対面
投稿したつもりが出来ていませんでした。すみません!
ではどうぞ!
僕がいるのは、はじまりの都市と呼ばれているところらしい。もっと詳しく言えば、その中の来訪の神殿だ。
このNLSにおいて、プレイヤーつまり僕たちは来訪者と呼ばれていが、来訪者は例えモンスターにやられたとしても、復活の神殿にて蘇るため死を克服せし者達とも言われている。復活の神殿は各町に必ずあるため、セーブポイント的存在である。
そんな来訪者となった僕はいま非常に困ったことになっていた。まず、現在地が分からない。仁にあれほど調べておけと言われたにも関わらず、何も調べていなかった代償だろう。しかし、それは仕方が無いと開き直ったハルは、とりあえず外に出てみようと行動にでた。
「なんだよ、ここは」
思わず口にでてしまった。
目の前に広がるのは森。なんでだと思うより先に、とっさに周りに危険がないかどうか見てしまう。ゲーム始まってすぐにそんなことあるはずもないのにだ。
しばらくして何もないと判断した僕は、フゥーっと一息ついて改めて周りを見渡す。
やはりというべきか周りを見渡しても木しかない。しかし、じっくりと見てみると一か所にだけモヤがかかっていた。
気になった僕はそのモヤに近づいてみる。するとモヤがなくなり、ゲートのようなものが現れた。
「あっと、確か仁から返事がきてたな」
仁から連絡の返事がきていたことを思い出し、連絡用のウィンドウを開く。
「えーっと、神殿をでるとゲートがあるからそれをくぐれ。か、シンプルで楽だね」
いつまでも待たせるわけにもいかないので、とりあえずゲートを潜ることにした。
景色が変わる。本日何度目かの体験によりそれ自体に驚くことはない。しかし、やはりというべきかそこに広がる景色に僕は言葉を失う。正直僕も何度同じように驚くのだろうかと思わなくもない。だが、先ほどの閑散とした雰囲気からいきなり人で溢れかえる風景に変われば驚くのも無理はないと思う。
僕が今いる場所は周りから一段高くなった噴水のある場所だ。その周りは円形状に広場のようになっており、さらにその外から屋台や建物が並んでいる。外観は中世のヨーロッパというイメージが最も合いそうな気がする。
歩く人々はローブに身をつつんでいたり戦士風の人がいたりとさまざまで、その傍らにはさまざまな魔物を連れている。
とそこで、僕はいま自分がどのような恰好をしているのか確認していないことに気が付いた。
「うーん、特に変わった感じはないような気がするけど?」
手を見ても人間のそれだし、触った感じの特に変わったところは見られない。
もしかしたら、神という種族は人型なのかもしれない。そんなことを思っていると、後ろに人の気配がしたためそちらを向く。
「よう、ハル。ゲームでは初めまして、だな」
「仁……だよね?」
振り向いた先には、仁に似た姿をした人が立っていた。
「おうそうだぞ。なんだ?親友の顔を忘れちまったのか?」
笑いながら聞いてくる仁の顔を見ながら、僕はノーンの言葉を思い出しなるほどと思っていた。
現実世界では黒髪の仁が今は赤髪になっていることで、普段とは違った印象を受けてすぐには反応できなかったのだ。
「それにしても、ハルはあんまり変わらないな。というか、せっかくのゲームなんだし髪で顔隠すのやめようぜ」
そう言いつつ仁は紐を差し出してくる。
「……、なにこれ?」
「紐だが?」
「さすがにそれは分かるけど、なんで僕に?」
「いや、だからこれ使って髪結べってことだよ」
「はぁー、まぁ別にいいけど」
髪にたいして大したこだわりはないのでおとなしく仁の言う通りに、髪を後ろで結ぶことにした。病院でもたまにしてたしね。
「よしよし、じゃあ色々と聞きたいことがあると思うが移動するぞ」
「それはいいけどどこに?」
「秘密」
あ、そうですか。では僕は静かについていくことにします。
しばらく景色を見ながら歩いていると、仁は一つの建物の前で止まった。
「ここだ」
促されるままに建物の中に入ると、見た目以上に広い室内に驚く。ロビーのような内装になっており、少なくない数の人がいる。
その中を歩いていると会う人みんなが仁に挨拶をしていく。なかにはマスターなどと呼んでいる人もいたが何だったのだろうか。
そしてやはりというべきかその中には女性も多くいたが、そのすべてがこちらを見てキャーキャー言っていた。相変わらずモテる奴である。
「お前もだからな。今のはお前もだからな」
いきなりの仁の言葉に訳も分からず首をかしげていると、仁は残念なものを見る目でこちらを見つつため息をついた。
失礼な奴である。
「ここで話そう」
そう言われて案内された部屋は、真ん中にテーブルとソファーが置いてあるだけのシンプルなものだった。
仁は先にソファーに座ると、ハルを対面に促した。
「まずは、このゲームではツキヤって呼んでくれ。まあ苗字少し変えただけだけどな」
「わかった。僕は最初に言った通りハルだから」
「オーケー、じゃハル聞きたいことあるかもしれないけどその前に人を呼んでもいいか?」
「別にいいけど、知ってる人?」
「あぁ、お前もよく知ってるよ。入っていいぞ!」
その声と共にドアが開くと、そこには二人の女の子がいた。見た目的には同い年くらいだろうか。なぜか二人とも覚悟を決めたかのような真剣な顔をしているが、目線は下に向いている。
「この二人が僕の知り合い?」
果たしてこんな知り合いがいただろうかと首をかしげる。というのも、この二人はとても美人だからだ。このゲームはあまり外見は変えられないはずだから、現実でもこのくらい美人だということだ。知り合いだったら忘れないだろう。
「おまえまじかよ。はぁー、仕方ない俺から紹介するよ。この二人は倉敷加奈と泉静香だ」
ツキヨが名前を告げると、二人の表情が少し暗くなりさらにうつむいてしまう。
そんな二人をツキヤは少し心配そうに見る。
一方僕は二人が倉敷さんと泉さんと聞いて、やっぱり二人はきれいだなと関係ないことを一人で考えていたが、同時に二人はなぜそんな表情をしているのかと考え込む。
少し考えたらすぐに答えがでた。
二人を助けたのは僕だった。ということは必然的に僕が轢かれた場面も見たわけで、それに二人はお見舞いに来られなかったけど、ご両親は来てくださっていたから僕の今の状態も知ってるだろうしね。
(それは、責任感じるなってほうが難しいよね。でもやっぱり二人とも良い人だな)
そんなことを考えてるうちにも部屋は沈黙が支配しており、二人は何か言おうとしては口をつぐんで、目を合わせることもできずに顔を青くしていた。
ふと目線をずらすとツキヤと目が合う。
お前にすべて任せる。そういった目だった。
大丈夫、分かってるよ。
僕だって、今の現実の自分の状況に何も思わないわけではない。でも、それは僕が選んだ道だし助けたことに誇りを持ってる。だから君達が責任を感じる必要は全くない。だとしたら言う言葉なんて一つだろう。
「二人とも怪我なかった?」
二人はその言葉を聞いた瞬間泣き崩れた。
今まで我慢していたのだろう。怖かったのだろう。僕が逆の立場だったら今日この場に来ることさえできなかっただろう。だから、今日二人がこうしてここに来てくれて本当にうれしかった。
ツキヤに視線を移すとちょうど向こうもこちらを見ていて、視線が合い二人して笑いあった。
きっとツキヤはこうなることぐらいお見通しだったのだろう。この場を設けたのもツキヨのはずだ。
僕の中でもずっと二人のことは気がかりだった。だからツキヨには感謝しかない。
二人が泣き止むまで待つ部屋の雰囲気は、どこか温かいものだった。
やっと対面させることができました。
少しでも春君の優しさや男前なところを感じていただけたらなと思います。
では次回お会いしましょう!