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 小唄の体は無事だった。光の洪水も収まり、獣のような咆哮も聞こえない。小唄はそっと目を開けた。すると小唄の眼の前に一台の客車が止まっていた。しゅー、という蒸気の漏れる音がして、小唄の目の前にあるドアが開いた。

 小唄はようやく事態を把握した。どうやら小唄が座っていた白いベンチは見えない駅の待合椅子だったようだ。それは偶然ではない。きっと古代魚が、小唄のために、小唄をこのベンチに座らないかと勧めたのだろうと小唄は想像した。

 小唄は古代魚との約束を思い出して、唾を一度飲み込むと、ゆっくりと白いベンチから腰を上げて立ち上がった。小唄の足は二本とも震えていた。その両足だけではなくて、緊張で小唄の心も震えていた。でも小唄は歩き出した。そしてゆっくりとドアの横にある金属製の手すりのようなものに捕まりながら、その客車に乗り込んだ。

 小唄が客車に乗り込むと再びぶおー、という獣の咆哮がした。がたんと地面が揺れ、小さな加速度を体に感じた。列車が走り出したのだ。

 この場に古代魚がいてくれたら、どんなに良かっただろうか、と小唄は思った。でも古代魚はいない。古代魚は小唄とさようならをして、遠い遠いところに旅立っていってしまったのだ。……だから、小唄に残されているものは古代魚との約束だけだった。小唄はその約束を絶対に果たそうと心に誓っていた。それが古代魚に対する小唄にできる最大の敬意だと思った。

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