日常
使徒さまの連絡から数日…。
今日は始業式の日だ。
まずは学校の話の前に、アリスとの話し合いの結果をまとめると、
・異世界に召喚されることは2人だけの秘密
・身辺整理を進める
・小田君から創作物の異世界物から能力とかで強いもの、要注意なものをきいておく
・如月さん、倉橋さんにはなるべく近寄らない
・2/13に誕生日パーティーを2人でやる
・2/14はお昼ご飯をお弁当にしてかたまって行動する(特に天道君の動向に注意)
となった。
サブカルチャーに関してはアリスはファンタジー系ではなくスポーツやバトル物を読むのでファンタジー担当(別に決めたわけじゃないけど)の俺が小田君から教えてもらうことになった。
そんな感じで頭の中でまとめていると教室についた。
「「おはよー。」」
挨拶をしながら教室に入る。
何人かがこちらを見た後、付き合いのある人たちが挨拶を返してくれる。
そんな中、こちらにドスドスと大きめの紙袋を持った小田君がやってきた。
「おはようですぞ。
久島兄弟。
今日も仲がよさそうで我は嬉しい。
特に有栖さんのかわいさ、いや美しさは冬休みが明けても変わることなく…」
「…何のご用でしょうか。
できれば一度席につかせていただきたいのですが…。」
おお。
相変わらず猫かぶりながらうまいことかわすなあ。
「あ、いや、すみません。
そのぅ、黒鉄君をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「別にかまいませんよ。」
「ありがとうございます!
ささ、黒鉄君こちらですぞ。」
「うん。
アリス、ちょっと行ってくるね。」
「行ってらっしゃい。」
アリスに一声かけ、見送られながら小田君の後をついて教室を出ていく。
ついていくと多目的教室となっている、誰もいない空き部屋に案内された。
「それで、冬の間の勉強が終わり次第わ、我にサブカルチャーを教えて欲しいとのことでしたが…。
まだその気持ちに変わりない、ということでよろしいでしょうか。」
「うん。
できればファンタジー、それも異世界転移とか転生物を中心にお願いしてもいいかな。」
「む、了解しましたぞ。
こちらとしても高校入学後から勉強を教えてもらっている恩返しがずっとしたかったゆえ。」
「そんな、僕が好きでやってることだから、別に気にしないでいいのに。」
「では我も、好きでやることですので。」
「そっか。」
「うむ。
布教活動は大切ですからな。」
「ふふ…。」
「ふっふっふ。」
「「はっはっは。」」
ひとしきり笑った後、小田君が切り出した。
「それで本題なのですが、この紙袋にいくつかおすすめを持ってきたのです。
一応おすすめには18禁なものもあったのですが、それは聞いてからにしようと思い今回は全年齢版のおすすめ、ゲームと本、それぞれ5選ですぞ。」
「そっか。
ありがとう。
18禁については…アリスに怒られちゃいそうだから相談してからにしようかな。」
「いや、18禁のゲームの許可を妹に求めるのもなかなかやばいと思いますぞ…。」
若干引き気味に小田君が見てくる。
「そうなの?
でも家でやるとばれちゃいそうだし、事前確認って大事じゃない?」
常識とかはこっちの世界で学んだものも多いが、その中でも報連相の大切さはとても同意できるものだったのに…。
エロゲは別なのかな?
でも保健体育とかでも普通にやってるしな…。
「いや恋人ならともかく兄妹でエロゲの確認や許可制はどうかとおもうのですが…。」
「こい…あー、うん。
そうだね。」
使徒さまの連絡の日の告白を了承してからアリスの距離が近くなったし、否定の言葉が出てこない…。
「む?
その感じ、まさか…冬の間に何か進展が?
ま、まさか、一線ももう…。」
「いやいや、一線は超えてないから。」
「一線「は」?」
「えっと、好意の確認ができた、というか。
つ、付き合ってるわけじゃないよ?]
正式に付き合うのは元の世界に召喚されたらだし、嘘じゃないはず…。
「そ、そうでしたか。
いやしかしやはり我の目に狂いはなかったでしょう?
前に有栖さんのアビス君を見る顔が目が明らかに女の顔でしたので!
ちなみに倉橋氏に関しては?」
「そっちは特に何もなかったよ。
でもアリスが言うにはもう一人俺を好きな人がいるらしいんだよね。」
「なんと。
モテモテでうらやましいですなー。」
「だれかもらってくれてもいいんだよ?」
「いや、我は久島兄妹のヨ○ガってるところが見れれば満足ですゆえ。
それ以上は望みすぎというものです。
それに我はケモミミフェチなのでリアルはちょっと…。」
ケモミミかぁ…。
元の世界にも確かいたはず…。
路地裏のあの子たちは元気だろうか…。
「黒鉄君?」
おっと、考えすぎて黙ってしまったようだ。
「ヨ○ガって…近親恋愛だっけ?
俺もアリスも孤児だからほんとに兄弟かはわからないよ?」
ほんとは他人なんだけど。
「まあそんな感じで認識していただければ。
あまり深く教えると有栖さんに怒られそうなので…。
あと我としては血のつながりがなくとも兄弟として育っていてばいいのです。」
「そっか。
ひとまずこの紙袋分は借りてくね。
ありがとう。」
「いえいえ。
興味を持ってもらえて我も嬉しいですぞ。
まだまだおすすめはありますし、異世界物も見繕っておきますので、読み終わり次第教えてくだされば。」
「わかった。」
そう了承したところで、学校の予鈴が鳴った。
「そろそろ戻らないとだね。」
「ですな。」
そうして俺たちは教室に戻るのだった。
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「起立、礼。」
『ありがとうございました。』
日直のあいさつにより、授業が締めくくられる。
俺が教科書などを片付け終えたころ、隣の席のアリスが話しかけてきた。
「朝の小田君の話はなんだったの?」
どうやら始業前に小田君と席を外した時のことを聞いているようだ。
「前に言ってたサブカルチャー方面のおすすめを貸してもらってたんだ。
あと転移ものを回してもらえるようにお願いしておいたよ。」
「そうなの。
じゃあ帰ったらまた?」
「うん。
家にこもり気味になるね。」
「あんまり外に出ないのもどうかと思うけど、私たちには必要なことになるわけだからねぇ。
でもあんまり棍を詰めすぎないでね。
学びきれなくてもダメって決まってるわけじゃないんだし。」
「うん。
わかってるよ、アリス、
でもやれることはやっておきたいし、それになんていうのかな…。
元の世界じゃこんな風に知識を得る機会がなかったから楽しいというか、ね。」
「むむ…。
私はむしろ元の世界より気楽になった方だから、その辺はちょっとわかりづらいわね…。
…再度いうけど無理はしないでね。」
「わかってるって。」
そうして俺たちは次の授業の準備に取り掛かった。
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