休日
今回も短め
学校が始まってから数日…。
今日は日曜日なので学校はおやすみだ。
「ふむふむ。」
「あ、この辺とか…。」
「あー、なるほど?」
ぶつぶつと独り言が部屋に響く。
あれから小田君に本を返してはおすすめを借りを繰り返している。
異世界ものの作品も結構読んできた。
…ちなみに18禁のゲームは意外にもアリスから許可が下りた。
もっぱらアリス自身が将来の勉強用としてやっていることが多いが…。
「どうしたの?」
「小田君から借りた本に面白い考え方が書いてあって。」
「考え方がおもしろい?」
「そうなんだ。
今まで読んだ中でも、勇者が絶対ではないとか、最初は一般人くらいなのに覚醒して強くなる、なんかの展開も面白かったけど、今回のは世界への考え方が面白くてさ。」
「どんなの?」
「勇者召喚される人がいる世界にはその話が架空、おとぎ話などでありふれていて、だからこそ召喚や転生させられた人が順応しやすくなっているのだー、って。
まるで世界そのものが養殖場というかそんな考え方で作られていて召喚する側は試験場的な世界だって事実を知った主人公が神々に挑む物語だったよ。
世界の真実の是非はともかく世界全体で見ると僕らの世界ってどんな世界なんだろうかって思ってね。
あと世界に名前がついていることが多いのは地球側から勇者を向かわせやすくするためだって。
そう考えると俺は元の世界の名前があるかなんて気にしなかったし、それどころか地球みたいに惑星の名前があるかも気にしなかったなって。」
さっき読んだ本の内容も軽く説明する。
「確かにそうね。
王宮の勉強でも特に世界や惑星単位の名前なんか出なかったし。
それに惑星、大陸は平面ではなく球体といった形なことなんてこっちの世界にきてから知ったわ。
それと宇宙。
こちらの世界独自の技術である化学によって世界の広さを知ることが出来たわ。
空のさらに向こうは、魔法があった元の世界ではおそらく誰も知らないでしょうね…。」
「でしょ?
あと数日で召喚だけど、なんかこっちの世界に残った方がいろいろ学べるし環境もいいしでいいことずくめな気がしてきてさ。」
「特にアビスにとっては元の世界に思い入れなんかもないでしょうし…そうかもね。
でも便利ではあるけどやっぱり空気が悪いのは慣れたとはいえ気になるわ。
私は都会よりも森の中でゆっくり生活した方が体に合ってるのかしら。」
「エルフっていろんな本でも森人とか書かれるくらいには自然寄りの種族っぽいからね。
それでも人間の暮らしやすさ、特に衛生面に関してはこっちの世界の方がすごくいいと思うよ。」
「そうね。
まさか私が不治の病として習ったものの半分くらいがこっちでは治せるなんて思いもしなかったわ。
回復魔法に頼りすぎた弊害ね。
魔法で治せない=不治の病だもの。」
「でしょ?
せめて戻るときにいくつかこっちの生活環境持ってけないかなあ。」
「無理に決まってるでしょ。」
アリスが即答する。
「ところが、さ。
これと、これとかかな。」
小田君から借りた本から何冊か取り出す。
「?
なにがよ?」
「召喚や転移、または転生時にもらえる力としてネットだったり通販だったり異空間だったりが付与または選択しているんだ。
それで胡椒とかを転売して資金を得たりゆっくり暮らしたりしてるんだ。
もしもらえる力が選べるなら一回ダメもとでお願いしてみたいなあ。」
「そうなの?
でも元の世界でもそんなに胡椒は高くないわよ?
資金だって魔物倒す力をもらって魔物とかを狩った方が早くないかしら?」
「まあ絶対に胡椒じゃなくちゃいけないわけでもないし、それにあくまで一つの可能性だからね。
あと魔物を倒す力とかだと冒険者制度があるかどうかだったり、徴兵されたりなんかが怖いって書いてあるものもあるよ。」
今度は戦闘系の本を出して話を続ける。
「冒険者は…あったわね。
何でも屋の傭兵みたいな感じで実力もピンキリ。
一応AからGまでのランクで強さを分けてる…って感じだったはずよ。
あと徴兵はよっぽどでない限りないはずよ。
ここ数百年はなかったはずだし。
それに一般人より先に冒険者から徴兵されるはずよ。」
アリスが元の世界の情報を思い出しながら話してくれる。
「そっか。
それなら単純な力もありかな。」
そんな話し合いを続けながら転移までの日を過ごした。