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不可思議なエルフの考察

作者: おにくさま

大森林世界には多くの種が暮らす

余り好まれぬ言い方をすれば『新参者』も多い

《館》の住民であるヒバナなどもそうだ

まあしかしこれからする話はヒバナとは全然関係ない


いや、少しはあるか


私の種は『人間』

種の歴史は浅い

学者によれば『人間』とは『人の様な者』と言う意味らしい

その点で言えば『魔人』などと言う大層な名の種が羨ましく思える


話が逸れてしまった


大森林世界の中で種として一番の新参者をご存知だろうか?

それはエルフの血筋の中の一つである『シジュウ』である

人間の様な見た目のエルフと言えばお分かり頂けるだろうか

彼らは正確には「シジュウ=スズ=マイ」と言われる血族から始まっており

それが正しい血族名なのだが

知らぬ者も多いだろうから少し説明する


エルフ種から見ると人間種の成人女性の膨らんだ乳房は我らから見た肥満と言うか、だらしなく弛んだ腹や二の腕と同様に見えるらしく

どこかで一度くらい見た事があるのではないだろうか

エルフが人間女性の胸をつついたりしている姿を

アレは私達が二の腕を摘むようなものなのだ

そんな彼らの中にあって『シジュウ=スズ=マイ』の血族は人間の様な見た目のエルフとして異彩を放っている

個人的な事を言わせて貰えば最高に好みだ


ではそんな彼らはどの様にして成り立ったのか

調べれば簡単な事だ

初代であるシジュウ=スズ=マイは人間として産まれたがエルフとしてその生を全うしたからだ


人間として産まれ

エルフとして天寿を全うした

だが何故そうなったかは開示されておらず理由もわからない


彼女の母は《館》の長であり主人様の二人目の僕であるスズ様だ

エルフの名の慣習からするとスズ様のその母はシジュウなる女性という事になるがコレが誰かは分からない

《館》の方言で『おかあちゃん』と言う意味らしいが

調べたところ一部主人様にお仕えする歯車にシジュウと呼ばれる物もあるがコレは関係あるまい


ではシジュウ=スズ=マイの母であるスズ様に何か秘密が有るのだろうか

彼女は主人様の僕である以外は特に何もなく、ごくごく普通の『人間』だ

《館》が成り立ったその日に主人様にお仕えし今日に至る

ワンワン様や今は亡き翼人達ですら主人様にお仕えするまで幾許かを要したが、スズ様は主人様を一目見ると直ぐ様膝をつきお仕えしたいと願い出たのだ


まさに『見る目』を持っていたのだろう


だがスズ様は人間だ

産んだ子がエルフになる事はない


となるとシジュウ=スズ=マイの父に何か秘密が有るのだろうか

彼女の父親はワンワン様である

スズ様とワンワン様の仲睦まじい姿はよく知られているし毛人と人間の子など珍しくもない

特に母が人間ならば産まれる子は人間だ

違いといえば精々八重歯が目立つ程度


記録によるとワンワン様は産まれたシジュウ=スズ=マイを見てやはり毛無かと呟いたと言う

コレはエルフ王セン様の書かれた『館の魔法使い』と言う本に書かれている


ああ、この本は余りお勧めしないよ

どこもかしこも笑い話ばかりでためにはならない


また話が逸れた


僕同士の子であれば人間であってもエルフの様にいきることもあるのではないか

そう考えもしたがコレは真向から否定された


シジュウ=スズ=マイの母であるスズ様にお話を伺った時のことだ

娘のことは私がとやかく言う事とではないし答えない

それにしてもあなた方は私と兄の事をそう言う目で見ているのかと落胆されてしまったのだ

あなたに姉が妹がいるならわかると思うと言われてね


セン様の書かれた本にもマイは血の濃い子だと書かれているので私はすっかりお二人の子だと決めてかかっていたのだが、言われてみればスズ様とワンワン様の血は合わさっても濃くはならない

いやもちろん濃いのは僕同士の血が合わさりと言う意味だと言いたいのだが


では「濃い」とは?

ここでロクな本を書かれないエルフ王の話をしよう

彼女もまた「濃い」のだ


血が煮詰まるほど生きていると言う意味ではないよ?


彼女の母は彼女の姉でもあったのだ

十万年以上前の話だがそれが喜ばれた時代の話だ

今ならそんな男は異常性欲者として更生施設送りなのだが


エルフ王の書かれた本にも書いてある

あの頃の《館》は女ばかりで男といえばワンワン様くらい

あとはたまに遊びに来るキィの所のジャリくらいだと


これも調べて見たのだが驚いた

この“キィの所のジャリ”とやらがシジュウ=スズ=マイの後の夫なのだそうだ


ああ、キィと言う人はセン様のご友人でこの当時の醜い盾のお一人、『館の魔法使い』もこの方を偲んで書かれた本なのだよ

スズ様もキィ様が亡くなられた際のセン様の落ち込み様は見ていられなかったと言っていらっしゃった


また逸れてしまった

セン様の本にも書かれている

キィの所のジャリはスズ様ととても仲が良いと


私は思い切ってセン様に手紙を書いて見た

スズ様とキィ様の所のジャリの仲が良いとはそう言うことかと

驚いた事に返事は本人の口から直接聞けたよ

ある日私の所にセン様がひょっこり現れたのだ

ああ、本当に見た目は子供だったね


何故それが知りたい?

そう聞かれたので正直にお話しした

シジュウ=スズ=マイについて調べていると

セン様は笑ってマイの父親はワンワン様だと答え、それより先は無しだと釘を刺された


それで十分

シジュウ=スズ=マイの父はエルフ

しかもそのエルフは己の娘を妻としたと言う事だ


だがそれで人間の娘がエルフになるのか?

それとも実は生まれつきエルフだったのか?

誰かがその血に眠るエルフの生を何かの力で呼び起こしたのか?


おそらくそうなのだろう

では誰が?

歯車治療や回復浴槽を使った似た様な事例はいくつか見受けられる

見受けられるがコレは同一種障害者が受けるもので彼らの名誉のためにもそれは深く深く厚く厚く守られているしそれを暴く事は大森林世界の秩序を見出す事になる

なのでコレは私見ですらない私の感想だ


二度にわたりエルフの血を

しかも同じ血をその身に宿せばそう言うこともあるのだろう

私が諸君らに何を言いたかったかと言えば何かを暴く事は大変意義深い事なのだ


大森林の法に触れぬ限りならね


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