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Vの者!~挨拶はこんばん山月!~  作者: サニキ リオ
第二章 ~化け物集団 三期生~
20/346

【歌枠】はじめまして!獅子島レナです!!

 今日はついにやってきた女声配信の日だ。


「あー、あー……あ、あ、あー……うん、意外といけるもんだな」


 入念にチューニングを繰り返したレオは満足げに頷いて配信ボタンを押した。


[何が始まるんです?]

[これは期待]

[にじライブ一の清楚の配信と聞いて]


 配信が始まったことで、コメント欄は袁傪達の期待の声で溢れていた。

 そんな袁傪達にレオは強烈な一撃をお見舞いした。


「袁傪のみんなー! こんばん山月! 獅子島レナでぇすっ……はぁっ」


[!?]

[!?]

[!?]

[初配信のバラギで草]

[吐息www]

[歌声じゃなくて、普通にしゃべるのもいけるんか!]


 夢美の初配信を真似た自己紹介に、コメント欄は驚愕と爆笑の渦に包まれる。

 レオはさらに畳みかけるように、獅子島レオの担当イラストレーターに描いてもらった〝獅子島レナ〟のイラストを表示した。


「今日はレナの配信に来てくれてありがとう!」


[立ち絵まで用意してやがるwww]

[ネタに全力過ぎて草]

[女声助かる ¥5,000円]

[てか、このイラストってまさか……]


「察しの良い人はわかると思うけど、あのオスライオンと同じママに描いてもらってるよ。さすがに予算とか時間の都合で動かないけど、許してね!」


[実質新衣装]

[オスライオンwww]

[相変わらずにじライブ狂ってるなぁ]

[これぞバ美肉李徴]

[伝説しか作れないライオン]


 それから続けて、レオは初配信時のテンパっていた夢美の真似をした。


「わっ、コメントがすごい! たくさん!」


[だからバラギの完コピやめろwww]

[これは新手の煽り]

[レオ君にしかできないんだよなぁ]

[コピー代 ¥500円]

[これで普通に可愛いんだから、いかにバラギが頑張っていたかわかる]


「それで、今日は何をやっていくかというと――」


 レオはあらかじめ用意していたマイクのイラストを自分の立ち絵の近くに表示させた。


「ジャジャーン! 今日は初めての歌枠をやってみたいと思いまーす!」


[おおおおおおおお!]

[この前のプラネタリウム良かったから期待]

[ホント何でもできるなこのライオン]


「じゃあ、最初はこの曲! ミュージックスタート!」


[マジで可愛くて困惑してる]

[本当にレオ君なのか?]

[俺は妹説を推していきたい]


 そしてイントロが流れ出し、何を歌うか把握したコメントは盛り上がりだした。


[だから選曲で歳バレるぞwww]

[この前も花男の曲だったしな]


「~~~、~~~~~♪」


[うおおおおおお!]

[かわいい!]

[何だろうこの感情……胸がぞわぞわする]


 コメント欄はすっかりレオの女声での歌声に魅了されていた。


「~~~♪ ~~~♪ ~~~~♪」


[は? 死ぬほどかわいいんやが? ¥10,000円]

[これで男という衝撃の事実]

[女としてのプライドがへし折れました。明日から男になります]


 そして、サビをもう一度歌うパートになったとき、レオは自分に出せる限りあざとく聞こえる声を出した。


「~~~♪」


[はい死んだー]

[あ゛(絶命)]

[我が生涯に一片の悔いなし ¥10,000円]


 そして、レオは最後までしっかりと一曲目を歌い上げた。


「~~~、~~~~~♪ ……ご清聴ありがとうございました! あと、スパチャ投げてくれた人もありがとね!」


[最高に可愛かった]

[これがバ美肉か……]


「ちなみにこの曲、昔は流行ってる可愛い曲って認識だったんですけど、大学の時の飲みのコールとして聞き過ぎて、トラウマを克服したくて歌わせていただきました」


 レオは大学時代の飲み会を思い出して顔を顰める。

 サークルの仲間はペース配分を考えないバカみたいな飲み方をする者ばかりだったため、レオはいつも介護役をしていてうんざりしていた。その経験があったからこそ、夢美の介抱がスムーズにいったわけだが。


[理由が酷いwww]

[すーいすーいすいすい]

[俺はレナちゃんのおかげでトラウマ克服できたわ ¥2,000円]

[てか、飲みサーいたの?]


「いえ、ダンスサークルでしたよ? まあ、飲みサーって言われてもしょうがないと思いますけど」


[アイドル時代の名残を感じる]

[むしろ感じるのは闇なんだよなぁ]

[レナちゃんトレンド入りおめでとう]

[レナちゃんって誰かと思ったらレオ君の女声かよwww]


「はえ……トレンド?」


 配信前から袁傪達が呟いたこともあり、いつの間にか〝レナちゃん〟というワードがツウィッターでトレンド入りしていた。

 完全に声を作っていたレオは女声のまま間抜けな声を漏らす。


[その声のままそのリアクションは死者が出るぞ]

[かわいい ¥10,000円]

[何で声そのままなのwww]

[一方バラギは……]


 トレンド入りしたことで、新たな袁傪達が増え始める。

 この勢いを保ちたかったレオは思考を切り替えて、次の曲を歌うことにした。


「あ、赤スパありがとうございます! トレンド入りもありがとうございまーす! 新しくきた袁傪達のためにもまだまだ歌っていきますよ! 次はこの曲です!」


 レオは次の曲をセットして音源を流し始めた。


「~~~♪ ~~! ~~~♪ ~~!」


[まさか男性ライバーがこの曲歌うとは……]

[たぶん一番かわいいまである]

[本当ハニワ好きだなw]


 レオが二曲目に歌っている曲は彼が好きなアーティストの曲で、作中のアイドルが歌っている曲でもある。性別を問わなければ、今のレオにはピッタリの曲だった。

 またこの曲は多くの女性ライバーが歌っている曲である。この曲の特徴として、歌詞の一部を自分の名前に変えて歌うことがお約束である。

 レオもそんなお約束に漏れずに名前の部分を変えたのだった。


「~~~♪ ……~~~、~~~~!」


[Foooooo!]

[Foooooo!]

[Foooooo!]


 コメント欄は待っていたお約束に大盛り上がりだ。


「~~~~♪」


 完全にノリノリのレオは勢いのままに曲目を歌い終えた。


「ありがとうございました!」


[いつかライブで歌って!]


「えっ、まだ3D化もしてないんだけど……」


[メスライオン3D希望]

[女バージョンが先に3D化は草]


 それからレオは喉を休めるための休憩を挟みつつ、どんどん曲を歌っていった。


「~~~♪」


[またアイドル曲で草]

[神のみ懐かしいw]


 一昔前に流行った複数のヒロインを攻略していくアニメの中でアイドルが歌っていた曲を歌ったり、


「~~~~~~♪ ~~~♪」

「~~~~~~♪ ~~~♪」


[しかも英語バージョンかよ!]

[男女でパート分けて歌ってるの!?]

[魔法のランプでも使ったのか?]

[地味にレオ君、今回の配信で初登場]

[一人でコラボとはたまげたなぁ]


 レナとレオの声を使い分けて歌ったりして、レオは配信を大いに盛り上げた。

 アイドル時代、レオは売れなくなっていたときに無茶な企画をやらされることも多かった。

 そのときに無理矢理やらされた女装して歌うという企画がまさかこんなところで生きるとは思いもよらなかった。

 現役時代の後半は嫌な思い出が多い。それでも、今こうしてその経験が役に立つのならば、あのとき歯を食いしばって屈辱に耐えながら挑戦した企画の数々も悪くはなかったのかもしれない。

 レオは不思議と過去の自分を受け入れ始めていた。

 どんなに受け入れがたい黒歴史でも、あの時の経験があったからこそ今があるのだ。


『ふざけんな! 俺にこんなイカレた企画をやれってのか!?』


 あのときは癇癪を起してばっかりでごめんなさい。そして、最高の経験をありがとう。

 レオは当時のマネージャーやSTEPのメンバーへ心から感謝した。

 そんな想いが溢れたからか、レオは予定を変更して選曲を変えて最後の曲を歌うことにした。


「名残惜しいけど、最後の曲行きます! 最後の曲はアイドル時代お世話になったマネさんやメンバーのために歌います!」


[お、これは期待]

[見てるか当時のメンバーやマネさん!]

[見てても気づかんだろwww]

[当時の担当アイドルがバ美肉してメスライオンに!]

[バ美肉李徴となったレオ君を見て、当時のメンバーは何を思うのだろうか]

[マネージャーもビックリだろうな]

[それは草]


 最初は茶化すコメントが多い袁傪達だったが、レオが歌いだした瞬間、そんなコメントは一つもなくなった。


「~~~♪ ~、~~~♪」


[神曲キタ――――!]

[女声のままこの歌唱力か……]

[アイドル辞めなかったら今頃大物になっていただろうに……]

[女声でもビブラート綺麗]


「~~~♪ ~~~♪ ~~♪ ~~~~~~♪ ……というわけで、ありがとうでした! ここまで見てくれた袁傪のみんな! 今日はありがとう! それではおつ山月!」


[おつ山月!]

[おつ山月!]

[おつ山月!]

[最高の時間をありがとう ¥10,000円]

[これは届いて欲しい]

[届いた瞬間身バレするんやが]

[世知辛いなぁ]


 こうして、レオの女声配信は大盛況のままに終わり、彼のチャンネル登録者数はまた一段と増加したのであった。



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