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Name Less Story  作者: 雅風
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はじまりは草原と妖精と

再び目を開けるとそこは広々とした草原だった。


「ここがゲームの中なのか?」


思わずそう口にしてしまうほどに、草や頬をなでる風、照り付ける太陽、においすべてにおいて現実と遜色なかった。


 しばらく呆然と立ちすくんでいた春に声がかかった。


「ようこそ!Name Less Story 通称NLSの世界へ!僕の名前はノーン。この世界の案内AIだよ。よろしくね!」


声がしたほうを見ると、体長十五センチほどの妖精のような女の子が浮かんでいた。


 しかしこれはすごい。とてもプログラムとは思えないほど滑らかな動きに表情の動き。見れば見るほど生きているようにしか見えない。この羽などどうなっているのだろうか。


「な、なんだい、黙って僕のことをじろじろ見て。その手はなんだい!?うわっ!やめておくれよ!羽は触っちゃだめだよ!」


妖精は身の危険を感じたのか体を手でかばいながら距離をとる。むぅ、残念だ。もう少し触りたかったのだが。


「大体君は何か言うことはないのかい?ここはゲームの世界なんだよ?」


ノーンはそういうと、ほらほら早く聞きなよと期待した表情をする。


「ああそうか、じゃあ聞きたいんだけど、君の羽は動いてはいないみたいだけど使うことはないの?」


僕が一番気になることを聞くと、ノーンは空中でこけるという器用な技を披露してくれた。どうしたのだろうかと思っていると


「いや普通は、魔法は使えるの?とかダンジョンはあるの?とかキラキラした目で聞くでしょ!というか他の人はそうなんだけど」


「普通はって言っても僕こういうゲーム初めてだしね。ノーンは他にもこういったことをしているの?」


「それはそうだよ!なんたって案内AIは僕しかいないんだから。どうやっているかって?それは分身してやっているんだよ!」


そう言いつつノーンが指を鳴らすと、もう一人のノーンが出てくる。


「へぇすごいね。じゃあ、僕以外に今始めている人もいるの?」


「うん、たくさんいるよ。といっても他の人はもうチュートリアルに入っているよ。……無言でもう一人の僕を奪おうとしないでくれるかい!?」


おっと、ついつい。


「じゃあ僕もそろそろお願いしたほうがいいのかな?」


「今さらっと無視したよね?!」


「ほらほら、チュートリアル始めようよ」


「まったく、君が元凶じゃないか。……コホン、ではあらためて僕の名前はノーンこのNLSの案内AIをやっているよ!さっそくチュートリアルを始めるよ!

 まずは名前や性別、外見、種族を決めよう。基本はこのタッチパネルで決められるからね。分からないことがあったら遠慮なく聞いてね!」


「名前かぁ、どうしようかな。安直だけどカタカナでハルが一番しっくりくるかな。いきなり違う名前だと呼ばれたとき気がつかなそうだし」


「ハルだね。うーんと、うん大丈夫だね。同じ名前がいないから登録できるよ」


「性別はもちろん男にするけど、変えることもできるの?」


「いや、性別は変えられないよ。もし性別を変えてしまうと現実に戻ったときに何らかの影響があるかもしれないと考えられているからね。これは単なる確認だよ」


「じゃあ、嘘をついてる場合はどうするのかな?」


「それについては大丈夫さ!このゲームはカプセル型の機械に入るだろう?そこからスキャンして性別の判断をしているからね」


「そんなことまで可能なのか。すごいな」


「だろう?次は容姿かな」


「正直変えなくていいかなって思っているんだけど」


「さすがに何も変えないのはまずいかな。せめて目の色と髪の色くらいは変えてほしいかな」


「じゃあ髪の色は白色で目は金色にしようかな」


「白と金だね。了解だよ」


「質問なんだけど、性別は変えられなかったけど、容姿はどこまで変えられるの?」


「いい質問だね。容姿に関しては大きく変えること自体は可能だよ。でも大きく変えすぎてしまうと他の人から見たときにすごい違和感を感じるようになるんだ」


「てことは、基本現実世界に近い感じになるのかな?」


「うん、そういうことになるね。でも人間は色や雰囲気で他人を覚える傾向にあるから、目や髪の色が違うだけでも一致させにくいんだよ」


「そういうものかぁ。次はどうするのかな?」


「次は目玉といえる種族決めさ!」


「うーん、種族ねぇ。…多いな」


 僕は種族のところをタッチしてズラッと並んだ種族の多さに思わず声を出してしまった。例えば獣人族だけでも、犬型、ネコ型、猿型………など動物を網羅しているのではないかという程だ。これも人気の一つなんだろうなと思いつつ最後まで見ていると、一つ気になるものを見つけた。それは『ランダム』の文字。とても心が躍る響きだ。


「このランダムっていうのは何?」


「やっぱり気になるよね!それは種族がランダムに決められるんだよね。これにするとそこには載っていないレアな種族になれる可能性もあるんだ!!」


「へぇ、じゃあランダムにする人多いんじゃないの?」


「これがそうでもないんだよね。レアな種族になれるって言っても、どんな種族かまでは言えないから君達には分からないし、自分がなりたくない種族になる場合もあるからね。それにだいたいの子達はなりたい種族が決まっているからね」


「そっか、これだけ多くの種族があったら目当てのものがあるか」


「で、どうするの?ハル君は。やっぱりランダムはやめておくかい?」


「いや、僕はもとからなりたかった種族はないし、何より!ランダムってロマンを感じるからね!ランダムにするよ」


「ロマン分かるよ~。今調べてもランダムはやっぱり少ないね、リスクは負いたくない人たちばかりでつまらないよ。」


うんうんとうなずきながら言うノーンは、その小ささも相まってとてもかわいらしかった。

思わずノーンの頭をなでてしまった。


「ちょっと、子ども扱いしないでくれるかい!?」


 そうは言っても、その緩んだ表情のまま言われても説得力がないなぁ。仕方が無い本人が言ってるんだからやめるか。

 やめろって言ったのはノーンなのになぜ少し残念そうな顔をしているのかな?チャンスがあったらまたしてあげるから我慢しなさい。それよりも今は種族決めを進めないとね。


「ランダムはどうやって決めるの?」


「それはこれだよ!」


ノーンはそう言いながらどこに仕舞っていたのか、ガチャガチャのようなものを取り出した。


「これはランダム君と言ってね。え?そこ、ありきたりな名前って言わないの!とにかくこのランダム君を回してもらって、出てきたカプセルの中に入っている紙に書かれている種族が君の種族になるのさ。さあさあさっそく引こうよ!」


僕はノーンの勢いに圧倒され、促されるままにランダム君を回した。


ガチャ、ガチャ、ポンッ


 出てきたカプセルは真っ黒で中は見えないようになっていた。


 いざカプセルを開けようとする段階で少し手が震えていることに気が付く。どんな種族になるのか分からないわくわく感と、変な種族だったら嫌だなという緊張感があることに思わず苦笑してしまう。


(あまりこういう気持ちになることはないから新鮮だな)


 よし!と一呼吸おいて、それでもまだ少し震える手で僕はカプセルを開ける。


 するとカプセルから眩い光が漏れ出した。その眩しさに思わず僕は目をつぶってしまう。


 次第に光が収まってくると目を開けられるようになり、僕はゆっくりと目を開けた。


 カプセルはどこかに消え、手には一枚の折りたたまれた紙があった。僕がその紙を恐る恐る開けてみると、そこには『神』の一文字があった。


「……え?」


妖精は女の子!という安直な考えでノーンは誕生しましたが、春君との会話のなかで可愛らしさが伝わればと思います!


まだ少しチュートリアルが続きます


ではまた次回お会いしましょう!


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