもいる。それがこの島国に持ち込まれたら、人はおろか竜たちも大変なことになる。数か所同時に襲われあわやという時、王国の竜たちは白銀の竜と共に、大きな咆哮を上げ、火焔を噴き、水流を巻き上げ、雷鳴を轟かせ、この島をその世界から分断した。それは王国の竜たちが自らを守るための行動で、人間たちは大陸側だけでなく、王国ですら為す術を持たなかった。


 ダマスケナは暫くして力尽き息絶えた。新たなる白銀の竜が守護をするようになった。


 かくして海峡付近の水は干上がり、激しい乱気流で覆われてしまったその島は、完全に世界から孤立する事となった。しかし白銀の竜が生息するという事は相変わらず資源が豊穣である証拠。王国は竜と共に再び生きることを選択し、閉ざされた世界で竜を敬い共生し、平和に生活をしていた。


 大陸から島国へ行きつく手段は殆ど断たれたが、完全ではなかった。乱気流の中に時折発生した特殊なうねりは、時として大きなルートを作る。ルートとは大陸と王国を結ぶたった一本の道筋となる気流。その気流にうまく乗ることが出来ると、大陸の人間は島国に到達することが出来た。ただし、ルートがどの位保持されるのかは予想が難しい。大抵の場合は途中でルートが消失し、無残にも乱気流の藻屑となってしまう。


 それでも大陸は疫病や干ばつなどですぐに危機的な状況に陥る。彼らから見たら目の前にあるのに届かない王国はまさに楽園そのものだった。

 しかも普段目にすることのない王国の竜の鱗や髭などは、プレミア素材としてほんの僅かな代物でも超高額で取引される。だから無謀にも島国の周囲を埋めく乱気流へと、ルートが発生することを期待しながら侵入を試みる者が後を断たなかった。大陸は敢えてそれを黙認していた。


 白銀の竜が最後にこの地を守った時、この王国も無傷とは程遠い状態だった。そこから産業が復活し、元通りの生活が送られるようになるまでに5年はかかる。これは鎖国状態の王国にとって大打撃となる。だから再びあのような事態を引き起こしてはいけない。その為竜騎士団を始めとする国境警備隊は、常にそれらの観測や監視を怠らなかった。

 

 これはそんな島(王国)の中の物語。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ