表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シルバーバレット ~蒼穹の撃鉄~  作者: アスタリステラ
4/5

衝突

感想ください

「いいか、今から見たこと絶対に誰にも言うんじゃねえぞ?もし話したらお前の首が胴体からサヨナラすることになるからな。覚えておけよ、アタシらのボスは秘密が漏れることを決して許容しない。そして、アタシの情報が漏れてるってことは裏切り者がいるってことだ。お前が誰かは知らないが、少なくとも裏切り者の手がかりだ。お前は何もわかってないように振る舞っているが、たまたまアタシの拠点の一つ隣に住んでたやつが、アタシのことを知ってたってことがそもそもおかしいんだ。偶然って思うことは十中八九作為だ。

偶然の裏には必ず誰かの意図がある。だから、お前が関係者だろうと部外者だろうと、お前自身もう引き返せないってことだ。ご愁傷さまだが、諦めて受け入れろ。ときには今までのすべてを捨てなきゃいけないことも、まぁ、人生ってやつだな。アタシからすればよくあることだ。」


彼女は車の運転をしながら淡々と喋っていた。

明らかに未成年で、免許を持てるような年齢ではない。

どうみても無免許運転だった。


「話が漠然とし過ぎていて君が一体何を言っているのかよくわからないんだけど、これから俺はどうなるんだ?一体何をされる。」


「さぁな。アタシはただ連れて行くだけだからな。知ったこっちゃないさ。場合によっては自白剤でも使われて拷問されるんじゃないか?アタシはそういうのは専門じゃないからな。詳しくは知らん。」


そう言うと彼女は高層マンションの駐車場の入り口の方へと車を移動させた。

なんて無責任な女だと思いながらも、その目を惹く美貌を前にしては何かを言い返そうにも、溜息が出るばかりだ。

しかし、何も言わなければ沈黙が続くばかりで、これからを思うと気が重くなり、今度は口を開かずにはいられなくなった。

「俺は今までなんの犯罪とも関わりもなく、平和に生きてきたんだ。君のことだって、たまたまヤグザの男に尋ねられただけなんだ。本当に無関係だし、これからも無関係であり続けたいんだ。確かに、非日常への憧れとか、ありがちで馬鹿なことを考えることはあったけど、それでも俺は君たちみたいな人たちと関わるのはゴメンだ。」

そう言っても彼女は無言で何も答えずに、車両を地下駐車場の入り口へ潜らせた。

それから、車庫の中へと車の位置を合わせると、パーキングエリアの車が仕舞われるときのように、車を止まったまま左の格納庫へと動かされた。

暗闇の中で、格納されに運ばれていることだけが分かった。

彼女はため息をついてから、またため息をついた。

「君たちみたいってなんですか。私だって犯罪と関わらずに生きてきましたよ。平和に両親と、お姉ちゃんと四人で幸せに暮らしてた。こんな世界想像もしていませんでしたよ。」

彼女は先程の言葉遣いとは打って変わって、非常に丁寧にそういった。

暗闇で表情はよく見えなかった。

「あんなことさえなかったら、私は今だって幸せに、何も苦しまずに、あの場所で家族四人で暮らしていたんですよ。」

そこで鼻をすする音が聞こえた。

「貴方ばかりが、不幸に巻き込まれて、望みもしない場所へと連れ去られるわけじゃありませんからね。」

そういったきり彼女は何も話さなかった。

車庫に格納されたのか、運ばれていた車の動きが止まった。

すると、一面にライトが付き始め、車が3体ほど並走できそうな通路が見えた。

彼女はエンジンをかけ直すと、その通路に向かって、アクセルを踏み、車を走らせた。

「いいか、今のは忘れろ。」

彼女の目をよく見ると、赤く、なきはらしたような痕跡があった。

どうやら、彼女も彼女なりの事情を抱えているらしく、自分ばかりと嘆いた自分がなんだか恥ずかしくなった。

「分かった。忘れるよ。ごめん俺が悪かった。」


「謝るなら最初から言うんじゃねえよ。このヘタレ陰キャがよ。」

言葉はあたり散らすようで、しかしその眼には悲しみを拵えているようだった。

感想ほしいです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ