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【小休止】伝説の合間にて

 にじライブレジェンドアニバーサリーも一日目が終わり、残すは明日のステージのみだ。

 二日目にはライブステージが初日よりも多めに入っている。

 初日の方にライバー企画のステージを多めに入れ、二日目は公式企画が多めに入っているためだ。

 そのうえ、二日目にはステージの合間に海外展開しているライバーの紹介も行う予定だ。

 特に勢いを増しているにじライブENのライバー紹介は、にじライブのトップライバーであるミコが紹介することになっている。

 彼女もENで先輩として後輩を引っ張っていく立場となって、今も伸び続けている。Vtuber界で登録者数トップの実力は伊達ではないのだ。

 天真爛漫さが彼女の一番の魅力ではあるが、子供っぽい彼女も、先輩としてしっかりしている彼女の姿も受け入れられており、EN二期生、三期生も無事順調なデビューを果たした。


「パパー、一日目のラストライブ疲れたしー……」

「ケイティ、お前本当にナチュラルにパパって呼ぶようになったな」


 二日目にも出番がたくさんあるミコは、初日のラストステージのライブで力を使い果たし、会場近くのホテルにあるレオの部屋でだらしなく寝そべっていた。


「だって《《ワタシ》》にとって日本での両親は二人だし」


 ミコは当然のように告げた。

 バーチャルライバー星野ミコが生まれたのは、夢美の存在があったからである。

 ミコは夢美に憧れてライバーになった。

 そして、いつの間にかレオを交えて三人で夢星島という家族になっていた。


「Vのコラボ名だし、最初はただのごっこ遊びの延長線だったんだけどなぁ……今じゃ自分でも驚くほど馴染んでる」

「でしょ?」

「ったく、子供が生まれたらとんでもない姉がいるって紹介しないとな」


 登録者数100万人を超えるバーチャルライバーを両親に持ち、Vtuber界で最も登録者数の多い姉。

 そのうえ、レオも夢美もメジャーデビューを果たしており、レオに至っては元トップアイドルである。

 情報量だけでも、とんでもない家族だ。


「というか、大学はどうするんだ? 卒業の時期も近づいてきただろ。就職先は決まったのか」

「あー……そっち方面でもパパみたいなこと言い出したかぁ」


 ミコは元々交換留学で日本に来ていた大学生だった。

 いつの間にか日本に居座っていたのでレオも忘れていたが、元々大学卒業後はイギリスにもどって今以上に海外ライバーとして活動していく予定だったのだ。


「じ、実はさ……就活してないし」

「はえ!? おまっ、えっ、何でそんな大事なこと……」


 突然のカミングアウトにレオは驚きのあまり飛び起きた。


「いろいろ準備しててさ。ちょっとバタバタしてたからタイミング逃したし」


 ミコはバツの悪そうな表情を浮かべて告げた。


「てか、就活するならとっくにあっちに戻ってるし。私は専業ライバーとしてこっちでやってくって決めたし」

「じゃあ、卒業後もここに?」

「うん、いったんイギリスには戻るけど」


 先ほどまで気怠げに寝そべっていたミコは、表情を引き締めて立ち上がった。


「元々ライバーだけでやっていけるとは思ってなかったんだ。でも、事務所のみんなやパパやママのおかげでここまでこれたし、楽しくやれてる――だからこれからもよろしくね、パパ」

「それは由美子がいるときにも言ってくれ」

「うん!」


 弾けるような笑みを浮かべると、ミコは自分の部屋へと戻っていく。


「明日のステージ頑張ってね」

「何言ってんだ。もう頑張るだけ頑張った。明日は楽しみながら、楽しませるだけだ」

「さっすが、パパ! 楽しみにしてるし! おやすみ!」

「ああ、おやすみ」


 愛娘を見送ると、レオはたぎる思いを抑えながら窓の外に映るビッグサイトを眺めた。


「画面越しでも、最高の景色を見せてやるよ由美子……!」


 愛する妻とまだ見ぬ赤ん坊。

 レオは今回のステージに立つ上でいろんなものを背負っていたが、それも含めてレオはステージを楽しむつもりだった。


「ん? 誰だ、こんな時間に……」


 闘志を燃やしていると、ホテルの部屋の呼び鈴が鳴る。

 扉を開けて見れば、そこには四期生、五期生の後輩達がいた。


「「「「レオさん、大富豪やりましょう!」」」」


「さすがに今回は寝ろ」


 どんなときでも通常運転。


 すっかりにじライブに染まり切った後輩達を見て、レオは嬉しそうに笑うのであった。



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