1章 -secret-
俺と暁はずっと一緒にいる訳ではない。ただなんとなく2人でいる時があるだけだ。金木犀の香りが至る所でしている。秋になってもその関係は変わらなかった。学校が終われば暁は飲み会やコンパに参加し、俺はバイトに行く。この関係が俺は嫌いではなかった。お互いに干渉しすぎなくて居心地がよかった。
「今日はどこ行くの?」
いつもと同じように俺は暁に聞いた。最近は毎日のように鉄道同好会に行き、路線の話や電車の凄さを披露してくる。今日も行くのかもなと思ったが、一応俺の日課なので聞いてみた。返事は思っていたものとは全く違っていた。
「今日はどこも行かないよ。」
「へー、そうなんだ・・・え?」
鉄道同好会に行くんだと楽しそうに話す暁を想像していたので不意をつかれた俺は立ち止まった。俺が立ち止まったことに気付いているはずなのに、暁は立ち止まらずスタスタと歩く。その背中は少し寂しげに見えた。
「暁にしては珍しいな。まぁそんな日もないとな。」
俺は小走りで暁の横に行き、言った。これ以上何も聞くなと言っているような雰囲気が暁にはあった。初めてこいつの怒ったような顔を見た。俺がいたことを一瞬忘れていたのか、暁ははっと我に返り、俺の方を見て、へへ。と笑った。いつもとは違う寂し気な笑顔だった。風が少し冷たい。
その次の日、暁は学校を休んだ。いつも遅刻してでも行くはずの暁が、だ。連絡もないので、さすがの俺も心配になり、暁に、”おーい、生きてんのか?”と連絡した。その日、返事は返ってこなかった。
暁が学校を休んだ次の日、朝っぱらからドタバタとアパートの階段を上ってくる音がした。すぐ、ドンドンっと扉が雑にノックされる。どう考えても俺の部屋だ。借金の取り立てをされる覚えはないぞ、と思いながら扉に近づくと、
「大修、起きろよ!!」
聞きなれた声が言った。すぐさま扉を開ける。ヒヤッとした空気が一気に入ってきて鳥肌が立った。夜と朝をまたぐ瞬間みたいな空だった。時計を見なくても分かる。まだ7時前だ。
「うるっせーよ!!何時だと思ってんだよ。どう考えても早すぎんだろうが!!」
出来る限り小さい声で怒る。
「寒いから家ん中いれて。学校行くまで寝させて。」
そこにはいつもと変わらない、ニヘヘと笑う顔の暁がいた。その顔に脱力して、もう起こる気は失せる。寝ぼけまなこでぼーっとしている俺の返事など聞かずに勝手に玄関で靴を脱いで部屋に上がり、ベッドにボスンと倒れた。ものの3秒で暁は深い眠りについた。
「のび太くんかよ。」
と、突っ込んでみた。当たり前だが返事はない。よく見ると2日前の服と同じだった。
何をしていたのだろう。気にはなったが何となく暁には聞けなかった。俺もまた眠くなってきたのでそのまま二度寝をする。
夢をみた。2日前にいなくなった暁はもう戻ってこなかった。そんな夢を。俺は必死で探していた。どこを探しても見つからなかった。いや、探し尽くせなかった。暁の家も暁がよく行く場所も、俺は何も知らない。
次に起きると、もう行く準備の整った暁がいた。目が覚めてこいつの顔を見て、安心している俺がいた。と、同時に思った。俺はまだ暁をよく知らない。どこでどう育ったのか。兄弟姉妹はいるのか。昔からこんな風に明るい性格だったのか。俺は何も知らない。この出来事以降、俺は暁のことをもっと知りたいと思うようになった。しかし、深入りした話はこれまで一度もしてこなかった。暁は一緒にいてよく喋り、よく笑う。人の話もよく聞く。だけど一度も俺の昔の話を聞いてこないし、自分の話をしようとはしなかった。言いたくないのだろう。今までは気にも留めていなかったそんなことが少しずつ気になるようになった。俺と暁はずっと一緒にいる訳ではない。ただなんとなく2人でいる時があるだけだ。金木犀の香りが至る所でしている。秋になってもその関係は変わらなかった。学校が終われば暁は飲み会やコンパに参加し、俺はバイトに行く。この関係が俺は嫌いではなかった。お互いに干渉しすぎなくて居心地がよかった。
「今日はどこ行くの?」
いつもと同じように俺は暁に聞いた。最近は毎日のように鉄道同好会に行き、路線の話や電車の凄さを披露してくる。今日も行くのかもなと思ったが、一応俺の日課なので聞いてみた。返事は思っていたものとは全く違っていた。
「今日はどこも行かないよ。」
「へー、そうなんだ・・・え?」
鉄道同好会に行くんだと楽しそうに話す暁を想像していたので不意をつかれた俺は立ち止まった。俺が立ち止まったことに気付いているはずなのに、暁は立ち止まらずスタスタと歩く。その背中は少し寂しげに見えた。
「暁にしては珍しいな。まぁそんな日もないとな。」
俺は小走りで暁の横に行き、言った。これ以上何も聞くなと言っているような雰囲気が暁にはあった。初めてこいつの怒ったような顔を見た。俺がいたことを一瞬忘れていたのか、暁ははっと我に返り、俺の方を見て、へへ。と笑った。いつもとは違う寂し気な笑顔だった。風が少し冷たい。
その次の日、暁は学校を休んだ。いつも遅刻してでも行くはずの暁が、だ。連絡もないので、さすがの俺も心配になり、暁に、”おーい、生きてんのか?”と連絡した。その日、返事は返ってこなかった。
暁が学校を休んだ次の日、朝っぱらからドタバタとアパートの階段を上ってくる音がした。すぐ、ドンドンっと扉が雑にノックされる。どう考えても俺の部屋だ。借金の取り立てをされる覚えはないぞ、と思いながら扉に近づくと、
「大修、起きろよ!!」
聞きなれた声が言った。すぐさま扉を開ける。ヒヤッとした空気が一気に入ってきて鳥肌が立った。夜と朝をまたぐ瞬間みたいな空だった。時計を見なくても分かる。まだ7時前だ。
「うるっせーよ!!何時だと思ってんだよ。どう考えても早すぎんだろうが!!」
出来る限り小さい声で怒る。
「寒いから家ん中いれて。学校行くまで寝させて。」
そこにはいつもと変わらない、ニヘヘと笑う顔の暁がいた。その顔に脱力して、もう起こる気は失せる。寝ぼけまなこでぼーっとしている俺の返事など聞かずに勝手に玄関で靴を脱いで部屋に上がり、ベッドにボスンと倒れた。ものの3秒で暁は深い眠りについた。
「のび太くんかよ。」
と、突っ込んでみた。当たり前だが返事はない。よく見ると2日前の服と同じだった。
何をしていたのだろう。気にはなったが何となく暁には聞けなかった。俺もまた眠くなってきたのでそのまま二度寝をする。
夢をみた。2日前にいなくなった暁はもう戻ってこなかった。そんな夢を。俺は必死で探していた。どこを探しても見つからなかった。いや、探し尽くせなかった。暁の家も暁がよく行く場所も、俺は何も知らない。
次に起きると、もう行く準備の整った暁がいた。目が覚めてこいつの顔を見て、安心している俺がいた。と、同時に思った。俺はまだ暁をよく知らない。どこでどう育ったのか。兄弟姉妹はいるのか。昔からこんな風に明るい性格だったのか。俺は何も知らない。この出来事以降、俺は暁のことをもっと知りたいと思うようになった。しかし、深入りした話はこれまで一度もしてこなかった。暁は一緒にいてよく喋り、よく笑う。人の話もよく聞く。だけど一度も俺の昔の話を聞いてこないし、自分の話をしようとはしなかった。言いたくないのだろう。今までは気にも留めていなかったそんなことが少しずつ気になるようになった。




