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Vの者!~挨拶はこんばん山月!~  作者: サニキ リオ
第三章 ~バーチャルとリアルのはざまで~
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【24万人記念!】にじライブの炎上フラグしかないバーチャルライバーに転生してしまった… その2

 引退したライバーからの通話。

 それに対して夢美は激しく狼狽した。


「いや、あの、えっ? 大丈夫なんですか?」

『契約的には名前を出さなければ大丈夫ですよ』

「聞いたかお前ら! この人の名前は打つなよ!」


[了解!]

[コメント消したわ!]

[まさか、また声が聴けるなんて]

[引退したライバーすら凸る女]

[どうして伝説しか作れないの?]


 夢美の言葉を聞いた妖精達はすぐに打ち込んだ乙姫に関するコメントを削除した。

 実際のところ、乙姫の名前を出したところで契約上の問題はない。

 何故なら彼女はにじライブの社員だからである。

 ただそれを言うと、社員であることが知られてしまうため、こういう言い方をしたのである。


「あの……どうして引退しているのにあたしに凸ってくれたんですか?」

『あなたを見ていると昔のかぐやちゃんを思い出してつい、ね。ライバーとしては引退しちゃったけど、あなた達のことはずっと見ていたの。だから、こんな私でも少しでも力になりたくてね』


[泣いた]

[まさか清楚(真)が来るとはなぁ]

[ずっと見守ってくれていたのか……]


 コメント欄では、妖精達が〝戻ってきて〟と言うのを必死に堪えていた。

 気持ちはともかく、そんなコメントをしてしまえば、また乙姫の負担になると理解していたからだ。


『だから、これからも頑張ってね。ずっと応援しているから』

「ありがとうございます! その、先輩もお元気で!」

『ありがとう。またね』


 言外に〝事務所で〟という意味を含めた乙姫は通話を切った。

 引退したライバー。それも自分のよく知る声だったことに夢美は茫然としながらも、次の凸まで間を繋ごうとしたが、その必要はなかった。


「まさかあの人が来るとは……うわ、もう来た!」


[幸せな時間だった]

[余韻に浸れないの草]

[これ、また全員来るパターンでは?]


 間髪入れずにかかってきた通話の相手はかぐやだった。


『はいはい、こんバンチョー! やっとるか?』

「いや、早いですって」

『バラギが凸待ちやったらみんな特攻するに決まっとるやろ』

「えぇ……?」


[相変わらず大人気で草]

[あの人の後にバンチョーが来るの熱い]

[今回かっちゃんは来るのだろうか]


 当たり前のことのようにかぐやに告げられた事実に、夢美は困惑していた。

 そんな困惑している夢美へ、かぐやは心底楽しそうに告げた。


『まあ、いろいろやらかして伸びたわけやけど、それについては後々事務所側からお仕置きが待っとるみたいやから楽しみにしておくとええで』

「ひえっ」


[草]

[当然の結果です]

[夫婦両成敗]


 当然今回事務所に迷惑をかけたレオも一緒に〝お仕置き〟を受けることになる。

 お仕置きの内容を思い返したかぐやはくすっと笑うと、乙姫の話題について触れることにした。


『それよりさっきウチの元相方が来てたみたいやな』

「あ、はい。まさか、引退した人が来ると思ってなかったんですけど、大丈夫なんですか?」

『昔の契約内容やし、結構ガバガバやから問題ないで』


 ガバガバどころか、社員からライバーになったため一期生には契約らしい契約はなかったとも言える。業務に必要な道具の支給という形の方がしっくりくるだろうか。


「一期生ってマジで大変だったんですね」

『当時はいろいろあったからな……ま、今はかなり改善されたと思うで。あんたらみたいな問題児もうまいことマネージャー達が支えてくれるからな』

「あはは……本当にいつもお世話になってます」


[バラギのマネちゃんは献立毎日送ってくれるんだっけ?]

[サポートが手厚いなぁ]

[バンチョーも雑談枠で三期生のマネは化け物って言ってたしな]

[コミケのあれは神対応過ぎるでしょ]


 イベント会場での顛末は夢美も四谷から聞かされていた。

 打ち上げ後に強制的に業務に駆り出してしまったことで、夢美は四谷に平謝りしていた。当然、レオも飯田に謝っていた。


「……今度三期生のマネージャー全員焼肉連れてってレオとあたしで奢ります!」

『おい聞いたか! 良かったな三人共!』


[レオ君さらっと一緒に奢ることになってて草]

[まあ、レオ君なら驕るだろ]

[白雪はさりげなく高い肉頼みそうw]


 それからかぐやとの通話が終わり、再び一期生の勝輝が来たり、二期生が全員通話をかけてきたり、前回の記念配信と同様にコメント欄は大いに盛り上がった。

 そして、残るは林檎とレオだけだ。

 今回は事前準備の時間がなかったため、林檎は特にドッキリらしいドッキリは仕掛けていなかった。


『まったく、人がパリに行ってる間にてぇてぇしやがってさー』

「ごめんって……あっ、あと、お土産ありがとね。パリはどうだった?」

『ママの付き合いでいろいろ大変だったよー。ま、ピアノ漬けだったから楽しかったけどさー』


[白雪のママ何者だよ]

[やっぱり白雪って金持ちだよな]

[お盆にパリに行けばワンチャン……?]

[ねえよw]


 林檎はお盆休みはパリで過ごしていた。

 母である郁恵に頼み込まれてコンクールにこっそり参加していたのだが、急に参加したコンクールでも、林檎はさらっと優勝して帰ってきていた。


『それじゃ、そろそろレオの番だねー。また一緒に遊ぼうねー』

「うん! 今日はありがとね!」


 こうして林檎も通話を切り、残るのはレオ一人となった。

 林檎が通話を切って数秒で着信音が鳴る。

 安心したように夢美が通話を繋げると、レオは普段よりもテンション高めに挨拶をした。


『どうも皆さん、こんばん山月! 獅子島レオです! 夢美、登録者数二十四万人おめでとう!』

「お前もな!」


[こんばん山月!]

[レオ君きちゃ!]

[二十四万人おめでとうに対してお前もなって返し初めて見たw]


 夢美と共に話題になっているレオが登場したことで、コメント欄は今までで一番の盛り上がりを見せた。

 そんな中、夢美はニヤリと笑うと、レオへと無茶振りをした。


「ねえ、レオがトリなんだから何か面白いことしてよ。あ、マンションの部屋隣だからってリアル凸はなしな?」


[無茶振りで草]

[やっぱ隣の部屋なのか!]

[バラレオてぇてぇ]


『そう言うと思って実は準備しておいたんだよ。このMP3ファイル開いてくれ』


[何で準備万端なんだよw]

[さすが幼馴染]

「〝お祝い.mp3〟ねぇ……まあ、いいわ。再生するよ!」


 怪訝な表情でレオから送られてきた音声ファイルをダウンロードした夢美は、恐る恐る音声を流した。


『夢美ちゃん! 登録者数二十四万人突破おめでとう!』

「ヴェッ!? お姉さん!?」


[!?]

[えっ、これ姉ライオン!?]

[既に姉ライオンって呼び方定着してて草]

[ガチじゃん、ガチじゃん!]


 レオが送った音声ファイル。それは姉である静香のお祝いのメッセージだった。

 レオは夢美が突発的に凸待ち配信を行うことを予想しており、予め静香にメッセージを録音して送ってもらうように頼んでいたのだ。

 もちろん静香はレオの頼みを二つ返事で了承した。


『いやぁ、まさか夢美ちゃんがVとしてこんなに成功するなんて小学校の頃は思いもよらなかったから感慨深いわ、うんうん……。ま、これからもうちの愚弟をよろしくね! Vの世界は全然わからないけど、応援してるからさ!』


[姉ライオン思ってたより、声カッコいいな]

[もうこれ完全に外堀埋まりきってるじゃん]

[元アイドルで現在登録者数二十四万人の愚弟を持つ姉]


 まさか来るとは思っていなかった静香からのメッセージに夢美は絶句していた。

 夢美の反応は予想通りだったのか、レオは楽し気に感想を求めた。


『というわけで、俺の姉さんからのメッセージでした! どうだった? びっくりしたか?』

「するに決まってんだろ! えっ、マジでお姉さんに頼んだの?」

『ああ、姉さん夢美のこと大好きだから二つ返事でオッケーしてくれたぞ』

「いや、嬉しいけども!」


[姉バラてぇてぇ]

[これは結婚待ったなし]

[もう観念しちゃいな?]


 とうとうライバー周りでも外堀を埋めにきたレオに、夢美は焦り始めていた。

 だから、もっと案件とか安定するまでこういうのは待てよ!

 夢美は心の中で叫びながらも、これをきっかけにまた自分達が伸びることを予感していた。


「とにかく、ありがとね。お姉さんにも後でRINEでお礼言っとくわ」

『おう、姉さんも喜ぶと思うぞ』


[姉ライオンのRINE知ってるのかよw]

[これはガチ幼馴染ですわぁ]

[切り抜き待ったなし]


 それから二人は軽く雑談すると、通話を切ることにした。


『それじゃ、俺はそろそろお暇するよ』

「今日はありがと。やっぱ持つべきものは幼馴染だね!」


 夢美は笑顔でそう言うと、レオとの通話を切った後、妖精達に挨拶をして配信枠を閉じた。

 引退したライバーを含めた一期生が全員凸に来て、にじライブに所属しているライバー全員が通話をかけてくる。

 そんなライバーは夢美くらいしかいないだろう。

 こうして夢美の記念配信は再び伝説となるのであった。


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