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前編

楽しく書けたお話です。

よろしくお願いします。

なんだか知らないが勝手に“聖女”認定されて魔物に攫われましたが、おかげで三食昼寝つきの生活が送れてます。

専属の世話係とかついてまるでお姫様になったかの気分ですよ。

待遇も良く、欲しいものも直ぐに用意されるこの生活。今までの生活と比べたら天国に来たかの様ですよ。

命の危険も今のところはないみたいだし、あ~…一生、この生活続かないかな~と、今まで数えるほどしか食べた事のないケーキを毎日貪り食って、一日ゴロゴロする食っちゃ寝生活も早三か月。


太・り・ま・し・た!!


当然ですよね!?

だって動いてないもん!

なのに今までよりも格段に栄養価の高いものを食欲の赴くままにガツガツ食べてたもん!

そりゃ太るわ!!

する事も特にないからベッドでゴロゴロしてただけだもん!


いやね、私だってこれはヤバいかもな~と着替えるたびに、お風呂に入るたびに思ってたわけですよ。

碌な栄養も取らず、昼夜働きづめでカツカツの生活を送っていた時は周囲で年ごろの少女やその母親の世代がする「この頃太っちゃって~」「ダイエットしなきゃ~」とかいう会話を鼻で笑っていたというのに!

いいですね~、太る余裕があって。こっちはそんなものないわ!とか心の中で毒づいていたというのに!

そんな悩みを抱えてみたいわ~!とか生活に苦労していない嬢ちゃんどもを妬みながらもっと太ってしまえと呪いをこっそりと掛けていたというのに!

今なら彼女たちの気持ちがわかる。そして土下座をして回っても良い。

それくらいに体重が増えるというのはメンタルに来るものだと知った。…知ってしまった。


最初は誤魔化しが聞いていた。

食べたばっかりだから~…とか、服を着てれば目立たないし~…とか見て見ぬふりをしていた。出来ていた。

しかし今はダメだ。これはない。

あばら骨が見えるほどに痩せていた体はあっという間に標準体型を通り越してぶくぶくとぜい肉を付けていた。腹がたるむというおばちゃんの悩みが良くわかる。

体重とか量ってないけど絶対に増えた。5キロ…いや、もしかしたら10キロくらい増えてるかもしれない。怖い。めっちゃ怖い。体重計に乗れない。ここにそんなものはないけど。

だからこそ目を反らしていた、いられた。

鏡に映る自分の顔が丸みを帯びてきている事も、服を着替える時に目に映る膨らんだ腹にも!いやいや、今まで太った事ないし…と自分を誤魔化してきた。

少し服がキツクなったかな?と疑問を抱けば次の日には新しい服が用意されており、ピッタリより若干緩いそのサイズにやはり気のせいなのだと安心していた。…今ならわかる、あれは巧妙な罠だ。

太ってなどいないと安心させる為の罠だ。間違いない。


さて、では何故そんな甘やかされた生活の中で自分が太った事を認めたかというと…私を攫ってきたボス(人型・男性)が私(聖女)を救出する為にいわゆる“勇者”が派遣されたという情報を流してきたからだ。

「まぁ勇者がここまで助けに来る事など万が一もないが…来れたとしたら怒りだすだろうな。

いくつもの危機を乗り越えて救いにきた“聖女”がこれでは…偽物だと疑われても仕方あるまい」

とやられ役のテンプレを吐きつつ、しっかりと人を貶め高笑いをして去っていった。

確かに私は美人ではない。

おしゃれをする余裕もない生活だったので地味な上に胸もない、愛想もないので異性からのそういった評判は全くない。浮いた噂は一つもなかった。

どこどこの○○がお前の事好きだってよ。とかいう噂もされた事がない。そもそも男友達もいなかった。…女友達も数えるほどしかいない。

しかし。

しかし!!

決して不細工ではないしデブでもない。…なかった。

助けに来た勇者が“聖女は美人”という幻想を抱いていたとしても、露骨にガッカリしたとしても。

常識を持ち合わせた人間ならば当たり障りのない言葉を添えて、元居た町か、勇者を派遣した国に送るくらいはしただろう。でないと報奨金も出ないだろうし。

だがしかし!

そこで出てきた“聖女”がデブならどうだ?

痩せていれば人並みの顔でもデブならブスと表現するに似つかわしくなっているかもしれない。自分の顔なのでそうは思いたくないけども!

鏡に映る自分から目を反らしたいのを堪えて見れば…ここに来る前とどっちがマシかは、ちょっと究極の問題のような気がするが悲壮感は間違いなく前者だ。

痩せててみすぼらしい服を着ている少女と、太ってて豪華な服を着ている少女。

同情心が湧くのは間違いなく前者だ。情状酌量の余地が与えられる可能性がある。

ボス(人型・男性)の言を信じるなら勇者は旅立ったばかりだ。

ここまで来れるかは確かにわからないが(会った事もない人物を信じられるわけがない、おまえ誰だよ状態だ)猶予はきっと数か月単位である。

その間に元の体重…までは無理でも人に“デブ”という感想を持たせない程度に痩せなければいけない。急務だ。

しかし今までダイエットというものに無縁だった私にはその辺の知識はほぼない。

りんごダイエットとか、人参ダイエットだとか、炭水化物抜きダイエットだとか。そういった極端なものと運動をする。というくらいしかない。

ご飯を我慢するという発想はない。

貧乏人は与えられたご飯は残せない。勿体ないとつい限界を超えて食べてしまう。…これもきっと罠だったに違いない。

物理的に入らない分はさすがに残したが、豪勢かつ美味しい料理を残す時は罪悪感で胃がキリキリした。

別な意味でもキリキリしてたけど。

元からあまり食べられない生活だったので胃が小さかったのは幸いだった。

動いてないからか、一食の食べる量自体は減っているかもしれない。しかし間食が増えた。それも高カロリーのものだ。

ここに来る前の私の生活は基本は一日三食だったが間食はしていなかった。そんな暇はなかった。

まず夕方から酒場に給仕のバイト。途中の食事は賄いで済ませる。夜中に帰宅してひと眠り。朝に起きだし軽く口に入れる。家事を済ませてから出勤までの時間は針仕事の内職。出勤前にまた少し腹に何かを入れ…というルーティンで暮らしていた。

職場に酒場を選んだのは同じ給仕の仕事でも昼間に空いている店よりも給料が良く、昼間に内職を済ませる事で灯り代の節約が出来たからだ。

ほぼほぼ働きっぱなしで栄養はほぼ賄いで補っていた。私が生活に困っているのを知っている優しい主人はそっと賄いを大盛にしていた事をしっている。ありがとうおやっさん、間違いなく私の生命線はあの店だった。

生活費が足りない時は出勤前の食事を削ったりしたし…。

なぜここまで働き詰めかというと借金があるせいだ。辛うじて正規の借金取りから借りた金なので毎日毎日馬車馬の様に働けば利息+αを返す事はギリギリ可能だった。

終わりが見えない返済生活、一発で返す当てがあるという借金取りの甘言に乗らなかったのはその当て(・・)がいわゆる娼館に売られると分かっていたからだ。

そこが何をするところか知っている身としては避けたいのは当たり前だし、相手も美人ではない私を売ってもあまり元が取れないと判断したのか無理強いをされなかったのが幸いだった。

返済が滞ったら容赦なく売られただろうけど。

だからこそ時に食費、その他を削っても返済をし続けなければいけなかった。

逃げる事も考えたが小娘が一人で…と考えると現実的ではない。捕まったら今度こそ売られる。それは最終手段にとっておくべきだといざという時の為に計画だけは練っていたけど。

計算上は五年もすれば完済できると、その時は既に結婚適齢期は過ぎているだろうけど自由にはなれると…そう信じて突発のバイトを熟しつつ健気に、必死に生きている私に人生最大のチャンスが訪れた。

なんでも私が生まれた年に“聖女”が生まれるという予言がされ、今年に覚醒するという内容の御触れが国中に発布されたのだ。

該当するものは最寄りの教会で検査をしてもらうこと。との王命により私も検査をしに行く事になった。

もしも“聖女”認定されれば国に保護して貰えるので借金はチャラになり、ここまであくせく働く事もない!と夢は見たが自分は聖女にはなれないだろうとも思っていた。

それよりも教会に行って検査をすれば一回分の食事が提供されるという事に大きく心を動かされた。

なぜ食事の提供をするのかはわからない、もしかしたら集まりが悪かったのかもしれない。

事実はどうでもいいが一食分の食費が浮けば、また、何回か別の教会に検査にいけば古着の一着でも買えるぐらいお金を浮かす事が出来るかもセコい期待に胸を膨らませた。本来の買い替えの時期はとうに過ぎていたが服を買う余裕がなかった。

たぶん教会の食事は美味しくないが腹が膨れればそれでいい。

そんな打算を胸に教会に赴けばまさかの大当たり。

小さな町の教会なので誤判定はありえる、王都の大きな教会まで行って本格的な検査を…という形になった。

借金はとりあえず町が立て替えてくれる事になった。

聖女でなかった場合は今後は町役場に返す形となるが、払う利息が大幅に減るので聖女でなくとも私は構わなかった。

一応聖女候補という事でそれなりの待遇で王都まで送って貰える事になった。

私の格好があまりにもみすぼらしいという事で新しい服まで買ってもらえた。

ここで終われば話はハッピーエンドで終わる。

聖女でなくとも王都でラブロマンスの一つでもあれば物語としても文句なしだ。

しかし私にとっては不幸な事に私は本物の聖女だったらしい。

王都に向かう道中で魔物に攫われ…今に至る。

偽物の可能性もあると言ったのだが、魔物側には何故か確信があるらしく私が“聖女”だと認定された。

最初は腹が立ったが、想像もしていなかった高待遇によりもう一生ここで暮らしたいとすら思った。

最終的に私をどうするつもりなのかは知らないが、一年後くらいに殺されてもいいやと思えるくらいに贅沢を貪った。


そ・の・結・果・が・こ・れ・だ・よ!


まだブクブクと太ったという表現はせずに済むが、このまま怠惰な生活を送れば時間の問題。

この辺りで一念発起をして痩せなければいけない。

食事のクオリティはあまり下げたくない。こんな食事はここにいる間しか出来ない。

元の生活に戻った時に舌が肥えている事で苦労しそうだが大丈夫、暫くすれば戻る。ジャンクな味はあれはあれで美味しい。今でも偶に食べたくなる中毒性もある。

食事制限が出来ないのなら運動をするしかない。

まずは腹のぜい肉を落としたいので…腹筋をすればいいのだろうか?

どうせ運動をするのなら建設的な事をしたい。むろん筋トレは必要だろうけど。

せっかく魔物の本拠地にいるのだから剣の稽古とか出来ないかな?

チンピラをあしらえる程度の力を付ければ酒場で働くのに役に立つし…良し、世話係(そう、世話係まで付いているのだ、今の私には!)に相談しよう。


目標はここに来る前の体重に戻る事!

元々がどれくらいの体重だったか知らないけどね!


今話は状況説明に費やされたました。

次回は14:00くらいに更新予定です。

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