召喚
「きりーつ、礼、着席。」
召喚当日。
午前の授業が終わり、日直が挨拶をする。
え、朝?
…朝礼ギリギリに来ましたよ。
チキりましたよ、ええ。
こほん…。
それはともかく、昼休みになった。
使徒さまは5分ほど前には連絡をくれるといっていたからまだ急いで弁当を食べる時間はある。
隣の席のアリスと目配せをする。
その後、2人で勇者候補の天道君を探す…いた。
どうやら今日は学食ではなく教室で友人と食べるらしい。
机の上にコンビニの袋が乗っているあたりパンか何かを買ってきたのだろう。
「クロ、私たちも早く食べましょう。」
「そうだね、持ち物の最終確認もしたいし早く食べよっか。」
そうしていつも通りアリスと2人で昼食をとる。
少し急いで昼食を食べながら教室の中にいる生徒を確認する。
天道君はクラスの友人と供託前の自席といくつかの机をくっつけて昼食を食べている。
小田君は後ろの席で趣味の合う友人としゃべっている。
昼食は10秒チャージで有名なゼリー飲料を飲んで済ませたようで机の上に抜け殻が置かれている。
倉橋さんは…如月さんたち女子グループと食べてるな。
ふぅ…。
「「ごちそうさま。」」
アリスと同時に食べ終わる。
弁当箱をしまい、持ち物の確認をする。
制服に入れておけば持っていけるかもしれないからね。
携帯…よし。
ソーラー発電機…よし。
充電式小型ライト…よし。
うん、全部問題ないな。
携帯の中にある電子書籍も昨日駄目押しで増やしたし思いつく限りはやった。
あとはその時を待つだけ…。
[聞こえるか…]
そんなことを考えているとついに使徒さまから連絡が来た。
アリスと目配せし、お互いにうなずく。
[よし、聞こえているようだな
勇者召喚の儀式が始まった
よってこれより5分ほど後に召喚が実行される
勇者候補の近くに二人でいるように]
またうなづきながら天道君の場所を確認する。
彼も昼食を食べ終えて友人と談笑中のようだ。
[これより世界をつなぐ
そちらの部屋の中から出られなくなるが問題ないか]
俺は問題ない。
アリスは…問題なさそうだ。
お互いうなずく。
[では接続を開始する]
使徒さまがそういうと教室の扉がひとりでにピシャリとしまった。
その音で何人かがドアの方を見て異常に気付く。
そして一人の生徒が警戒しながら前方のドアに近づく。
「?
なんだ?
あ、開かない!?」
「おい、どうした?」
「今ドアが勝手に閉まったように見えて気味悪かったからあけようとしたんだ。
でもなんか開かなくなってるんだよ。」
「は?
ホラーじゃあるまいしそんな事…。
開かねぇ…。」
「後ろのドアもだ!」
「窓も開かないわ!」
クラス中がザワザワと騒がしくなる。
みんな若干パニックになりかけている。
しかも異世界物というよりはホラーの導入のような扱いされてるし。
「くそ、こうなりゃ窓を壊すしか…。
割れない!?」
「どけ、カス。
お前らが非力なだけだろうが。」
乱暴な言葉づかいで窓を割ろうとした男子を押しのけたのは近藤悠斗だ。
いわゆる不良などに分類される生徒だが1年の時にクラスでいじめをしようとしたところを天道君に止められ、それ以来クラスの中ではおとなしくしているが他クラスや街中ではそのうっぷんを晴らすかのように暴れることがあるらしい。
そんな彼は両手で窓際の机を持ち上げ窓にたたきつける。
「…チッ。」
しかし窓はひび一つなく変わらず存在していた。
[時間だ
それではまずこちらの管理空間へ呼び戻しを行う]
使徒さまからそう声がかかると教室の床に魔法陣が現れる。
「な、なんだ!?」
クラスのだれかがそういった後、魔法陣がカッと強く光った。