チュートリアルは波乱の予感
そこには『神』の一文字があった。
「……え?」
僕はいきなりのことにリアクションをとることもできずに、紙を見つめることしかできなかった。
「ハル君、どうしたんだい?種族はなんだったの?」
「えっと、神って書いてあるんだけど、これって何なの?バグか何か?」
「え?!神だって!?本当にそう書いてあるのかい?」
「そうだよ、ほら」
僕は驚いているノーンに向かってその紙を見せる。
「本当だ。ハル君これはなかなかないことだよ!」
ノーンは興奮したように僕に向かって説明し始める。
「ランダムはレアな種族になれるかもしれないって言うのは説明したよね?実はこのレアにはランク付けがあってね、D~Aが基本となるランクで、Aにいくほど希少で強い種族なんだ。だけどランクが上の種族ほど出る確率は低くてね、Aになると宝くじに当たるほどの確率なんだ。でも実はこの上があって、それがハル君が引いた『神』も入っているランクSなんだよ」
「ま…まじですか。じゃあ、神ってやっぱり強いの?」
「そりゃあ強いなんてもんじゃないよ!強すぎるからランクSは本当に少ないし、それぞれ一体しかいないんだから!だからハル君はオンリーワンの種族なんだよ」
種族を決めるだけなのにえらく大ごとになってしまった僕は、事の大きさに頭の整理ができていなかった。これについては僕だけでは手に余るので後で仁に相談しようと決め、このことについては考えることをやめた。
「いやー、ハル君はもってるってやつなのかな?今までたくさんの人の案内をしてきたけど、こんなにすごいことは初めてだよ。これはこの後の獣魔の選定も期待できるね!」
「そうか、まだそれが残っていたね。でも種族選びでこれだけの結果が出たから、運は使い果たしちゃったと思うな」
(というかこれ以上厄介なことになりたくないなぁ、切実に)
「それはどうだろうね~。ではでは、お楽しみの獣魔の選定を始めようか!選定に使うのはこの草原だよ。」
「ここでやるの?ガチャガチャじゃなくて?」
「そうだよ。ここには至るところに卵に隠されているんだ。その中から卵を見つけるだけさ!ちなみに意識を集中させるのが探すコツだよ」
(集中…集中ね……、ん?)
とりあえずノーンの言ったとおりにやってみようと思い念じてみると、ある方角にもやもやするような感覚を覚えた。僕はそれに吸い寄せられるように歩いていく。歩いていった先は茂みになっていた。
「この中にあるのかな?」
この感覚が本当に卵を指し示しているものかは分からないが、ほかに頼るものもないため従うしかないだろう。そう一人で納得して、草をかき分けていく。
しばらくしてそれは姿を現した。黒い卵のような物で、大きさは両手で抱えなければならない程だ。
「これが卵かな?ノーンのところに持っていけばいいのかな」
卵を持とうと近づいたときに違和感を感じる。
「…ほかにも感じる?しかも近いな」
疑問に思いながらもさらに進むと、そこには卵があった。しかし先ほどとは違う点があった。それは、卵が虹色だったのだ。僕はこれを見た瞬間思った。
(フラグ回収乙)
運を使い果たしたと思っていたがそれは違ったらしい。ゲームをあまりやってこなかった僕でもわかる。これは大事だと。しかし、感じとったということはそういうことなのだろう。
(ランダムだし仕方が無い。もしかしたら勘違いかもしれないし)
僕は開き直り、二つの卵を運んだ。
虹色の卵を運んだときノーンはやっぱりと言いながら笑っていた。羽を触ってやろうかと思ったのは内緒だ。
とにかく反応した二つの卵を運んだ僕は次に進もうとしていた。ノーンによると卵はここで孵化させるらしく、そのためには契約者が魔力なるものを込める必要があるのだとか。しかし、現代に生きていて魔力などというものはおとぎ話の世界であるため、込め方など分かるはずもない。というかみんなそうなのではないかと思う。
「魔力の込め方が分からないんだけど、どうやるのかな?」
「お腹に力を込めてごらん?何か感じるはずだよ」
僕は言われた通りにお腹に力をいれる。するとどこか温かいものを体の中から感じた。
「……温かい?」
「そう!まさにそれが魔力さ!ちなみに魔力は魔法を使うためには必要なものでね。といっても、適性が無ければ使うことはできないけどね。まあそれはいいとして、あとはそれを循環させるだけだよ。コツは血液の巡りを参考にするといいよ」
試しにやってみようとイメージを強くする。
(……あぁ、こんな感じかな?)
「できたみたいだね、あとはそれを手に集めて卵に手を当てるだけだよ」
僕は流れていた魔力を両手に集めるとそっと卵に触れた。
自分の中からごっそりと何かが無くなる感覚を覚えた。驚いた僕は慌てて卵から手を離し、少しめまいのするなか卵の様子をうかがった。
「えぇー、嘘でしょ」
思わず声に出してしまったのも仕方が無いと思う。なぜなら先ほどまでは抱えられる程度の大きさだったのに、今は僕の身長よりも大きくなっていたのだから。
「うーん虹色はこうなることは分かっていたけど、黒い方ももしかしたら凄い魔物かもね。」
そんなノーンのつぶやきを聞きながら僕は卵の様子を見守った。
そのまま少ししたところで、卵に変化が表れ始めた。
ピシ…ピキピキ……
「そろそろかな、ちなみに卵から出てくるといっても赤ちゃんで出てくるわけではないからね」
大きさを見ればわかるようなことを今さらながらに言ってくるノーンは、今までたくさんの獣魔誕生を見てきただろうに、かなりわくわくした表情をしている。
かくいう僕も、そわそわと落ち着かない。
「きたっ」
そうノーンが叫んだと同時に、種族のカプセルを開けた時とは比較にならないほどの閃光が辺りを照らした。僕はとっさに手で目を覆うがそれでも明るさが伝わってくる。
程なくして光が収まり、手をどけて卵があったところに目を向けたとき、目にはいってきた光景に言葉が出なかった。
いかがだったでしょうか?
次回は獣魔が出てきます!獣魔って何だかワクワクしませんか?それは私だけでしょうか笑
ではまた次回お会いしましょう!