不運
久々に書いた
それにしても、あの緋色の撃鉄と呼ばれた写真の女性は何者なんだろうか。ほんの数秒目にしただけであるのに、その容姿は目の裏に焼き付いたかのように離れなかった。
あの黒スーツの男とはどういう関係なんだろうか。
仕事中だというのに俺はそんなことばかり考えてしまった。
そんなどこか上の空であった俺をバイト先の店長は心配したのか、今日のところは帰ったほうがいいと言われ、俺は半ば無理矢理に帰ることになった。
帰路についてもやはり変わらず、俺はあの女性のことが気になって仕方なかった。アパートの鍵を開けるためにかばんの中からキーチェーンを取り出しているときさえその有様で、がさがさと鍵を探っているのに、なぜか一向に取り出せなかった。
何度も探っているうちに、見つからないことを不審に思い、俺は鞄の中身をひっくり返して確認した。
やはりない。鞄の中のポッケももう一度確認するが、どこにも俺の家の鍵は見当たらなかった。
「落とした……?いや、カバンから出してないな。」
うーん、と俺は唸り声を上げながら今日の自分の行動を振り返ったが、やはり鍵を無くすような出来事があったということはない。
しょうがない、管理会社に電話をして鍵を開けてもらうか。
俺はそう考えてスマホを取り出したのだが、充電が切れて使えなかった。
「まじか!」
赤色のバッテリー表示を見て俺は天を仰ぐようにして首を後ろに傾けた。
「鍵かけ忘れてたり、はしないか。」
ドアノブをカチャカチャと揺さぶってみたが、やはり鍵はかけられていた。
とりあえず、眼の前に散らばった荷物を鞄の中にしまった。
それから、俺は隣の部屋のチャイムを鳴らした。
隣の部屋に住んでいたおばちゃんとは顔を合わせれば話すくらいの中で会ったし、電話くらい貸してくれるだろうと俺は考えたのだ。
「ごめんください。隣の宵星です。」
インターホンに声をかけて、しばらく経ってでてきたのは俺の知る隣人の顔ではなく、俺よりも少し年下に見える少女だった。それほど歳が離れているわけでもないのに随分と幼く感じたのは、少女の顔に見覚えがあったからだろう。
少女の顔は男に見せられた写真の女によく似ていた。
そう、確か名前は…。
「……緋色の撃鉄。」
思わずそう呟いた途端、少女の気怠げな顔が一瞬の間を置くこともなく引き締められた。
失言をしたかもしれないと思う頃には、俺は少女の部屋へと引き込まれ、床へと押し倒されていた。
少子は俺に覆い被さるような体制で腕を押さえつけ、その華奢な体で俺の身動きを封じた。
「アンタ、その名をどこで知ったの?」