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「僕のため?」と小唄は言った。「そう。君のためさ」と古代魚は言った。古代魚はこほん、と小さな咳払いをした。そして今までのような明るい表情ではなくて、とても真剣な表情になって小唄を見た。
「いいかい。よく聞いて。君はこれからこの暗い海の中で一人ぼっちになるのが嫌だって言ったね」
「うん」と小唄は古代魚に相槌を打った。
「確かに僕がいなくなれば君はこの海の底で一人ぼっちになる。一時的にね」「一時的?」「そう一時的」一時的、と小唄はその言葉を頭の中で繰り返した。
「迎えが来るんだ。君を迎えに一人の『女性』がこの場所にやってくる。その女性はとても知的で清潔で美しい姿をしたとても魅力的な女性のはずだ。でも、君はその女性の誘いに乗ってはいけない。その人について行ってはだめなんだ。その女性の提案を君は断る必要がある。これはある意味、君の運命なんだ。なぜなら君はきっと、僕に出会ってこの話を事前に聞いていなければ、その女性の誘いを断るということはしなかったはずなんだからね。だからこれは奇跡でもなんでもない。当たり前の話なんだ。君は自信を持ってその女性の提案を断るべきだ。それが君のやるべきこと。君の本当に進むべき道の先なんだよ。僕の言っていること、理解してくれるね?」