ー水曜日と木曜日ー
毎週、水曜日と日曜日に、家から最寄りのスーパーのポイントが三倍になる。財政事情の厳しい大学生の僕は、基本的にいつも、このタイミングで買い物をしている。
午前十時。いつものように僕は、スーパーの食料品売り場にきていた。一週間の予定や、献立を考えながら買い物をするこの時間が、僕は嫌いではない。
牛乳や卵など、日常的に需要のあるものをかごに入れ、それから野菜を吟味する。少し考え、今日は肉じゃがを作ることにした。一通りの材料をかごに入れ、レジで会計を済ませる。
帰り際、ふと日用品コーナーを見ると、すでに秋物の洋服のセールが始まっていた。隅のほうに、こじんまりとした感じで、手持ち花火が置いてある。
僕は少しの間それを眺めていたが、なんとなく衝動に駆られて、一番小さな手持ち花火のセットを購入した。自分の行動を不可解に思いつつ、僕はそのやけに控えめな花火とともに、店を出た。
家に帰って作った肉じゃがは、まずまずの出来だった。わりによく作る料理なので、そろそろクックパッド先生の手を煩わせずに作れるようになりたいが、その域に達するにはもう少しかかりそうだった。僕は日本語もできるし目盛りも読めるが、物覚えはいいほうではない。
昼食をとると、その日の午後は、本を読んだり動画を見たりして、ぼんやりと過ごした。
京都の鴨川というのは、二つの河川が合流した大きな流れの呼称である。もともとそれは高野川、賀茂川という別々の河川であり、その二つが合わさるところには、Y字型の流れができる。そのYの、逆三角形になった陸地の部分は「鴨川デルタ」と呼ばれ、近隣の住民、特に河川敷でひと騒ぎしたい小学生や大学生に親しまれていた。
この日の夜、僕はその鴨川デルタに、ビニール袋を携えて出かけた。中には蚊取り線香とライター、そして昼に買った控えめな手持ち花火が入っている。周囲に人はまばらで、花火をしている人はいない。友達を誘うことも考えたが、一人花火は一人でないとできないので、それはやめた。蚊取り線香を焚き、セットから取り出したろうそくに火をつけ、平らなところにそれを立てる。
始めてすぐに、何とも言えないわびしさでおなかがいっぱいになった。もう少し感傷のようなものがあると期待していたが、手持ち花火の炎はただ、一人である、という事実を、明るく照らし出しただけだった。何本か終えると、今の状況が次第におかしく思えてきたので、写真を撮り、彼女に送ることにした。
「一人で花火」
「さみしい笑」
すぐに返事が来るはずもなく、僕は淡々と花火を続けた。基本的には単純な作業で、途中でいっそ花火を地面に突き立てて、昨日先輩から聞いた死体の供養でもしようか、と思った。だけどなんとなく、やめておいた。
一つだけ、燃え尽きた花火を水に浸すときの、ジュッ、というあの音は好ましく思えた。
最後の線香花火が、成長しきる前に地面に落ちるのを観測し、僕は帰宅することにした。ケータイを開くと、彼女から返事が来ていた。
「何やってんの笑」
僕はすぐに返した。このさみしさとおかしさを、彼女と共有したかった。
「花火は一人でやるもんじゃない笑」
少し待ったが、既読はつかない。僕はケータイを閉じ、燃え尽きた愉快な花火達と一緒に、帰宅した。
ー木曜日ー
この日は、久しぶりの雨だった。特筆すべきことといえば、すこぶる億劫だったがきちんとバイトに行ったこと、そして同じ学部の彼から
「六時に三条駅に集合。六時半開始のやつを見よう」
という趣旨のラインが届いたことくらいだ。
彼女からの返事は、この日はなかった。




