表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Vの者!~挨拶はこんばん山月!~  作者: サニキ リオ
第二章 ~化け物集団 三期生~
26/346

【3Dカラオケ】リハーサル中での一幕

 Vtuberカラオケ大会の本番前、レオはまず共演者の中でも一番Vtuber歴が長い板東イルカの元へと挨拶に向かった。

 リアルでの対面は初めてということもあり、近くにいたスタッフに確認をとっていたため、既にイルカが誰かはわかっている。


「あの、お忙しいところ申し訳ございません。今、お時間よろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫ですよ」


 落ち着いた大人の女性という印象を受ける女性――板東イルカは笑顔を浮かべてレオに対応した。


「はじめまして。にじライブ所属の獅子島レオと申します。本日は宜しくお願い致します」

「うふふっ、ご丁寧にありがとうございます。@LINE所属の板東イルカです。今日はよろしくお願いしますね」


 清楚だ……。と、朗らかに笑うイルカにレオは一瞬見とれるが、普段の配信内容を思い出してレオは頭を振った。


「バンチョーは元気にやってますか?」


 イルカは以前に何度かコラボ企画でかぐやとコラボしていたため、かぐやとは面識があった。


「ええ、相変わらずぶっ飛んだ配信をして舎弟達を楽しませてますよ」

「そっか、良かったです。乙姫ちゃんがいなくなってから元気なかったから心配だったんですよ。最近は忙しいみたいでオフでもなかなか会えなくて……」

「今度本人に『イルカさんが会えなくて寂しがっていた』と伝えておきますね」

「うふふっ、よろしくお願いします」

「では、本番ではいろいろとご迷惑をおかけするかと思いますが、宜しくお願い致します」

「ええ、お互い頑張りましょう」


 それからレオとイルカは連絡先を交換して別れた。

 イルカと別れたあと、レオは自分がかぐやと面識がないという重要なことに気が付いた。


「……まあ、諸星さんに伝えておけばいいか」


 それから次に視聴者参加型の企画を頻繁に行っている但野友世の元へ挨拶に向かった。


「お忙しいところ申し訳ございません。今、お時間よろしいでしょうか?」

「あっ、もしかしてレオ君!?」

「あ、はい。そうですけど」

「やー! 会いたかったよ! あの歌枠感動したよ! もうすっかりファンになっちゃってさ! あっ、自己紹介まだだった! アタシ、但野友世!」


 挨拶に伺った瞬間、鼓膜を突き破らんばかりの声量が耳を貫いた。

 脳のフィルターを一切通さずにしゃべってそうな人だな……。

 マイペースでパワフルな友世にレオは若干引き気味だった。


「何で俺が獅子島レオってわかったんですか?」

「だって、もう一人の男性Vとは挨拶したからね!」


 もう一人の男性Vと言われ、レオは近くでスタッフと話している少年に目が行った。

 髪を金髪に染め、左耳にはピアスをはめた、いかにも人生をエンジョイしていそうな見た目の少年。身長はレオより少し低いくらいだが、その外見からは一見近づき難さを感じる。


「まさか、彼が?」

「そう、魔王様だよ!」


 友世が呼んだ魔王様とは、ゲーム系Vtuberサタン・ルシファナのことだ。

 高いゲームセンスを持つ者を集めたVtuber事務所〝バーチャルリンク〟の中でも随一の腕前を誇るVtuber。それがサタンだ。

 得意なゲームはモンスターを育成して対戦する国民的人気を誇るゲームやレースゲームだ。その他のゲームでもプロ並みの腕前を誇るため、男性Vtuberでありながら一年で登録者数30万人を越える人気Vtuberだ。

 Vtuberとしての見た目も、頭に角が生え、漆黒のマントをはためかせている魔王然としたデザインをしている。ある意味、レオとは人外仲間といえるだろう。まあ、今日のレオはただのライオンの3Dモデルで出演するのだが。


「おーい、サタン君! レオ君、ここだよ!」

「えっ、本当ですか!」


 固い表情でスタッフと話をしていたサタンは、いったんスタッフに「ちょっとすみません」と断りを入れると、レオの元へと駆け寄ってきた。


「えっと……」

「はじめまして! 僕はバーチャルリンク所属のVtuberサタン・ルシファナと申します」

「はじめまして、獅子島レオと申します。……魔王様、なんですよね。すみません、動画のときと雰囲気違うので全然わかりませんでした」


 サタンは普段は傲岸不遜な態度で『ふっはっは、吾輩にひれ伏すが良い!』などとしゃべっているイメージが強かったため、レオは動画での彼との雰囲気のギャップに驚いていた。


「僕の動画、見ていてくださったんですか!?」

「ええ、デビュー前からVtuberは好きでしたから、チェックさせていただいてましたよ」

「嬉しいです! あの獅子島さんに見ていただいてたなんて!」

「いえ、俺なんてまだデビュー一ヶ月ちょっとの新人なんですから、そんな大層なものじゃないですよ」


 何か素のときの雰囲気は慎之介に似てるな。

 レオは最近ちょくちょく会っている、かつてのアイドル仲間の顔を思い浮かべた。

 しかし、それと同時に他にも思い浮かんでくる顔があった。


『やったー! まひるの動画見ててくれたんだ! 嬉しいなぁ』


 レオの事務所の先輩にあたる二期生の白鳥まひるだ。

 サタンの無邪気で人好きのする笑みはどこかまひるを連想させた。


「今度コラボしましょうよ!」

「ええ、是非お願いします。剣盾で一度戦ってみたかったんですよ」

「あー、剣盾……え、ええ、今度やりましょう」


 一番得意なゲームについての話題だったのにも関わらず、サタンはどこか歯切れの悪い返事を返した。

 レオも聞いたらまずい話題だったと判断して、即座にゲームの話はやめることにした。


「RINEかThiscodeのどっちかやってます?」

「両方やってます!」

「じゃあ、せっかくですし、両方交換しましょう」

「あっ、アタシも混ぜてー!」

「わ、私も……」

「ええ、もちろん――えっ?」


 連絡先を交換しようとしていた三人に混じって、さりげなくスマートフォンを出してきた女性に戸惑っていると、彼女は消え入るような声で自己紹介をした。


「は、はじめまして、Vacter所属の七色和音、です……」

「ああ、あなたが七色さんでしたか。はじめまして、にじライブ所属の獅子島レオと申します。本日は宜しくお願い致します」

「い、いえ、こちらこそ、よろしくお願い、します……」


 丁寧に頭を下げたレオに、釣られるように慌てて和音も頭を下げた。


「何か和音ちゃんも雰囲気全然違うね!」

「ひぅ!? そう、ですか?」


 急に友世が大きな声を出したため、和音は肩をビクッと震わせる。


「確かに、七色さんって歌っているときめちゃくちゃ声カッコいいですよね」

「あの歌声には痺れますよね」

「そ、そんな、恐縮です……」


 動画で歌を歌っているときの和音は、普段の弱弱しい声とは打って変わり、パワフルでハスキーな声になるのだ。

 彼女の知名度は主に歌動画で広がっているため、たまに行う生配信でのギャップに驚く視聴者も多い。


「そろそろ、リハーサル始めまーす!」

「あっ、リハ始まるみたいですね」

「それでは改めて本日は宜しくお願い致します」

「うん! よろしく!」

「よ、よろしくお願いします……」


 こうしてVtuberカラオケ大会のリハーサルが始まった。

 スタジオにはカラオケボックス風にテーブルやソファーが設置されている。

 曲を入れるデンモクなどはなく、代わりに台本やデンモクの3Dモデルを表示するための箱が置いてあった。

 それぞれのVtuberの立ち位置を確認すると、最後にスタッフからレオに指示が入った。


「獅子島さんは全員が挨拶を終えた後に、板東さんからコールが入り、ライオンの咆哮が音声で流れた瞬間に飛び出して入ってください」


 レオは今回ライオンの3Dモデルでの参加だ。普通ならばあり得ない提案にスタッフは大笑いしながらにじライブ側の提案を承諾し、その提案を最大限に活かすための入りを考えていた。


「かしこまりました。入るときは四つん這いの方がいいですよね」

「うーん、もっとこう動きが欲しいところではあるんですが……」

「なら、飛び込んで前転しながら入るのはどうでしょう?」

「おっ、いいですね! 試しにリハでやっていただいてもいいですか?」


 かつてアクションシーンも経験したことのあるレオにとって前転するくらいわけなかった。

 軽く準備運動をしてモーションキャプチャの機材を確認すると、レオは踏み込みと着地の位置をしっかりと見定めた。


「それではリハーサル行きます! 3・2・1……キュー!」


 スタッフの合図によって、リハーサルが始まる。軽く息を吸うと、イルカは元気良くタイトルコールをした。


「Vtuber大集合!」


「「「バーチャルカラオケ大会!」」」


 イルカに続くようにレオ以外の三人もタイトルコールを行う。


「さて、始まりました! Vtuber大集合、バーチャルカラオケ大会! みなさん今日は集まってくれてありがとうございます! わたくし、本日の進行役を務めさせていただきます板東イルカと申します。魚のみなさん、キュッキュー!」


 定番の挨拶を行うと、イルカはゲスト紹介に入る。


「それでは、本日のゲスト紹介に入っていきたいと思います。まずは――」


 それから台本通りに三人の紹介を終えると、レオの紹介をするパートがやってきた。


「あら、一人足りませんわね。確かにじライブからは獅子島レオさんが来ると伺っていたのですが……」


 イルカの前振りが入る。このあとはライオンの咆哮の音声が入って、レオが登場する流れだ。


「あれ? おかしいな……。すみません! いったんカットで!」


 しかし、音響の方でトラブルがあったため、いったんリハーサルは止まった。

 慌てて他のスタッフが音響スタッフの元へと駆け寄る。


「どうした?」

「あっ、音声データが破損してる……」

「おいおい、マジか。せっかく獅子島さんの派手で盛り上がる登場だってのに……」


 番組側としても、今回の企画はVtuber界の大物から話題の新人まで揃えた大型企画のため、盛り上がるレオの登場演出は絶対に入れたいところだった。

 そんなスタッフの元へ歩み寄ると、レオはある提案をした。


「あの良かったら、自分でライオンの鳴き声やりましょうか?」

「「はい?」」

「もちろん、本物ほどの迫力はありませんが、ある程度なら真似られますよ」


 こんなこともあろうかと、レオはこのコラボの話を聞いたときからライオンの鳴き真似を練習していたのだ。

 3Dモデルのライオンで動くとなれば鳴き真似をする機会もあるだろうと、レオはライオンの姿で一笑い取るために練習していたのだ。


「試しにやってみますね」


 スタッフや共演者の面々が息を呑む。まさか、せいぜい「ガルゥ!」くらいの鳴き真似だろうと思っても、どこかで〝にじライブのライバー〟ならあり得ると思ってしまったのだ。

 すぅ、と息を吸ったレオは声を震わせながら腹から空気を一気に吐き出して絶叫した。





「GRRRRRRRRRRRRRR!!!」





 空気をビリビリと震わせるような咆哮。それは人間が真似したものであるのにも関わらず、ライオンのような迫力ある咆哮だった。


「けほっ、けほっ……さすがに喉の負担が凄いですね。どうですか、これで本番もいけますかね?」

「ええ、何なら元の音源使うより盛り上がると思います……」

「それなら良かったです」


 喉を押さえながら笑顔を浮かべるレオを見て、スタッフや共演者を含め、その場にいた全員が同じことを思った。


 ――やっぱりにじライブ、頭おかしいわ……と。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ