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1章 -don't know-

初めまして。この作品に興味を持ってくださり、ありがとうございます。この作品が私の初めての小説になります。誤字脱字やご意見ご感想がありましたら、お気軽にご連絡ください。

皆さまの生活のほんの隙間のお時間のちょっとした楽しみにでもなってくれていたら幸いです。

それでは。

1章 -don't know-


 目が覚めた。そこは真っ暗な闇の中で、僕は今どこにいるのか一瞬分からなかった。

 ベッドのシーツはおねしょをしたみたいにびっちょりだ。気持ち悪い。

 枕の横に置いていた携帯を、目を細めながら見る。午前2時25分。夜中の12時に寝たばかりなのに2時間でこんなに嫌な夢がみれるのか。そんな風に思ったのに、僕は夢の内容を覚えていなかった。

           

                        


 リンリンとけたたましくなる音で目が覚めた。

 「さみい。」

 汗をかいたから余計に体が冷えていた。

 一度夜中に目が覚めて、気づけば二度寝をしていたらしい。夢はもうみなかった。時計を見ると8時。

 「やば、遅刻だ。」

 そうは思っても、軽々と身を起こすことは(いま)だに出来ない。いくつになっても朝はだるい。

 ゆっくりと体を起こしていると、外からドタバタとせわしない足音が近づいてきた。

 「おうい、生きてんのか?」

 ドンドンと強く音を鳴らす。いつも思うが度が過ぎる。

 「今起きて着替えてるとこ。先行ってていいぞ。」

 俺もいつもより少し張った声でそいつに言う。

 彼はそれでも先に行ったことは一度もない。俺の言葉が聞こえていないかのように暁は扉の向こうで話しかけてくる。

 「何回も電話したんだぞ。生きてるか心配になって走ってきちゃったよ。」

 着替えながら携帯を確認する。本当だ。(あかつき)から4回も着信がきている。

 全然気づかない位熟睡していたのか。そういえば嫌な夢から覚めた時ひどく疲れていた。

 着替えてサッと顔を洗い、水を一杯飲んで支度は終わりだ。これが俺のルーティン。

 よし、と特に気合いをいれるでもなく、声を発してガチャリと外に出る。大学に入って3か月、もうすでに見飽きた顔がだるそうにこちらを見ていた。

「おす。大修さ、最近遅刻しすぎじゃね?まだ1年目なのにそれはやばいだろ。今のうちに単位とっとかねーと4年になって遊び尽くせなくなるぜ。」

「おす。お前に言われたくないよ。暁はもうすでに遊びまくって遅刻してんじゃん。俺は金がないからバイトしないといけないの。」

 暁は、俺はいいの、と言いながら子供っぽい顔でニヘヘと笑った。


                      


 暁と出会ったのは大学の入学式だった。

 眠いなあ。大学生になってもこの行事は好きになれない。知らないおじさんたちの無駄に丁寧なしゃべり、形式的に繰り返される祝福の言葉たち。

 早く終わんないかなあ、と半分寝ながら思っていた。

 体育館の外ではシトシトと湿った音がしていた。

「だるいなあ。」

 横でそう言う男の髪は赤かった。

 パリピに縁のない俺はなるべく関わらないようにスルーした。俺は聞いていない。俺に言ったんじゃなくてただの独り言だ。そう自分に言い聞かせる。

「君もそう思うよね?だるくね?」

 俺の肩をつついてくる。さすがにもう無視は出来なかった。

「そうだな。」

 軽い返事だけで終わるつもりで男の顔をちらりと見ると、そいつはニヘヘと屈託なく笑った。その笑顔を見ると、俺はなぜだか胸がざわざわとした。

 不思議な感覚だった。切なくて泣けてくるような、どこか懐かしいような。

 初めて会ったはずなのに、会った事があるように感じて、あぁ、俺はこいつと会うためにこの大学を選んだのかと思った。

 今思えば笑えてくるが、その時はなぜか確信していたのだ。あの感覚は初めてではない。

 どこで誰に感じたのか、どうしても思い出せない。

 それから連絡先を交換し、一緒に昼ご飯を食べたり、たまに俺の家で静かに本を読んだりする仲になった。

 暁は今考えてもやはりパリピだと思うが、小説が好きだったり、授業を真剣に聞いていたりするところを見ていると、別人に見える。本当は俺のまだ知らない暁がいるのかもしれない。

 ただの、俺のパリピに対する偏見なのかもしれないが。


 誰とでも隔てなく接し、身軽にどこまででも飛んで行こうとする暁に、実は少し憧れている。

「今日はどこ行くの?」

 いつも学校帰りにどこかに遊びに行く暁を見ていたら、それを聞くのが日課になっていた。

「んーと、今日はね、、、テニスサークルの飲み会があるらしいからそれに行く、かな。お前も来たら?」

「俺はいいよ、バイトあるし。」

「バイトばっかするから寝坊するんだろ。身が持たないぞ、息抜きもしないと。」

 母親みたいなことを言う暁の顔は本当に心配しているようで、眉を下げて真剣な目でこちらを見ていた。

「心配すんなよ。ただ朝が弱いだけだ。俺は暁が遊びすぎて身が持つか心配だよ。」

 嫌味を少し込めて言ってみると、そんな嫌味へでもないというような顔で嬉しそうに暁は笑った。


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