狭間
続きです。
「光の玉?」
浮遊感が収まると、目の前には光の玉が浮いていた。
周りの景色も真っ白になっており祭壇などのものが全くない。
光の玉、俺、残りの生贄の5人の子供しかいない状態だ。
「ここはどこ?」
エルフの子がいう。
「「「「「さぁ?(わからない)」」」」」
図らずも5人の否定が被る。
しかしこれで状況を理解しているものがいないことがわかった。
[ここは生と死の狭間…
生贄が既定の者でなかったためここに呼ばれたのだ]
頭の中に直接聞こえるように声が響く。
「あ、あなたは誰?
神様なの?」
今度は天翼族の女の子が少しおびえながら話す。
[否
我は光の使徒
光の神は個として存在せず、その意思の伝達として遣わされるのが我ら使徒なり]
「そ、そうですか…」
天翼族の子が少し興奮したようにいう。
「…というか生贄が違うってどういうことですか?
王家の、しかも15以下という条件は満たしているはずです。」
今度はドワーフの少年が言う。
ドワーフは毛むくじゃらのイメージがあったが、彼は髭がうっすらとしか生えておらず、ドワーフとしては若々しかった。
「あ、あの~。」
意を決して声を出す。
条件を知らなかったとはいえ、おそらく王家の血をひいてないのは俺で間違いないだろう。
気は進まないが名乗り出ねば…
「俺実は…その。
王家の物ではないといいますか。
むしろ…孤児なんです…。」
それから俺は孤児だったことから今までのことを洗いざらいしゃべった。
そしてみんなから言われたのは
「知らなかったんでしょ、仕方ないしそれにもう起こってしまったことよ。
あんまり気にしすぎちゃダメ。」
「悪いのは人間の王であって君じゃないしね。」
「きみを責めるのはただの八つ当たり」
「思うところがないわけではありませんが、皆様も言うようにあなたに罪があるわけでもないですし」
「豪華な生活って言ってたけど王族の中では質素も質素、風呂くらいだろ、いい思いできたの。
他は平民レベルだな、人間の王はしけてんのな。」
[あくまで我は汝らに選択させるために呼んだのであり詰問は目的にあらず]
上からエルフ、ドワーフ、小人、天翼人、妖精族、使徒さまだ。
人間の王様と違って偉そうにしないし人が出来てる…。
ていうか城でのあの生活豪華でもないのか。
…もっと豪華なのがあるのか、そうか。
「で、選択ってなにを選べばいいのかしら」
エルフの子がみんな(俺はほかのことに気を取られていたが)の疑問を代弁するように発言する。
[汝らの選択とは今回規定外なりとも一つ以外は条件がそろっているゆえに少し違う形で儀式を成功とすることになったのだ
それは4人で規定よりも細い道を開け、2人ほど勇者側の世界へ送りそれを目印として個人ではなく数人規模での召喚を行うものだ
だがこれにはリスクがあり、道が安定するまでに日数がかかりやすいこと、行きの道が不安定な道の中送られることになる二人にはさらには無事向こうの世界につけるのか、たどり着いても生き残れるような世界なのか、勇者召喚時までに生き延びて無事戻ってこれるのか、といった危険がある]
「?
帰りは大丈夫なんですか?」
天翼族の子が思わず、といった感じで疑問を声に出した。
[ああ
一度通った道をこちらで補強した後に戻す故、機関には問題ない]
「ちなみにそれぞれ失敗した場合はどうなるんですか?」
今度は妖精族の子が質問した。
[たどり着いて死ぬまたは向こうの世界にたどり着いて期間までに死んだ場合は向こうの輪廻に組み込まれるだろう。
たどり着けすらしない場合は…無限に狭間を彷徨うことになるやもしれん
だが詳しいことはやってみないと分からん]
「そう…ですか。
ちなみに残りの4人は?」
[正常に行われた時と同じく穴が開き次第こちらの輪廻に引き戻すことになる]
「2人なのは何か理由がでも?」
精霊族の少年が聞く。
[本来世界を超える際に力を2つ与えることにより世界の移動に耐えられるようにするのだが今回はそれが出来ぬ
よって二人の魂を圧縮し、われの力で膜を張り送り出す
…が、魂の圧縮事態推奨できかねることのため何が起こるかわからん
よって最低限の人数として2人、というわけだ]
「「「「「「は、はぁ。」」」」」」
何やら専門的なことっぽすぎて全然わからん。
「それではもし向こうの世界にたどり着けた場合は何をすればいいのですか?」
小人の女の子が質問する。
[生きろ
それ以外は望まぬ
生き残るためなら何をしてもかまわない
向こうの法やこちらの法などは気にしなくてもいいだろう]
「え、それは向こうの人も困るんじゃ…。」
[下手に規制をつけてしまってもつらかろう
向こうの管理者に話は通る故何かしらめぐりあわせは良くなる…はずだ]
「そ、そうですか。」
「それでは私たちの中で2人選出するまでの相談の時間はいただけるのですか?」
[当然だ
だがいつまでもとはいかないので2時間ほどとさせていただきたい]
「わかったわ」
[では時間になったら伝える]
そう言って使徒さまは消えてしまった。
光の玉が消えれば暗くなるかと思えばそんなことはなく明るいままだった。
「さて、だれが行くか、だけれども。」
エルフの子がそう切り出す。
質問の時も前に立って話してたし面倒見のいいタイプっぽい。
「これをメリットととらえるかどうかなのよね…。」
「メリット?」
「そう。
向こうの世界で生きろと言われたでしょ?
すなわちそれは生き返れる可能性があるってことにもなるのよ。
まあ狭間を彷徨うなんてなる可能性もあるから何とも言えないのだけど。」
そうか、死んじゃってもいいと考えてきた俺と違ってみんなは生き返りたいかもしれないのか。
勝手に罰を受けるつもりで立候補しようとしたけどこれは残った方がいいのかな?
「あの…俺はどっちでもいいんだけどさ、今回のは俺が原因みたいなところあるしみんなが先に決めて余ったとこに入れてよ。」
「「「…………。」」」
「あきれた。
まだ罪の意識にとらわれてるわけ?
いい加減しゃんとしなさいっての。」
エルフの子に駄目だしされ背中をたたかれる。
「私は命は一度だからこそ輝くものと教わりました。
なので今回は残る4人側を希望します。」
天翼族の子がそう発言した。
それを皮切りに
「僕も
狭間を漂う可能性があるのはやだし。」
「あたしも」
「んー俺も特に生き返りたいってことはないかなぁ。
どうせ確定じゃないんでしょ?
働くの面倒だし。」
ドワーフ、小人、妖精族の子らが意見を出していった。
「そう。
ならあたしがこいつについていくわ。
もし元の世界に戻れたら残してきた妹の確認くらいはできるかもしれないし。
それにこいつが心配だしね。」
そうエルフの子が締めくくった。
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話し合いがひと段落したが思いのほか時間が余ってしまった。
まだ2時間のうち半分の1時間ちょっとしかたっていない。
そんなとき、またエルフの子が
「どうせならお話しましょ」
と声をかけてきた。
他の子は、と思い回りとみると、天翼族の子がお祈りしていたり、妖精族の子が寝ていたりとみんな思い思いにしているようだ。
「まずは自己紹介から。
私はアリス・ウェル・カリメラ。
ウェルが当代の王家の者を示すものよ。
よろしく。」
そう言って手を差し出してきた。
その手を握って返事を返そうとするも、重大な事実に気が付いた。
「よろしく。
えっと…ごめん、僕は名前がないんだ。
親も知らないし、お城ではおい、とかお前、とかしか言われなかったから。」
「そうなの…。」
そう言って悲しそうな顔をするアリス。
今考えると各種族のお偉いさんの子供が集まってる中に孤児が一人って場違い感すごいな。
そんなことを考えているとアリスが意を決したように言った。
「なら私が名前を付けてあげるわ。
これから向こうの世界で唯一の事情を知る仲間になるんですもの。
私と近い名前がいいかしら。
んー…。
…アビス、なんてどう?
私と一文字違いで母音も一緒。
名案だと思うの。」
すごい。
目が輝くってこういうことを言うんだろうなってお手本が目の前にある。
その圧に押されて「う、うん。」と返事をしてしまった。
「よし。
なら自己紹介のやり直しよ。
ほらほら。」
「わ、わかったよ。
せかさないで。
んー…。
アビスです。
よろしく、アリス。」
「よろしい。」
そうして僕たちは少しの時間だけどいろいろな話をした。
エルフの国の事、俺が知ることのない常識、一般的な暮らしとは何か、などいろいろなことを知れた。
そして、
[時間だ]
旅立つときが、来た。
次話は明日の同じ時間です。