表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/48

「そうなんだ。君はすごいね」と古代魚は言った。褒めてもらったことは素直に嬉しかったのだけど、小唄は古代魚の言っている言葉の意味をよく理解することができなかった。

「あそこを見てごらん」と古代魚は言った。古代魚の見上げる先にあるものは彗星だった。「白色の彗星だね」と小唄は言った。「彗星をもっとよく見てごらん」と古代魚は言った。小唄は古代魚に言われた通りに、二つの目を凝らして彗星をじっと注意深く観察してみた。すると彗星の周りに、なにやら黒く小さな、たくさんの得体の知れないものたちが集まっていることに気がついた。

「あれはなに?」と小唄は言った。「魚たちさ」と古代魚は答えた。

 魚たちはいくつかの無数の個体が集まった群れをなして、空に浮かぶ彗星と一緒に暗い闇の中を飛ぶようにして移動していた。それはまるで本当の海の中を泳ぐ一匹の大きな魚に無数の小さな魚たちがまとわりついて、ある一つの集団として泳いでいるような光景だった。小唄は昔、水族館の中で見た、そんな魚たちの姿を頭の中に思い浮かべていた。

「君も、あの中に行っちゃうの?」と小唄は言った。「そうだよ」と古代魚は言った。小唄はそんな古代魚の言葉を聞いて、心が悲しくなった。なぜなら小唄はもう古代魚のことを自分の友達だと勝手に思い込んでいたからだ。

 小唄が喋らなくなると、古代魚も喋らなくなった。だからしばらくの間、小唄たちは無言になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ