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Vの者!~挨拶はこんばん山月!~  作者: サニキ リオ
第三章 ~バーチャルとリアルのはざまで~
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【同時視聴】東京アマゾネス見るよ!

「こんゆみー、茨木夢美でーす」

「おはっぽー、白雪林檎だよー」


[まさかのドラマ視聴枠]

[気になってたから助かる]

[レオ君いないの?]


 今日はカリュー主演ドラマ〝東京アマゾネス〟の放送日だ。

 どうせ見るなら宣伝もしようと思い立った林檎は、突発的に夢美を誘って同時視聴配信を行うことにした。

 同時視聴とはU-tubeなどの動画サイトでライブ配信を行い、映像を流さずに各々で映像を同時に再生して擬似的に一緒に動画を見ることである。

 二期生の中でも、桃華と赤哉はよく日曜日の朝に放送しているアニメや特撮の同時視聴を行っている。


「レオは今日がバイトの最終出勤日で来れないぜ! 残念だったな!」

「世知辛いねー」


[悲しい……]

[そういえばフリーターだったんだっけ]

[レオ君バイトやめるの?]


 林檎は三人でこの同時視聴をやろうとしていたのだが、レオは今日がバイトの最終出勤日だったため、今回の林檎の配信には来れなかったのだ。


「ライバー活動に専念したいからやめるんだってさ」

「結構古参になっちゃったから、段々出勤日減らしてやめるつもりだったんだってさー」


[はえー、しっかりしてんなー]

[居酒屋だっけ]

[はい喜んでー!(イケボ)]


「そんなわけで、今日はレオ抜きで同時視聴やってくよ!」

「来週から三期生全員で同時視聴するからお楽しみにー」


[何気に三期生はちゃんとしたコラボあんまりしてなかったから楽しみ!]

[トラブル続きだったもんなw]

[どんな困難にも三人で立ち向かっていくスタイルすこ]


「ちなみに、今回あたしの枠をとってないのは林檎ちゃんの家にお邪魔してるからだよ」

「つまりオフコラボってわけさー」


[オフコラボだと!]

[バランゴてぇてぇ]

[バランゴで草]


 基本的にレオ達は三期生という呼ばれ方をする。林檎を交えた個々の組み合わせの呼び方は定着していなかったが、今回の配信で改めて定着しそうな〝バランゴ〟という呼び方がコメント欄に溢れていた。


「ねえ、何であたしが絡むと可愛くない名前になるの?」

「バラギならしょうがないよねー」


 オープニングトークもそこそこに、そろそろドラマが始まるため、二人はテレビをつけて待機することにした。


 カリューの出演するドラマ〝東京アマゾネス〟は、時空を超えて東京に現れたアマゾネス〝ペンテジレーア〟が周囲を巻き込みながらも、登場人物の悩みを持ち前の豪胆さで解決していくコメディドラマだ。ちなみに、キャッチコピーは〝アマゾネス、東京のコンクリートジャングルで大暴れ!!!〟である。

 ドラマが始まると、いきなり東京駅の前の広場に巨大なブラックホールのようなものが現れたシーンから始まった。

 ブラックホールが収まると、そこには毛皮などの狩猟民族を彷彿とさせる民族衣装を身に纏った一人の女性が立っていた。その手には自分の身長よりも長い槍を携え、背中には弓矢を背負っている。

 高層ビルが立ち並ぶ東京駅のビル風に晒されて、狼の毛皮のフードが外れる。


 そして、正面からドアップでペイントを施されたカリューの顔面がテレビいっぱいに表示された。


『ヤハ、ウェクク!?』


「「ぶふっ!?」」


[月九でこれを放送する勇気]

[わかったぞ。これはコメディに擬態した恋愛ドラマだ!]

[むしろ社会派ドラマかもしれん]


 日本語ではない言語で何かを呟いたカリューの姿に、夢美と林檎は耐え切れずに吹き出した。

 この曜日のこの時間帯に放送されるドラマは基本的に、ラブコメディか社会系のドラマが多い。その常識を覆した内容に小人や妖精達も困惑していた。


『ラウ、ペンテジレーア! アマゾーン!』


 カリューが叫ぶのと同時にカメラが一気に上空に引いていき、タイトルが表示される。

 あまりのインパクトに夢美と林檎は言葉を失っていた。

 画面にスポンサーが表示される中、夢美は林檎に東京アマゾネスの内容について尋ねた。


「……ねえ、あたしあらすじ全然読んでなかったんだけど、どんなドラマなの?」

「……一応、〝強い女性〟がテーマのドラマらしいけど」

「いや、強すぎるでしょ。いろんな意味で。大丈夫? にじライブの関係者ドラマスタッフに紛れ込んでない?」


[さすがにそれは草]

[あたおか具合ではにじライブとため張れる]

[否定できないところがにじライブの怖いところだなぁ]


 それから場面は移り変わり、どこかのオフィス内でのシーンへと切り替わった。

 上司にミスを咎められているうだつの上がらない青年〝秋薄健(あきうすけん)〟は、自販機でコーヒーを購入すると、会社の屋上でタバコを吸ってスマートフォンをいじっていた。

 そんな中、会社の屋上にビルの壁をよじ登ってきたペンテジレーアが現れる。


『ヤハ、ウェクク!?』

『はっ、何!? アマゾネス!?』


 突然現れたアマゾネスに驚き、健は腰を抜かす。


「ちょっと待って、これいつになったらヒロイン言語習得するの?」

「さすがに話が進めば覚えていくんじゃなーい?」


[カリュー可愛いのにこんな役ばっかりw]

[歌うと可愛いのになぁ]

[どっかの誰かさんと似てますね(白目)]


「うるせえ!」

「作り込んでるなー……ふふっ」


 あまりにもリアルなアマゾネスの演技に、カリューの凄さを林檎は改めて実感する。

 かつて優等生だった面影はどこにもなかったが、負けず嫌いで何事にも本気で取り組む姿勢を感じ取った林檎は小さく笑みをこぼした。


 それから話は進み、健は東京に来たばかりで右も左もわからないヒロイン、ペンテジレーアに振り回され続け、散々な目に遭う。

 食事に連れて行けば大食いのペンテジレーアに食費を圧迫され、あちこちで槍を振り回すせいで警察から逃げる羽目になったり、挙動不審な様子で女性用の下着を買いにいって白い目で見られたり、健の生活は滅茶苦茶になっていた。

 そんな健はあるとき、自分の部屋に居候していたペンテジレーアが仕事の書類に何かをしているのを見付けて堪忍袋の緒が切れてしまう。


『もう散々だ! お前が来てから俺の生活滅茶苦茶だよ!』

『オマエ、オコ?』

『ああ、そうだよ! 出ていけ!』


「そりゃそうなるわ。こんなことされたらレオ以外ブチギレるって」

「レオなら、苦笑いしながら何でも許しそうだよねー」


[いないのに話題に上がるぐう聖ライオン]

[レオ君でもこれは無理でしょwww]


『……スマンコフ』


「ねえ、シリアスなシーンで笑かさないでよ!」

「何でその単語をチョイスしたんだろうねー……」


[スマンコフは草]

[やっぱにじライブの関係者混じってるって]

[これは視聴決定]


 健といる間に、周囲から聞いた単語を覚えていたペンテジレーアは悲しそうにそう呟くと、とぼとぼと健の部屋を出ていった。

 ペンテジレーアが出て行ってから、代わり映えのしない日常に戻った健は、自分がペンテジレーアと過ごす日々が楽しかったことに気がつく。

 そしてドラマも終盤に差し掛かり、健の会議でのプレゼンのシーンになった。

 緊張と上司への恐怖のあまり、足の震えが止まらない健だったが、プレゼンの資料にデカデカと書かれた〝がんばれ!〟の文字を見て、勇気を出して堂々と発表をして上司からも褒められることになる。

 健は感謝の気持ちを胸にペンテジレーアを探し始めた。


「おっ、ヒロインを探す流れキタ!」

「……何かデジャブなんだよなー」

「そういえば、林檎ちゃんを連れ戻すときのあたしとレオも同じ感じだったね」

「いやー、本当にありがとねー。あのとき、レオとバラギが来てくれなかったらこうしてここで配信なんてできなかったよー」


[えっ、何その話]

[詳しく!]

[ドラマより気になるんだが……]


「その話はまた今度ねー」


 主人公が傷心のヒロインを探すシーンを見たことで、夢美はレオと共に林檎を連れ戻しにいったときのことを思い出していた。

 小人や妖精達は、そのときの話を聞きたがっていたが、林檎は改めてその話を設ける場を作ることを示唆した。

 東京駅周辺を駆けずり回った健はついに、警察に連れていかれそうになっているペンテジレーアを見付ける。

 警察の不意をついて彼女の手をとって走り出した健は笑顔を浮かべてペンテジレーアへと告げる。


『ほら、帰るぞレーア!』

『ケン、アリアト!』


 満面の笑みを浮かべたペンテジレーアが言った台詞と共に、エンディングが流れ始める。

 このドラマのエンディングテーマ〝明日の勇気〟はカリューが歌っていた。


「おー、やっぱカリューって歌うまいね」

「この曲今度弾こうかなー」


[おっ、コラボか?]

[さすがにリアルのアイドルとのコラボはねぇよw]

[でも、最近カリュー自分のチャンネル作ってなかったっけ?]

[まず、認識してないだろ]


[カリューの部屋:事務所からコラボオッケー出ました!]


「……ほ?」


[!?]

[!?]

[!?]

[本物!?]

[どうなってるの!?]


 コメント欄に表示されるカリューのチャンネル名。それが本物とわかった瞬間に、コメント欄がざわつき始めた。


「えっ、カリュー来てるんだけど!?」

「マジかー……マジか……」


 カリューが林檎がライバーをやっていることを認知していることは、林檎もカリュー本人から聞かされていた。

 とはいえ、自分の主演ドラマの同時視聴枠に本人が来ることは林檎も予想外だった。林檎としては、少しでも親友のドラマの視聴率に貢献したかっただけだったのだが。


「ちょっと待って、マネージャーに確認するから、返事はまた後日ということで……」


[カリューの部屋:はーい!]


[これはとんでもないことになったぞ……]

[ねえ、どうして三期生は伝説しか作れないの?]

[人気アイドルとコラボするVがいると聞いて]


 こうして、カリュー主演のドラマ〝東京アマゾネス〟の同時視聴枠は大いに盛り上がり、トレンドは〝東京アマゾネス〟〝白雪林檎〟〝カリュー・カンナ〟〝コラボ〟という単語が並ぶことになるのであった。

 配信を終えて一息つくと、林檎は恨みがましくドラマの放送が終了したテレビの画面を睨んでいた。


「もー……環奈の奴」

「あははっ、林檎ちゃん。顔ニヤケてるよ?」

「う、うっさいなー!」


 夢美に揶揄われたことで、林檎は顔を赤くして夢美にふかふかのクッションを投げつけた。


「あ、ごめん。電話だ」


 そんな風に楽しく戯れていた夢美と林檎だったが、夢美のスマートフォンに電話がかかってきたことでクッションの投げ合いは中断された。


「もしもし、お母さん――由紀が家出して帰ってこない!?」


 夢美は母から知らされた、妹の家出という一大事に素っ頓狂な叫び声をあげるのであった。


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